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Meta AI、個人情報流出か? 日本への影響と対策を解説

私たちの生活に深く浸透しているAI(人工知能)は、質問応答や画像生成など、多岐にわたる機能で利便性を提供しています。しかし、その裏側で、ユーザーの個人情報が意図せず公開されてしまうという、看過できない問題が浮上しました。

本稿で解説するのは、FacebookInstagramを運営する大手IT企業Metaが提供するAIアプリで起きたプライバシーに関する問題と、それに対する同社の対応です。世界中で多くの人が利用するサービスだからこそ、私たち一人ひとりの情報がどのように扱われるのかは、極めて重要な問題です。

Business Insiderの報道によると、Meta AIアプリ内で個人的な内容のやり取りが意図せず公開されるケースが多発していることが判明しました。この問題を受け、Metaは対策に乗り出しました。本稿では、その詳しい経緯と、私たちユーザーにとって何が重要なのかを解説します。

この出来事は、2025年6月17日(日本時間)に報じられ、Metaはすでに改善策を講じています。私たちは、このような最新のテクノロジーがもたらす便利さと、それに伴うリスクの両方を理解しておく必要があります。

Meta AIアプリで発生した問題

Meta AIアプリは、ユーザーがAIと会話したり、AIに画像を作らせたりできる独立したチャットボットサービスです。このアプリには「Discover feed」(ディスカバーフィード)という機能があり、ユーザーはAIとのやり取りや、AIが作った画像を他の人に見せるために投稿できます。まるでSNSのタイムラインのように、他のユーザーの投稿を閲覧できる場所です。

本来、AIとのチャット内容はデフォルトで公開されるわけではありません。公開するためには、ユーザーが「シェア」ボタンを押し、さらに「投稿」ボタンを押す必要がありました。しかし、今回の問題は、この仕組みがユーザーにとって分かりにくかったために発生しました。

意図しない公開投稿が続出

Business Insiderの調査によって、このディスカバーフィードに、ユーザーが意図せず公開してしまったとみられる非常に個人的な情報があふれていることが判明しました。記事によれば、以下のような内容が含まれていました。

  • AIに娘のことで相談している親の投稿
  • ポケットの中で誤って録音されてしまい、職場での会話が記録された音声
  • 雇用主に関する法的アドバイスをAIに求めている従業員のテキスト

さらに、他のメディアやXでの報告では、税務情報や、AIの利用方法自体を理解していないと思われる、非常にプライベートな質問も見つかりました。例えば、あるユーザーは、とあるクリームをデリケートな部分に塗ったらどうなるか尋ねた後で「会話はプライベートに保ちたい」と付け加えているにもかかわらず、それが公開フィードに掲載されてしまっていたケースなどです。

まるで個人的な日記を、間違って学校の掲示板に貼り付けてしまったかのような状況です。

なぜこんなことが起きたのか?

ユーザーは公開するつもりがなかったのに、なぜこのような状況が起きてしまったのでしょうか。記事の筆者が取材した一人の男性は、「車修理に関するチャット内容を投稿するつもりはなかった」と語っています。これは、アプリのインターフェースが、ユーザーに「今から公開しますよ」ということを十分に伝えきれていなかった可能性を示唆しています。

Meta AIアプリは今年の4月下旬に初めて公開されましたが、その時点でも「意図しない公開投稿」の問題は指摘されていました。しかし、Business Insiderが先週再び確認したところ、状況はさらに悪化し、明らかに誤って共有されたと思われる投稿が激増していました。

Metaの対応と新しい警告メッセージ

Business Insiderの報道を皮切りに、BBC、The Washington Post、Wired、TechCrunchといった大手メディアもこの問題を追随して報じました。このようなメディアからの批判的な報道を受けて、Metaはすぐさま対応に動きました。

現在(2025年6月18日時点)、ユーザーがMeta AIアプリ内でチャットを「シェア」しようとすると、新しいポップアップ警告メッセージが表示されるようになっています。そのメッセージには、こう書かれています。

投稿するプロンプトは公開され、誰でも見ることができます。あなたのプロンプトは、他のMetaアプリでMetaによって提案される可能性があります。個人情報や機密情報を共有することは避けてください。

さらに、この警告メッセージが表示された後、すぐに「フィードに投稿」ボタンが有効になるのではなく、ユーザーが画面中央をもう一度タップしないとボタンが有効にならないような仕組みに変更されました。これにより、ユーザーが「本当に公開して良いのか」を二重に確認できる仕組みが導入されました。

また、ディスカバーフィードの内容にも変化が見られます。以前はテキストや音声ベースの投稿がかなり混じっていましたが、現在はほとんどが画像投稿になっていると筆者は指摘しています。これがMetaの意図的な調整によるものなのか、それとも新しい公開プロセスが導入された結果、テキストや音声の公開が減少した自然な結果なのかは、まだ不明です。

日本への関連性と私たちの情報リテラシー

このニュースは、日本に住む私たちにとっても他人事ではありません。AIサービスの普及は世界的な流れであり、日本でも多くのAIアプリが利用され始めています。

プライバシーと情報リテラシーの重要性

日本人は一般的に、プライバシーや個人情報に対して非常に敏感な傾向があります。しかし、新しいテクノロジーの登場とともに、サービス提供側の説明不足や、ユーザー側の情報リテラシー不足から、意図しない情報漏洩や誤解が生じるリスクは常に存在します。

特に、AIとの会話は、まるで親しい友人に相談するかのように、つい個人的な内容を話してしまいがちです。しかし、その内容が意図せず公開されてしまうと、取り返しのつかない事態に発展する可能性もあります。

今回のMetaの事例は、テクノロジー企業がユーザーインターフェースを設計する上で、プライバシー保護に最大限配慮すべきであることを改めて示しています。同時に、私たち利用者側も「この情報は公開される可能性があるのか?」「誰に見られるのか?」という意識を常に持ち、提供される情報をよく確認する習慣が重要です。

日本企業への示唆

今回の件は、日本国内でAIサービスやSNSを提供する企業にとっても重要な教訓となります。ユーザーが安心してサービスを利用できるよう、プライバシー設定は分かりやすく、誤解の余地がないように設計されるべきです。特に、デフォルト設定が「公開」になっている場合は、その旨を明確に伝え、ユーザーが意識的に「公開」を選択するような仕組みが求められます。

本問題から学ぶべきことと今後の展望

Meta AIアプリにおける「意図しない公開投稿」問題は、大手テクノロジー企業でさえ、ユーザープライバシーに関する課題に直面していることを浮き彫りにしました。メディアからの指摘を受けて迅速な対応を見せたことは評価できますが、本来であればサービス公開前にこのような問題が起きないよう、徹底した設計が求められます。

AI技術はこれからも進化し続け、私たちの生活をさらに豊かにしてくれるでしょう。しかし、その便利さの裏側には、常にプライバシーやセキュリティのリスクが潜んでいます。私たちユーザーは、新しい技術を享受しつつも、自分の情報がどのように扱われているのかに関心を持ち、疑問があれば声を上げる「情報リテラシー」を身につけることが不可欠です。

企業側には、ユーザーのプライバシー保護を最優先に考えた「プライバシー・バイ・デザイン(設計段階からプライバシー保護を組み込む考え方)」の徹底が求められます。透明性のある情報開示と、分かりやすいインターフェースの提供が、AI時代における企業の責任となるでしょう。

今後も、AI技術の進化と、それに伴うプライバシーや倫理に関する議論の動向に注目していく必要があります。