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韓国発!グリーン水素革命、日本のエネルギー自給率UPの鍵?

私たちが毎日使う電気や、車を動かすガソリン。これらがCO2(二酸化炭素)を出してしまうことで、地球温暖化が進んでいるのは皆さんご存知の通りです。地球を救うために、CO2を出さないクリーンなエネルギーへの切り替えが世界中で急がれています。

そんな中、韓国の研究チームが、次世代のクリーンエネルギーとして期待されている「グリーン水素」を、もっと安く大量に作るための画期的な技術を開発したというニュースが飛び込んできました。この研究成果は「Low-cost green hydrogen production possible with Korean scientists’ new breakthrough - Interesting Engineering」という記事で、2025年6月16日早朝に報じられたばかりです。この技術が実用化されれば、私たちの生活、そして地球の未来が大きく変わるかもしれません。

クリーンエネルギー「グリーン水素」生産に朗報

「水素」は、燃やしても水しか出さず、CO2を排出しないため、地球に優しいエネルギー源として注目されています。特に、再生可能エネルギー(太陽光や風力など)を使って水から作られる水素は「グリーン水素」と呼ばれ、究極のクリーンエネルギーとされています。

しかし、これまでのグリーン水素の生産には大きな課題がありました。それは、水を水素と酸素に分解する際に使う「電気触媒」という材料が、プラチナ(白金)のような高価な希少金属で作られていたため、コストがかかりすぎることです。この高コストが、グリーン水素の普及を妨げる大きな壁となっていました。

漢陽大学ERICAキャンパスの画期的な技術

今回の画期的な突破口を開いたのは、韓国の漢陽大学 ERICAキャンパスの研究チームです。彼らは、「リン化コバルト(コバルトとリンという元素が組み合わさってできた物質)」をベースにした新しい「ナノマテリアル(10億分の1メートルという、非常に小さなスケールの材料)」を開発しました。

この新しい材料は、既存の高価な電気触媒よりも高性能でありながら、より低いコストで製造できるのが特徴です。具体的には、金属有機構造体(MOF: Metal-Organic Frameworks)という、金属と有機物がスポンジのように規則正しくつながってできた、たくさんの微細な穴を持つ材料を「土台」として活用しました。

研究チームは、このコバルトベースのMOFを「ニッケルフォーム(泡状になったニッケル)」の上に成長させました。そして、水素化ホウ素ナトリウム次亜リン酸ナトリウムといった化学物質を使って、リン化コバルトのナノシートに「ホウ素」を混ぜ込んだり、リンの量を調整したりする工夫を凝らしました。これにより、より優れた性能を持つ触媒が生まれたのです。

なぜ新しい触媒は優れているのか?

実験の結果、開発された触媒はどれも表面積が非常に広く、水素と酸素を作る反応(酸素発生反応 OER水素発生反応 HER)において、これまでの触媒よりもはるかに低い「過電圧(電気分解で必要となる余分な電圧)」で反応が進むことがわかりました。特に、0.5グラムの次亜リン酸ナトリウムを使って作られたサンプルは、OERで248ミリボルト、HERで95ミリボルトという、驚異的に低い過電圧を示しました。過電圧が低いほど、少ないエネルギーで効率的に水素を作れるため、生産コストを大幅に削減できるというわけです。

この素晴らしい性能の裏付けには、「密度汎関数理論(DFT: Density Functional Theory)」という、コンピューターを使って物質の性質を原子や電子のレベルで詳しく計算するシミュレーション技術が使われました。これにより、ホウ素を混ぜることやリンの量を最適化することが、触媒の性能向上にいかに重要であるかが科学的に証明されました。

日本にとってのグリーン水素と今回の発見の意義

日本は、エネルギー資源のほとんどを輸入に頼っており、エネルギー自給率の向上が長年の課題です。また、2050年までにカーボンニュートラル温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)を目指すという目標を掲げており、その実現のためにグリーン水素は「切り札」として位置づけられています。

日本への影響と期待

今回の韓国の研究成果は、日本にとっても非常に大きな意味を持ちます。安価にグリーン水素を生産できるようになれば、以下のようなポジティブな影響が考えられます。

  • エネルギーコストの削減: 日本の産業や家庭におけるエネルギーコストが下がり、経済全体に良い影響をもたらします。
  • 脱炭素社会の加速: 燃料電池車や燃料電池による発電など、水素を活用した技術の普及が加速し、CO2排出量の大幅な削減につながります。
  • 新たな産業の創出: グリーン水素関連技術やインフラの整備が進み、新たな雇用やビジネスチャンスが生まれる可能性があります。日本の企業(例えば、トヨタ自動車川崎重工業など)は既に水素関連技術に積極的に投資しており、今回の触媒技術は彼らの取り組みを後押しするでしょう。
  • エネルギー安全保障の強化: 化石燃料への依存度を下げ、エネルギー源を多様化することで、国際情勢に左右されにくい安定したエネルギー供給体制を築くことができます。

今後の展望と課題

今回の研究は、グリーン水素生産のコストを下げる上で重要な一歩ですが、まだ実験室レベルの成果です。今後、これを大量生産に適した工業スケールに拡大する技術開発や、開発された触媒の長期的な安定性や耐久性を確認する研究が必要です。また、水素を安全に貯蔵し、運搬するためのインフラ整備も不可欠です。

しかし、この研究は、希少な高価な金属を使わずとも、身近な材料で高性能な触媒が作れることを示しました。これは、グリーン水素の「手の届く」未来を現実にするための、大きな光と言えるでしょう。

地球の未来を拓く水素エネルギー

今回の韓国の研究チームによるブレークスルーは、私たちが目指す持続可能な社会、そして地球温暖化問題の解決に向けて、非常に大きな一歩となる可能性を秘めています。高価な材料に頼らず、より安価で高性能な触媒が実現すれば、グリーン水素は特別な存在から、私たちの日々の暮らしに寄り添う「当たり前のエネルギー」へと変わっていくでしょう。

水素エネルギーの技術開発は、まだ道のりの途中ですが、世界中の研究者たちの努力によって、その進化は加速しています。今回の成果が、地球全体の脱炭素化をさらに加速させ、よりクリーンで豊かな未来を実現するための強力な推進力となることを期待しましょう。私たち一人ひとりが、このような最新の科学技術の進展に関心を持つことが、未来を築く第一歩となるはずです。