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高校生AIが宇宙の秘宝を発見!150万個の「隠れた星」を解き明かす!

もし、あなたが隠された宝の地図を手に入れて、誰も見つけられなかったお宝をたった一人で見つけ出したとしたら、どんな気持ちになるでしょう? そんな夢のような話が、今、まさに現実の世界で起きています。しかも、その主役は、なんとアメリカの高校生なのです。最先端の人工知能(AI)を駆使して、彼はこれまで誰も見つけられなかった150万個もの宇宙の「隠れた」仲間たちを発見しました。この驚くべきニュースは、私たちが宇宙をどう理解し、どう探求していくかについて、新たな可能性を示しています。

今回ご紹介する記事はこちらです。

“I Mapped the Invisible”: American High School Student Groundbreaking AI Reveals 1.5 Million Space Objects Previously Hidden from Astronomers

見えない宇宙を「見つけた」高校生のAI革命

驚きの発見!150万個の「隠れた」宇宙の仲間たち

アメリカ、カリフォルニア州の高校生であるマッテオ・パズさんは、私たちの宇宙に対する常識を打ち破る、まさに「画期的なAI」を開発しました。彼が作り上げたこの人工知能(AI)モデルは、これまでどの天文学者も気づかなかった150万個もの宇宙の物体を、NASAのNEOWISEミッションが収集した膨大なデータの中から探し出したのです。

NEOWISEミッションとは、「Near-Earth Object Wide-field Infrared Survey Explorer」の略で、NASAが地球に近い小惑星(近地球オブジェクト)を探すために実施した赤外線宇宙望遠鏡のプロジェクトです。このミッションは、2013年に再始動し、地球に接近する小惑星の追跡を主な目的としていましたが、それと同時に、広大な宇宙の赤外線データも収集していました。このデータの中に、マッテオさんのAIが見えない宝を見つけ出したのです。

全ては「アカデミー」から始まった

マッテオさんの深宇宙探求の旅は、2022年の夏、「カルテック惑星探索アカデミー」(Caltech’s Planet Finder Academy)に参加したことから始まりました。このアカデミーは、カリフォルニア工科大学Caltech)が高校生に最先端の天文学研究に直接触れる機会を提供するために企画されたプログラムです。彼はこのアカデミーで、カルテックの「赤外線処理分析センター」(IPAC)の主任研究員であるデイヴィー・カークパトリック博士から指導を受けました。デイヴィー博士は、マッテオさんのメンター(指導者)となり、彼らは一緒にNEOWISEミッションの「宝の山」のようなデータを探求し始めたのです。

NEOWISEミッションは、10年以上にわたって全天を網羅する赤外線データを収集してきました。その主な目的は、地球に接近する小惑星の観測と追跡でしたが、同時に遠くの天体、特に明るさが時間とともに変化する「変光天体」に関する貴重な情報も集めていました。これらの明るさの変化は、例えばクエーサー(非常に明るい銀河の中心部)、連星(二つの星が互いの周りを回るシステム)、超新星(星の最期の大爆発)などによって引き起こされることがありますが、従来の分析方法ではその変化を正確に特定することが困難でした。

AIが解き明かす「膨大なデータ」の秘密

カルテックの研究チームは、NEOWISEミッションから送られてくる、瞬く間に増え続けるデータに直面していました。そのデータ量は、最終的に2000億個ものデータ点に迫るほど巨大なものでした。人間がそのすべてを一つ一つ手作業で分析することは、時間的にも労力的にも不可能です。研究チームは、ごく一部を手作業で分析する計画でした。

しかし、コンピューターサイエンス、数学、プログラミングの知識が豊富だったマッテオさんは、別の道を見出しました。彼は、これほどの膨大なデータを処理するために、「機械学習」(Machine Learning)を使うことを提案したのです。機械学習とは、人工知能(AI)の一種で、コンピューターが大量のデータからパターンやルールを「学習」し、自分で判断や予測を行えるようにする技術です。人間が一つ一つ指示を出さなくても、コンピューターが自ら賢くなっていくイメージです。

わずか6週間で、マッテオさんは「フーリエおよびウェーブレットベースの機械学習モデル」を開発しました。これは、数学的な「フーリエ変換」や「ウェーブレット解析」という技術を応用したAIモデルで、まるでオーケストラの演奏から特定の楽器の音だけを抜き出すように、赤外線データの中に隠された、ごくわずかな明るさの変動(変化)を見つけ出すように設計されています。このAIは、これまで見過ごされてきた光の微妙な変化を検出し始めました。AIが異常なパターンを見つける能力を高めるにつれて、広大な宇宙に存在する、これまで知られなかった新しい天体や活動の兆候が次々と発見されていったのです。

挑戦と「次世代への架け橋」

マッテオさんのこの画期的な発見は、単なる技術的な成果にとどまりません。彼のプロジェクトは「アストロノミカル・ジャーナル」(The Astronomical Journal)という権威ある科学誌に掲載されました。これは、天文学の分野では非常に名誉あることです。このプロジェクトを通じて、マッテオさんはカルテックの研究者チーム(ショウバネー・ヘンマティ氏、ダニエル・マスターズ氏、アシシュ・マハバル氏、マシュー・グラハム氏)と密接に協力しました。彼らは、マッテオさんの機械学習技術をさらに洗練させる上で、重要なサポートを提供しました。

もちろん、道のりには困難もありました。NEOWISEミッションの観測リズムには限界があり、明るさの変化が非常にゆっくり、あるいは非常に速い変光天体は、従来の検出方法では見つけにくいという課題がありました。しかし、マッテオさんのAIモデルは、これらの明るさの変化を時間とともに追跡する能力を持っており、この課題を克服する上で決定的な役割を果たしました。彼の研究は、新しい星やその他の現象の発見につながり、さらなる研究と探査への扉を開いたのです。

現在、マッテオさんはカルテックの有給職員として、自身のAIモデルをさらに磨き上げ、AIがどこまでできるかの限界に挑戦し続けています。彼はまた、「カルテック惑星探索アカデミー」で若い学生たちのメンターとしても活動しており、次世代の研究者たちが新しい方法で宇宙を探求するための道具とインスピレーションを確実に受け継げるように尽力しています。

この画期的な発見が日本にもたらすもの

なぜ、このニュースは私たちにとって重要なのか?

マッテオ・パズさんの発見は、私たち地球上のすべての人にとって重要な意味を持ちます。

まず、これは宇宙に対する私たちの理解を大きく広げます。これまで「見えなかった」150万個もの天体が新たに加わることで、宇宙の地図はさらに正確になり、遠くの星や銀河がどのように誕生し、進化してきたのか、その長期的な振る舞いを研究するための新たな手がかりが得られます。これは、まるでジグソーパズルのピースが大量に増え、完成図がより鮮明に見えてくるようなものです。

次に、この話は若い才能の無限の可能性を示しています。一人の高校生が、最先端の技術とひらめきで世界の科学界に大きな貢献をしたという事実は、日本の小中高生にとっても大きな励みになるはずです。年齢や経験に関係なく、探究心と新しい技術への挑戦が、世界を変える発見につながることを教えてくれます。

日本の宇宙開発とAIの未来

この発見は、日本の宇宙航空研究開発機構JAXA)や日本の大学、企業にとっても、大きなヒントを与えてくれます。JAXAは「すばる望遠鏡」や「はやぶさ」などのミッションで、世界トップレベルの宇宙科学研究を行っていますが、そこから得られるデータも膨大です。

  • 日本の宇宙機関でのAI活用: マッテオさんのAIモデルのように、JAXAや日本の研究機関が保有する過去の膨大な観測データの中に、まだ気づかれていない「宝物」が隠されているかもしれません。AIを使って、データ解析の効率を上げ、新しい発見につなげることは、今後ますます重要になるでしょう。
  • 若手人材の育成: 日本でも、若い学生たちが科学技術に触れ、主体的に研究に取り組めるようなプログラムがさらに増えることが望ましいです。カルテックの「惑星探索アカデミー」のように、高校生が大学の研究室に入り、実践的な研究を経験できる機会は、将来の科学者を育てる上で非常に貴重です。例えば、JAXAなどがデータサイエンスのコンテストを企画したり、AIを用いた宇宙データ解析のワークショップを定期的に開催したりすることも、若い才能を発掘・育成する良い方法となるでしょう。
  • 分野横断的なAIの応用: マッテオさん自身が、彼のAIモデルが経済や環境モニタリングなど、他の分野でも役立つ可能性があると語っています。これは、日本社会が直面する様々な課題(少子高齢化、環境問題、災害予測など)に対しても、AIが新たな解決策をもたらす可能性を示唆しています。例えば、日本の気象庁保有する過去の膨大な気象データや、政府機関が収集する経済統計データにAIを適用することで、これまで見えなかったパターンや、より正確な未来予測が可能になるかもしれません。

記者からの提案

今回のニュースは、AIが人間の能力を補完し、時にはそれを超える力を持つことを示しています。しかし、AIはあくまで「道具」であり、それをどう使いこなすかは人間の知恵と発想にかかっています。マッテオさんのように、既成概念にとらわれず、新しいアプローチを試みる勇気こそが、未来の発見につながる鍵となります。日本の教育現場でも、知識の詰め込みだけでなく、子どもたちが「なぜ?」「どうすれば?」と自ら問い、解決策を探求する力を育むことに、より力を入れるべきだと感じます。そして、年齢に関係なく、素晴らしいアイデアや研究成果を持つ若い世代を、社会全体で積極的に支援していくことが重要です。

まとめ:見えない宇宙を「見える」未来へ

アメリカの高校生マッテオ・パズさんが開発した画期的なAIによって、NASAの膨大なデータの中から150万個もの新たな宇宙の天体が発見されたニュースは、私たちに大きな驚きと感動を与えてくれました。この発見は、私たちがこれまで知らなかった宇宙の広がりを示し、遠い星や銀河の進化について新たな知見をもたらすものです。彼が発見した新天体のカタログは、2025年中に公開される予定であり、天文学界に大きな影響を与えることでしょう。

この物語は、AIの無限の可能性、そして若い才能が持つ計り知れない力を見事に証明しています。宇宙はまだまだ謎に満ちていますが、AIのような新しいツールと、マッテオさんのような好奇心あふれる若い探求者たちの手によって、これまで「見えなかった」ものが、やがて「見える」ようになる。そんな未来が、すぐそこまで来ているのかもしれません。

私たちはこれからも、宇宙の新たな発見、そしてそれを可能にする科学技術の進歩に注目していきましょう。