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2025年6月の満月が「地平線すれすれ」を通過する理由―18.6年に一度の天文ショー解説

私たちの日常に欠かせない月ですが、「満月が毎回同じ高さに見える」と思っていませんか?実は2025年6月の満月は、ここ数十年で特に低い位置(地平線近く)に見える特別な夜となります。なぜ月はこれほど高さが異なるのか?今回はJune's Full Moon Will Be The Lowest in The Sky For Decades. Here's Why. の記事を引用しながら、その天文学的背景や日本での見え方、私たちにとっての意義をわかりやすく解説します。

月はなぜ「低く」見えるのか? ― 軌道の傾きと長周期サイクル

月の軌道傾斜角とノード歳差運動の仕組み

まず知っておきたいのは、「月の軌道が地球の自転軸ではなく、地球が太陽の周りを回る“黄道”に対して約5.15度傾いている」という事実です。この5.15度の傾きによって、月は最大で約28.65度(= 23.5度〔地軸の傾き〕+5.15度)北から南まで空を大きく動きます。

さらに重要なのは「ノード歳差運動」と呼ばれる現象です。これは月の軌道面が約18.6年かけてゆっくり西へ回転(歳差運動)するもので、“月が最も北または南へ達する年”と“最も控えめになる年”が繰り返されます。

ルーナースタンドスティル現象とは?

  • メジャー・ルーナースタンドスティル(大月極):18.6年周期で月が最も高く・低く昇る年。2025年1月末が最新の節目です。
  • マイナー・ルーナースタンドスティル:その中間で月の動きが控えめになる年。

2025年6月の満月は、正にこの「大月極」の南の極端=北半球では非常に低い満月となる、まれな瞬間です。

文化と歴史:古代とストロベリームーン

ラニッシュ石群に見る先人たちの知恵

欧州スコットランドのカラニッシュ石群(ストーン・サークル)は、まさにこのルーナースタンドスティルの月の運行を観測するために築かれたとされます。つまり月の軌道周期は文明の暦や農耕にも深く関わってきたのです。

ストロベリームーンとは

6月の満月はアメリカ先住民の伝統から「ストロベリームーン(苺月)」と呼ばれています。これは「苺の収穫期=6月」と結びつけられ、日本でもロマンチックな名前として話題になることがあります。今年は特に“低い月”として登場します。

2025年6月の満月、どんな見え方? 日本や世界での現象

日本での見え方と世界の違い

2025年6月11日午前9時(日本時間)前後が満月となります。日本からは南の空の非常に低い位置に満月が観測されるでしょう。都市部ではビルや木立の影にすれすれで昇る幻想的な光景が期待され、通常より赤みがかり薄く霞んで見えることもあります。

一方、アラスカやアイスランドグリーンランドの北緯60度以北では月が全く昇りません。逆に南半球のオーストラリアやニュージーランド南アフリカでは夜空の高い位置に満月が現れ、「ロングナイツムーン(長き夜の月)」として北半球とは対照的な体験となります。

月食ならぬ「恒星食」も見逃せない

2025年6月は明るい恒星スピカ(おとめ座)、アンタレス(さそり座)、そして7月にはレグルス(しし座)が次々と満月に隠される「恒星の月食=恒星食(オカルテーション)」が観察されます。これは月の特殊な軌道がもたらす珍しい現象で、科学観測にも貴重です。

日本への影響と生活での楽しみ方

  • 気象条件さえ良ければ、日本全国で「あんなに低い満月、初めて!」というレア体験が可能です。
  • スーパームーンと混同されがちですが、“高さ”と“明るさ”の現象は異なります。
  • 満月は潮の干満や生態系にも影響し、漁業・農業・釣りなど自然関連の職業にも関係することがあります。

今後への提案

都市部では高い建物や光害(夜空の明るさ)のため見逃すことも多いでしょう。だからこそ、誰もが「自分だけの天体観測所」を持てるイベントとして、家族や子どもたちに夜空を見上げてほしいタイミングです。

2025年6月の満月がもたらす特別な価値

  • 約18.6年に一度の壮大なサイクルの「極端に低い」満月。
  • 原因は「月の軌道傾斜角」「ノード歳差運動」、そして「ルーナースタンドスティル現象」。
  • 北半球では超低空、南半球では高空と世界的に対照的な月夜。
  • 文化的にも暦や伝統行事、自然観察、恒星食観測など多方面で話題に。

次に同じ体験ができるのは約20年後です。2025年の「ストロベリームーン」を見逃さず、ご家族や友人と共に空を見上げてみてはいかがでしょうか。