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YouTube激変!AI「Veo 3」搭載で動画制作革命、日本への影響は?

私たちの日々の生活に欠かせない動画プラットフォーム、YouTubeが、また一つ大きな進化を遂げようとしています。スマートフォンの画面をスワイプするだけで次々と魅力的な短い動画に出会えるYouTubeショートに、最先端のAI(人工知能)技術が搭載されることになりました。この技術によって、誰もがもっと手軽に、そして驚くほど簡単に動画を作れるようになるかもしれません。

今回発表されたのは、Googleが開発した高度な動画生成AI「Veo 3」が、今年の夏後半からYouTubeショートに導入されるというニュースです。これは、私たちが動画を「見る」だけでなく、「作る」という体験を根本から変える可能性を秘めています。この画期的な動きについて、詳しく見ていきましょう。

この話題の核心を報じているのが、こちらの記事です。 YouTube to Add Google’s Veo 3 to Shorts in Move That Could Turbocharge AI on the Video Platform - The Hollywood Reporter

YouTubeショートに最先端のAI「Veo 3」が搭載へ

2025年6月18日水曜日(日本時間21時28分)に、フランスのカンヌで開催された「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」で、YouTube最高経営責任者(CEO)であるニール・モーハン氏がこの重要な発表を行いました。彼は、人気YouTuberたちと共に登壇し、AIが持つ無限の可能性について熱く語りました。

モーハンCEOは「AIの可能性は無限大です」と述べ、エンターテインメントが過去20年で歴史上かつてないほど変化したことに触れました。その上で、次の20年ではクリエイターたちが形式を覆し、ジャンルを融合させ、さらに主流へと進出していくと予測。YouTubeがクリエイターたちが夢を仕事に変え、世界を変える舞台であり続けると強調しました。

現在、YouTubeショートには、すでにGoogleの動画生成AI「Veo」の旧バージョンを使った背景生成ツール「Dream Screen」が導入されています。これは、文字を入力するだけでAIが動画や画像の背景を生成してくれる機能で、クリエイターが想像力を形にするのを手助けしてきました。

今回導入されるVeo 3は、このVeoの最新版です。2025年5月にリリースされたVeo 3は、単にテキストから動画を作るだけでなく、音声も一緒に生成できる点が大きな進化です。これにより、よりリアルで没入感のある動画を簡単に作成できるようになります。

ショート動画市場での激しい競争とYouTubeの戦略

YouTubeショートは、2021年にサービスを開始して以来、急速に成長してきました。モーハンCEOがカンヌで明らかにしたところによると、YouTubeショートは現在、1日あたり平均で2,000億回以上の再生回数を誇るとのことです。これは、YouTubeがいかに巨大なプラットフォームであるかを物語る驚異的な数字です。

この背景には、TikTokInstagram Reelsといった競合するショート動画プラットフォームとの熾烈な競争があります。YouTubeにとって、ショート動画はユーザー獲得とエンゲージメント維持のための「戦略的に不可欠なもの」となっています。

AI動画生成ツールの導入は、クリエイターたちがもっと簡単に、もっと多様なコンテンツを作れるようにすることで、YouTubeショートの魅力をさらに高めようという狙いがあります。すでにVeo 3で作成された動画の中には、歴史上の人物や架空のキャラクターがVlogを投稿しているようなコンセプトのものがSNSで拡散され、話題になっています。モーハンCEOは、このAIツールがクリエイターにとって「新しい創造の道を開く」ものだと説明しています。

AI時代における著作権表現の自由、そして日本への影響

AI技術の進化は、コンテンツ制作に大きな可能性をもたらす一方で、いくつかの課題も生じさせています。特に、他人の顔や声を模倣する「ディープフェイク」のような技術が悪用されることへの懸念は高まっています。

YouTubeは、このような潜在的な問題や論争に先んじて対応しようと、大手芸能事務所であるCAAやトップクリエイターたちと提携し、有名人などがプラットフォーム上での自身の肖像権を管理できるツールを開発していると報じられています。これは、AI生成コンテンツの倫理的な利用を促進するための重要な一歩と言えるでしょう。

日本への影響

このYouTubeショートへのVeo 3導入は、日本の動画クリエイターや視聴者にも大きな影響を与えるでしょう。

  • クリエイターにとってのチャンス: これまで動画制作には、撮影機材や編集スキル、さらにはアイデアを形にするための時間と労力が必要でした。しかし、Veo 3のようなAIツールを使えば、テキストプロンプトを入力するだけで高品質な動画を簡単に生成できるようになります。これにより、専門的なスキルがない人でも動画クリエイターとして活躍できる可能性が広がります。日本のVlogerやインフルエンサー、あるいは企業が短尺のプロモーション動画を効率的に制作する上で、強力なツールとなるでしょう。特に、低コストで高品質な動画を量産できるようになることから、広告・宣伝分野での活用も期待されます。
  • コンテンツの多様化: AIが生成する動画は、人間の想像力を超えるようなユニークな表現を生み出す可能性があります。これにより、YouTubeショート上にはこれまでになかったような、斬新で面白いコンテンツが増えていくかもしれません。視聴者は、より多様でパーソナライズされた動画体験を享受できるようになるでしょう。
  • 倫理的課題への対応: 日本でも、AI生成コンテンツにおける著作権、肖像権、そしてフェイクコンテンツの問題は議論されています。YouTubeが導入する肖像権管理ツールが、日本のクリエイターやタレントにも適用されるのか、あるいは日本独自の法整備やガイドラインが求められるのか、今後の動向が注目されます。クリエイター側も、AIツールの利用規約や倫理ガイドラインをしっかりと理解し、適切な利用を心がける必要があります。

私たちの視点から:創造性の新たな地平と責任

YouTubeがVeo 3をショートに統合する動きは、単なる機能追加以上の意味を持ちます。これは、動画制作の民主化をさらに加速させるものです。誰もが頭の中のアイデアを瞬時に映像化できる時代が到来しつつあります。これにより、動画クリエイターという職業の定義も変わり、テキストライターや企画者としての役割がより重要になるかもしれません。

一方で、AIが生成するコンテンツが増えることで、「本物」と「偽物」の区別がつきにくくなるという懸念も拭えません。YouTubeが先行して肖像権保護の取り組みを進めていることは評価できますが、技術の進化は早く、常に新たな課題が生まれるでしょう。私たちは、AIによって生み出されるコンテンツを享受するだけでなく、その倫理的・社会的な側面にも目を向ける必要があります。

AIは、私たち人間の創造性を「補助」し、「拡張」するツールです。最終的に動画に魂を吹き込み、人々の心に響くストーリーを語るのは、やはり人間の感性と意図です。AIが提供する技術的な恩恵を最大限に活用しつつ、いかに人間の創造性や倫理観を大切にできるかが、これからのデジタル社会における大きなテーマとなるでしょう。

まとめ:AIが切り拓く動画の未来

YouTubeショートへのVeo 3統合は、動画コンテンツの未来を大きく変える可能性を秘めた発表です。誰もが簡単に高品質な動画を作れるようになることで、クリエイターエコノミーはさらなる広がりを見せるでしょう。同時に、AIの適切な利用と、肖像権や倫理といった課題への対応も引き続き注視していく必要があります。

これからもYouTubeがどのように進化し、私たちの生活や表現活動にどのような影響を与えていくのか、注目していきましょう。未来の動画体験が、ますます豊かで刺激的なものになることを期待せずにはいられません。