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ピョンとひと跳び、瓦礫を越え宇宙へ!災害救助もこなす驚異の一本足ロボ「SALTO」の秘密

私たちの身の回りでは、配達ロボットや工場で働くロボットなど、様々なロボットを目にする機会が増えました。多くは車輪や複数の脚で移動しますが、もし、たった一本の脚で、ぴょんぴょんと飛び跳ねるように移動するロボットが、災害現場や遠い宇宙で活躍するとしたら、どうでしょうか?

今回ご紹介するのは、そんな常識を覆すユニークなロボット、カリフォルニア大学バークレー校が開発した「SALTO」です。この小さなロボットは、将来、災害救助や、なんと土星の衛星エンケラドゥスの探査にまで使われる可能性があると、大きな注目を集めています。

U.C. Berkeley's Tiny Pogo Robot has a Unique Locomotion Style - Core77

一本脚の跳躍ロボット「SALTO」の驚くべき能力

「ポゴスティック」のように跳ねるロボット

私たちが普段目にするロボットのほとんどは、車輪で転がったり、複数の脚で歩いたりします。しかし、カリフォルニア大学バークレー校の研究者たちが開発した「SALTO」は、まるで一本脚で飛び跳ねるおもちゃ「ポゴスティック」のように移動する、非常に珍しいロボットです。その移動速度は、なんと時速約12.8キロメートルにも達します。

SALTOという名前は、「Saltatorial Agile Locomotion on Terrain Obstacles」の頭文字をとったもので、直訳すると「障害物のある地形を跳躍で素早く移動する」という意味になります。ここで使われている「Saltatorial(跳躍運動)」という言葉は、カンガルーやバッタ、ウサギなどが飛び跳ねる移動方法を指す科学的な名称です。このロボットの小ささとユニークな動き方は、特に、入り組んだり、足場が悪かったりする場所を進むために考えられました。

カリフォルニア大学バークレー校のロボット研究者、ジャスティン・イム氏は、「小さいロボットは、大きなロボットや人間が入れない場所で、様々なことに役立ちます」と語っています。例えば、地震などで建物が崩れた災害現場では、瓦礫の下に閉じ込められた人を見つけるのに、小型ロボットが非常に有効だと考えられています。救助隊員にとって危険な場所でも、ロボットならより早く、安全に捜索できる可能性があるのです。SALTOは、ただ小さいだけでなく、高く素早く飛び跳ねることで、このような難しい場所を乗り越えることを目指して開発されました。

宇宙探査ロボットへの進化

SALTOの開発は2016年に始まり、当初の目的は災害現場での活躍でした。しかし、約10年の時を経て、新たな可能性が浮上しました。NASAから資金提供を受け、SALTOの改良版が、土星の衛星エンケラドゥスの探査に活用されるプロジェクトが進められているのです。

エンケラドゥスは、土星の6番目に大きな衛星で、地表の氷の下には液体の水の海があると考えられており、生命の存在の可能性が注目されています。この衛星の重力は、地球のわずか80分の1しかありません。そのため、一本の脚で一度跳ねるだけで、フットボールフィールド1個分の長さ(約91.4メートル)も進んでしまうほどです。

このような低重力環境で目的の場所へ正確に着地するためには、高度な制御技術が求められます。研究者たちは、そのヒントを身近な動物である「リス」に見出しました。リスが長い距離を跳び、細い枝に正確に着地するメカニズムを詳しく研究し、SALTOにその動きを取り入れたのです。具体的には、SALTOには新たに「掴み爪」と、姿勢を調整するための「プロペラ状フライホイール」が追加される予定です。これにより、ピンポイントでの着地精度が実現される見込みです。

なぜ「一本脚」が優れているのか?

なぜSALTOは、複数の脚ではなく、一本の脚しか持たないのでしょうか?イム氏はその理由について、「ジャンプするためには、一本脚が最も効率的です。複数の装置に力を分散させない分、その一本の脚に最も多くの力を集中させることができます」と説明しています。さらに、高く飛び跳ねるほど、一本脚であることのデメリットは少なくなると言います。

例えば、自分の脚の何倍もの高さにジャンプする場合、全ての脚が同時に地面に触れて同時に地面を離れるという、ただ一つの「歩き方」しかありません。このような状況では、複数の脚を持っていても一本脚と変わらないため、一本脚で十分だというわけです。この考え方は、ロボット設計における効率性と機能性の追求を示しています。

SALTOの開発は、カリフォルニア大学バークレー校の「ポリペダルラボ」という生物学の研究室と、「バイオミメティックミリシステムズラボ」という工学の研究室が協力して行われました。生物の動きを研究する専門家と、それをロボットに応用する専門家が手を取り合うことで、真のイノベーションが生まれた好例と言えるでしょう。

日本における意義と今後の展望

災害大国日本における小型ロボットの重要性

SALTOのような、狭い場所や瓦礫の多い場所を素早く移動できる小型ロボットは、自然災害の多い日本にとって非常に大きな意義を持ちます。地震や土砂災害、津波などが発生した際、崩壊した建物や危険な場所に人間が直接入ることは非常に困難であり、二次災害のリスクも伴います。SALTOのような跳躍ロボットは、そうした場所にいち早く到達し、被災者の捜索や状況確認を行うことで、救助活動の迅速化と安全確保に貢献できる可能性があります。

日本のロボット研究機関や企業も、災害対応ロボットの開発に力を入れています。SALTOの技術は、日本の災害救助ロボットの進化に新たな視点をもたらすかもしれません。例えば、日本の「ハイパーレスキュー隊」が活動するような現場で、人間が入れない場所を自律的に探索し、映像や情報を送ってくれるような役割が期待されます。

宇宙開発競争と「バイオミミクリー」の可能性

エンケラドゥス探査への応用は、宇宙開発競争が激化する中で、日本にとっても刺激となるでしょう。JAXAは、月面探査車「SORA-Q」など、ユニークな探査ロボットの開発を進めています。低重力環境での跳躍移動は、月や火星の探査においても有効な手段となる可能性があり、SALTOの技術は将来的な国際協力や、日本の独自探査ミッションにも貢献するかもしれません。

また、リスの跳躍メカニズムからヒントを得たという「バイオミミクリー」、つまり生物の仕組みを模倣するアプローチは、日本のロボット開発でも積極的に取り入れられています。昆虫や動物の動きを模倣したロボットは、より効率的で適応性の高い移動能力を実現する鍵となります。SALTOの事例は、生物学と工学の連携が、いかに革新的な成果を生み出すかを示す素晴らしい例であり、日本の研究者にとっても多くの示唆を与えるでしょう。

未来を跳躍するロボットたち

一本脚でぴょんぴょんと跳ねる小さなロボットSALTOが、災害現場や遠い宇宙、さらには土星の衛星エンケラドゥスといった過酷な環境での活躍を目指しているというニュースは、私たちにロボット技術の無限の可能性を示してくれます。一本脚であることの効率性、そして生物の動きから学ぶ「バイオミミクリー」の重要性が、このロボットの成功の鍵と言えるでしょう。

災害からの救助、そして未知の宇宙の解明という、人類が直面する大きな課題に対して、ロボットが貢献できる領域はこれからも広がり続けます。今後、SALTOのような跳躍ロボットが、どのような進化を遂げ、どのような場所で私たちの想像を超える活躍を見せてくれるのか、その未来の「跳躍」に注目していきたいと思います。この技術が、いつか日本の災害現場や、JAXAの宇宙探査ミッションにも貢献する日が来ることを期待せずにはいられません。