日常生活の中で「世界にはどれだけ多くの人がいるのだろう?」と考えたことはありませんか?8億人や80億人といった数字は耳にしますが、実際に“量”としてイメージするのは難しいものです。今回ご紹介するのは、Here Is the Real Size of a Meatball Made From the Entire Human Race (Spoiler: It’s Smaller Than You Think)(Daily Galaxy、2025年6月1日掲載)という記事です。「もし全人類をギュッと固めて一つの球体(通称“人類ミートボール”)にしたら、どのくらいのサイズになるのか?」という奇抜な問いに、数学的観点から挑戦しています。この話題は、数字だけでは捉えづらい人類のスケール感への新しい視点を提供し、身近な『人の多さ』を体感できる面白さがあります。
全人類をギュッと固めると驚くほど小さい?
まずは算出のための前提条件です。数学者が掲示板Reddit上で試算したところ、全人類(約82億人分)の平均体重を62kg、体の密度をおよそ985kg/立方メートルと仮定。計算上、1立方メートルの空間に16人程度が詰まることになります。この条件で全人類分を合計すると、約5億1600万立方メートルの体積に収まる計算です。
この人類の塊を真球(完璧な球体)として形成すると、その直径は「1km弱」となります。身近な例でいうと、エッフェル塔(高さ約330m)を縦に3つ積み重ねた高さ、あるいはマンハッタンのセントラルパーク(面積約3.41平方キロメートル)の中に無理なく収まるサイズです。
技術用語のわかりやすい解説:「密度」と「立方メートル」
- 「密度」とは、ある物体がどれだけぎっしり詰まっているかを表す値です。たとえば氷は水より軽く浮かびますが、これは氷のほうが密度が低いからです。
- 「立方メートル」は長さ1メートル×幅1メートル×高さ1メートルのサイコロ状の容積単位。学校の校庭に置いてあるバックネットの高さぐらい、とイメージすると分かりやすいでしょう。
人口増加で「人類ミートボール」はどこまで大きくなる?
さらに、人口増加率(現在は年約1.05%)も考慮すると、「人類ミートボール」の半径は年間約1.74メートルずつ増えるペースとなるそうです。ただし、体積が大きく増えても、“球”としての直径はそこまで急激に大きくなるわけではありません。これは「立方根(キューブ・ルート)」という数学の性質に由来します。
数式を簡単に解説:「半径と体積の関係」
球の半径は体積の「立方根」に比例します。たとえば、体積が8倍になっても、半径は2倍にしかなりません。人口が増えても、ボールの大きさの増え方は案外ゆっくりなのです。
世界的な人口の「大きさ」を視覚化する意味
この「可視化」発想自体は新しいものではありません。たとえば2014年には、有名YouTuberのマイケル・スティーブンス(Vsauce)が「全人類をグランドキャニオンに詰め込んだら?」というグラフィックを発表しました。それでも、あの巨大な渓谷が全部埋まることはなかったのです。
抽象的な“80億人”という数字の実感が湧きにくい中、こうした可視化は世界の人間の存在感や資源配分・都市化・人口問題の議論にも一石を投じます。
日本にとっての意味と考察:「人の多さ」の肌感覚
日本は世界人口比で約1.5%(約1億2500万人)。人口減少が続く日本では「世界規模の人口爆発」は遠い話に思えますが、世界全体の人の“重み”や“量”を直感的にとらえることは、自国の人口や社会課題を相対化する手がかりになります。
また、都市の混雑や学校・会社での集団生活体験を思い浮かべると、「たしかに“膨大な数”も、一箇所に固めれば意外と小さいスペースに収まるんだ」と納得できるかもしれません。“人数=空間の広がり”にそのまま比例しないことが実感できます。
地球資源の有限さや都市問題、社会システム設計にも、この発想は役立つでしょう。“数字”と“実感”の間をつなぐ新鮮な視点です。
人間の数を実感するために押さえたいポイント
- 全人類をギュッと固めると、直径1kmほどの“ミートボール”になる
- どんなに多くても、地球の広大さには遠く及ばない規模である
- 人口が増えても、ボールは“ほんの少し”ずつしか大きくならない
- 数字ではなく「量」として考えることで、人口問題や自分の存在を新しい角度で理解できる
こうした“可視化”は、日常の中の多くの「数の感覚」を豊かにし、世界規模の問題を身近にとらえる一歩になるかもしれません。