毎日の生活の中で夜空を見上げても見つけることはできませんが、私たちの日常や宇宙への好奇心に静かに影響を与えている存在が「銀河」です。特に今年6月、NASAが発表した“NASA’s Webb Rounds Out Picture of Sombrero Galaxy’s Disk”という記事では、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)によるソンブレロ銀河の詳細画像が報告され、天文ファンだけでなく新技術好きな人、未来にわくわくする子どもたちにも大きな話題を呼びました。この記事では、そもそもソンブレロ銀河とは何か、なぜWEBB望遠鏡の成果がすごいのか、そしてこの発見が私たち日本人にどんな意味を持つのかをわかりやすく解説します。
ソンブレロ銀河とは?不思議な帽子の正体
ソンブレロ銀河(M104)は、その名の通りメキシコの帽子「ソンブレロ」に似た形で、地球から約3100万光年も離れた銀河です。中心がふっくら大きく、そこを横切るような濃い塵(ちり)の帯、そして何より“横から見た姿”が特徴。さらにこの銀河は「おとめ座銀河団」の端に位置し、太陽の約8000億(8千億)倍の質量を持つ巨大銀河です。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が見た世界
2024年末に中赤外線、その後さらに近赤外線でWEBBがソンブレロ銀河の撮影を行いました。宇宙望遠鏡の「目」を可視光線だけでなく、より長い波長である赤外線に広げると、これまで塵に隠されて見えなかった部分が浮かび上がります。
- 近赤外線(きんせきがいせん):780~2500nmの波長帯で、人間の目には見えませんが、塵を突き抜けて星の光を捉えることができる性質があります。
- 中赤外線(ちゅうせきがいせん):さらに長い波長。これまでは見えなかった塵そのものや冷たい天体の“光(熱)”を捉えられます。
WEBBが捉えた近赤外線画像では、銀河中心の大きな星の集まり(バルジ)がはっきりと見え、外縁の塵が内側の星の光を部分的に遮る様子も鮮明に。しかもこのバルジは、新たな歴史の手がかりに満ちています。
参考画像: ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影したソンブレロ銀河(Astropics)
“見え方”の違いが教えてくれる銀河誕生の歴史
この違いにより、銀河の構造や星の分布、成り立ちの“歴史”がより具体的に浮かび上がりました。
合体の記憶が残る複雑な姿
ソンブレロ銀河の過去には「合体」の事件が…
一見滑らかなこの銀河ですが、星の集団「球状星団(きゅうじょうせいだん)」が約2000も含まれています。通常、同じ場所・同じ時代につくられた星たちは化学的な特徴(元素の割合)が似るはず。しかし調査すると、それぞれの球状星団で酸素やネオンなどの「指紋」が大きく違っていたそうです。
これは過去に他の銀河と衝突・合体を繰り返し、多様な成分を持ち込んだことを示唆します。また、内側の円盤がねじれて『じょうご(ろうと)』のような形になっているのも、激しい歴史を物語る証拠です。
そもそも球状星団とは?
これは数十万~数百万の古い星が重力で密集して集まった巨大な“星の集団”で、天の川銀河にも約150ほどありますが、ソンブレロ銀河は約2000個とかなり多いのが特徴です。
赤外線観測が切り拓く新時代──日本への意味
日本の技術や研究者も活躍
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は欧米だけでなく日本人研究者も一部関わっており、今回の観測の成果も宇宙望遠鏡技術や関連分野への大きな刺激となります。また今後、赤外線でしか見えない遠方銀河や誕生直後の星を観測することで、“ヒトの起源”に新しい道筋を示す可能性もあります。
似た合体の歴史は天の川銀河や日本の観測天文学でも
過去に天の川銀河でも同様に外部銀河との合体・取り込みがあったことがわかっています。こうした研究は地球外生命や銀河の進化、果ては私たちの地球や生命のルーツを知るためにも不可欠です。日本各地の公開天文台やプラネタリウムでも、ウェッブやソンブレロ銀河の話題は人気で、宇宙ファンのさらなる裾野が広がるきっかけとなるでしょう。
星々と繋がる未来 — 宇宙研究の希望と共感
- ソンブレロ銀河の本当の姿と“激動の歴史”がジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で明らかにされた
- 赤外線でしか見えない構造・成分の違いが銀河の進化や合体の痕跡を示す
- こうした研究は日本の科学技術や子どもたちの夢、地球・生命の謎の解明にも直結
今後もWEBB望遠鏡の観測により宇宙の本質や新しい発見が続々と明らかになることでしょう。私たち自身と宇宙の壮大な“物語”がどこかでつながっている——そんなワクワクを感じながら、最新の宇宙ニュースに触れていきたいですね。