ゲーム機が壊れると、修理に出すか、それとも新しいものを買い直すかで悩んだ経験はありませんか?特に、Nintendo Switchシリーズのコントローラー「Joy-Con」の“スティックドリフト”問題は、多くのユーザーが頭を抱えてきました。そして2025年発売の新型『Nintendo Switch 2』でも、この修理問題やスティックドリフトが話題になっています。この記事で取り上げるのは、米国発の修理専門サイトiFixitによる分解調査レポート、iFixit Says Switch 2 Is Harder to Repair, Probably Still Drift Prone - WIREDです。日本のゲーマーにとっても『Nintendo Switch 2』の将来性や長く使い続けられるかは大事な関心事。なぜ修理が難しいのか、そしてスティックドリフトは本当に改善していないのかを、分かりやすく解説します。
iFixitの分解調査で判明したSwitch 2の「修理困難」と「Joy-Con問題」
Switch 2の修理可能度は10点中3点 “過去最低レベル”
今回の調査で、iFixitは『Nintendo Switch 2』の修理可能度スコアを10点中3点と発表しました。これは初代Switch(10点中4点)をさらに下回る結果です。現世代の他ゲーム機であるPlayStation 5やXbox Series Xは10点中7点であり、Switch 2はこれらと比べて大きく見劣りします。
| 製品 | 修理可能度スコア |
|---|---|
| Nintendo Switch 2 | 10点中3点 |
| 初代Switch | 10点中4点 |
| PS5 | 10点中7点 |
| Xbox Series X | 10点中7点 |
このスコアが低い主な要因は以下の通りです:
- 記憶媒体(ストレージ)、ゲームカードリーダー、USB-C充電ポートが基板に直接はんだ付けされている
- バッテリーやディスプレイが強力な接着剤で固定されており、取り外しや再組み立てが面倒
- 分解・修理を阻むためのNintendo独自「トリポイントネジ」や多数のステッカーで、開けるだけでも一苦労
- 消費者向けの公式修理パーツやドキュメントが提供されていない
Joy-Conのスティックドリフト問題、根本解決せず
最大の懸念点は「Joy-Conスティックドリフト」です。これはコントローラーのスティックが、ユーザーが触っていなくても勝手に入力が生じる誤動作です。初代Switchでも長年多発し、修理や交換のトラブル報告が絶えませんでした。
スティックドリフトの主因は「可変抵抗器(ポテンショメータ)」という部品の接触摩耗にあります。iFixitの調査によれば、Switch 2でも依然としてこの構造が使われており、新技術である磁力を使った「ホール効果センサー」や「トンネル磁気抵抗センサー(TMR)」は採用されていませんでした。
なぜ「ホール効果センサー」や「TMR」は有効なのか?
- 「ホール効果センサー」:磁力の変化でスティック位置を検知。摩耗するパーツがないため、物理的な劣化がほぼゼロで、ドリフト防止に効果的。
- 「トンネル磁気抵抗センサー(TMR)」:量子力学的なトンネル効果を利用し、より微細に位置検知が可能。
先進技術をあえて採用しなかったことで、“奇跡的な新素材”や“サイズ変更による劇的な摩耗軽減”が導入されていない限り、今後もスティックドリフトが発生しやすいとiFixitは警告しています。
修理難度の増加
Joy-Con自体の交換や修理も、Switch 2では手間が増加しています。分解には専用ドライバー(トリポイントネジ)や細心の注意が必要であり、「高頻度で消耗・破損しやすい=ユーザーが自力で直せる設計が重要」という修理の基本ニーズも満たされていません。
詳しい分解プロセスやJoy-Conパーツ交換方法は、iFixit公式ガイド(Joy-Con 2 Repair Guide)で一部情報を得られます。
修理しにくい設計思想の背景は?
現代の電子機器全般で「修理」を巡る議論が激しくなっています。特に欧米では“Right to Repair(修理する権利)”運動が広がり、メーカーに対して消費者向け部品・情報の開示・提供を求める流れが強まっています。にもかかわらず、Switch 2でさらに修理しづらい方向性が強化された理由としては、
- 製品の小型化・スペック向上が優先されたこと
- 不正改造・不正コピー対策
- メーカー修理のみに依存させ、収益性を確保するため
などの事情が考えられます。
日本市場と日本のユーザーへの影響
日本でもSwitch・Switch LiteのJoy-Con故障(スティックドリフト)に関する相談が消費者センター等に多く寄せられています。2020年頃から社会問題化し、任天堂も一部無償修理対応を始めましたが、根本的な解決には至っていません。Switch 2でも同様の設計・材料であれば、同じ問題が再び繰り返される恐れが高いです。
また、修理が難しい設計は環境負荷にも直結します。バッテリーなど消耗部品の寿命が来た時点で本体ごと廃棄しなければならない場合、電子廃棄物(e-waste)の増加につながります。日本は電子機器のリサイクルが進んでいる国ですが、よりサステナブルな設計や修理部品の提供がグローバルでも求められています。
日本国内でも“修理に優しい製品選び”や“Right to Repair”運動が注目される中、Switch 2のような設計思想は逆行している印象を否めません。
今後の展望と提言
- 任天堂には、ユーザー自身が簡単に修理・交換できる設計や補修パーツの供給体制を強化する方向への転換が求められます。
- Joy-Conのドリフト対策として「ホール効果センサー」や「TMR」等の導入を検討し、長寿命化・修理性向上を図るべきです。
- ユーザー側も、購入前に“修理性・耐久性”を重視して製品を選択する時代であることを意識しましょう。
- 国や行政も、消費者保護と環境負荷低減のため「修理する権利」普及の支援強化が必要です。
Switch 2の修理問題をどう考える?――まとめ
- Nintendo Switch 2は性能向上の一方で「修理しにくさ」と「スティックドリフト再発リスク」が大きな課題(修理可能度スコアは10点中3点)となっています。
- Joy-Conの基本構造は初代と同様であり、ホール効果センサーなどの非接触方式は未採用です。
- 修理難度の上昇は環境負荷増大やコスト増・廃棄台数増にも直結します。
- 日本でも過去に同種の不具合相談が多発してきた経緯から、Switch 2購入時にはアフターサポートや修理性への配慮が重要です。
ユーザー・メーカー・社会が連携し、「いつまでも遊び続けられるゲーム機」としてSwitch 2が進化できることを期待したいところです。今後も任天堂や他のメーカーが“修理する権利”や持続可能な製品設計にどう取り組むのか、注目していきたいですね。