「モンスターハンター」シリーズは、日本だけでなく世界中のゲームファンに愛される、カプコンが生んだ超人気ゲームです。その最新作『モンスターハンターワイルズ』は、2025年2月28日に発売されたばかり。特にPC版で、ちょっと困ったことが起きているんです。
発売から数ヶ月が経ち、ゲーム配信プラットフォーム「Steam」で、この『モンスターハンターワイルズ』のPC版が「圧倒的に不評」という厳しい評価を受けているというニュースが報じられました。世界中のPCゲーマーが集まるSteamで、一体何が起こっているのでしょうか?
今回の記事では、ゲーム情報サイトWindows Centralが伝えたMonster Hunter Wilds game reviews hit "Overwhelmingly Negative" on Steam — can Capcom turn it around?をもとに、その原因と、今後のゲームの行方について分かりやすく解説していきます。
大人気「モンハン」最新作、なぜ「圧倒的に不評」に?
『モンスターハンターワイルズ』の現状と厳しい評価
記事によると、『モンスターハンターワイルズ』(以下、モンハンワイルズ)は、発売からわずか数ヶ月で世界で1000万本以上を売り上げ、Steamでは一時100万以上の同時接続プレイヤーを記録するなど、スタートはとても順調でした。Steamは、アメリカのValve Corporation社が運営する世界的に有名なオンラインゲームプラットフォームであり、PCでゲームの購入やプレイが可能です。発売当初はWindows Centralでも5点満点中4点の高評価を受けるなど、批評家からの評価も高かったのですが、最近になってPC版の評価が「圧倒的に不評」という非常に厳しいものに転じてしまったようです。
プレイヤーが不満を感じる主なポイント
ファンからの批判は多岐にわたりますが、主に以下の3つの点が指摘されています。
「エンドコンテンツ」の不足
- 「エンドコンテンツ」とは、ゲームのメインストーリーをクリアしたり、キャラクターを十分に強くしたりした後も、長く楽しめる「やりこみ要素」のことです。例えば、もっと難しいクエストに挑戦したり、珍しいアイテムを集めて最強の装備を目指したりすることなどが、これにあたります。『モンハン』シリーズは、過去作ではこのエンドコンテンツが豊富で、長く遊べることで知られていました。しかし、今作の『モンハンワイルズ』では、このやりこみ要素が「驚くほど短い」と指摘されています。
- さらに、ゲーム全体の難易度が過去作に比べて「優しすぎる」という声も多く聞かれます。モンスターとの戦いが簡単すぎると、新しい装備を作るための「素材集め」(これを「グラインド」と呼びます)の必要性も薄れ、結果的にゲームを続けるモチベーションが下がってしまうようです。
PC版の「パフォーマンス」問題
- PCゲームの「パフォーマンス」とは、ゲームがどれだけ快適に、スムーズに動くかという動作の質のことを指します。記事によると、PC版『モンハンワイルズ』は発売から数ヶ月経っても、このパフォーマンスが「不十分」だと強く批判されています。
- 具体的には、「フレームレート」の低下が問題視されています。「フレームレート」とは、1秒間に画面が何枚の静止画(コマ)で構成されているかを示す数値です。この数値が高いほど映像はなめらかに見え、低いと画面がカクカクして動きがぎこちなく感じられます。プレイヤーは、たとえ最新の高性能なPCを使っていても、「フレームレートが安定しない」「常にカクカクする(スタッター)」「グラフィックグリッチ(画面表示の乱れ)」が多く、「バグやクラッシュ(ゲームが強制終了すること)が頻繁に起こる」といった問題を報告しているようです。
短いストーリーと薄い「やりがい」
- メインストーリーの長さが短く、内容もあまり印象に残らないという意見もあります。モンハンシリーズの魅力は、壮大な世界観の中で強大なモンスターを狩る「狩り」そのものにありますが、その導入部分であるストーリーや、それによって得られる達成感ややりがいが不足していると感じるプレイヤーもいるようです。
過去作『モンスターハンター:ワールド』との比較
これらの不満の結果、『モンハンワイルズ』のPC版は、同時接続プレイヤー数が、なんと約7年前の旧作である『モンスターハンター:ワールド』(以下、モンハンワールド)を下回ってしまいました。モンハンワールドは2018年に発売されたゲームで、現在はカプコンからの公式アップデートもほとんどありません。にもかかわらず、記事が書かれた時点では、今のモンハンワイルズの2倍ものプレイヤーがモンハンワールドを遊んでいるというのですから、これはゲーム業界にとっても非常に衝撃的な事実です。
多くのプレイヤーが、モンハンワールドが提供していた「やりごたえ」と「コンテンツの幅広さ」を求めて、古いゲームに戻ってしまっている状況と言えるでしょう。
なぜこのような状況に? カプコンの挑戦と誤算
エンドコンテンツの重要性
『モンハン』シリーズの大きな特徴は、その「ロングテール」にあると記事は指摘しています。「ロングテール」とは、ゲームが発売された後も、長くにわたってプレイヤーに遊び続けてもらうための、豊富な追加コンテンツやエンドコンテンツが提供されることを指します。これにより、ゲームは常に新鮮さを保ち、プレイヤーを飽きさせません。
しかし、『モンハンワイルズ』では、モンスターの難易度が低すぎたことで、わざわざ強力な装備を「グラインド」(繰り返し同じ作業をして素材を集めること)する必要がなくなってしまいました。これは、プレイヤーがゲーム内で目標を見失い、結果としてエンドコンテンツが短いと感じてしまう大きな原因になっていると考えられます。
PC版の最適化の難しさ
PC版のパフォーマンス問題は、ゲーム開発において非常に難しい課題です。PCは家庭用ゲーム機と異なり、様々な性能の部品が組み合わされているため、あらゆる環境で快適に動作するようゲームを「最適化」するのが非常に大変だからです。特に『モンハン』のような美麗なグラフィックと広大なフィールドを持つゲームでは、高い処理能力が求められます。しかし、いくら高性能なPCを持っていても、ゲーム自体がきちんと最適化されていなければ、スムーズに遊ぶことはできません。これは、どんなに良いエンジンを積んだ車でも、道路がガタガタだと快適に走れないのと似ていますね。
日本のゲーム業界への影響とカプコンのこれから
カプコンは日本のゲーム会社として、世界的な人気シリーズを数多く生み出してきました。『モンハン』はその中でも特に代表的な存在です。今回の『モンハンワイルズ』PC版の厳しい評価は、日本のゲーム開発会社がグローバル市場、特にPCゲーマーという非常に要求の厳しい層にいかに対応していくかという課題を浮き彫りにしています。
PCゲーム市場は世界的に拡大しており、日本でもeスポーツの人気などからPCでゲームをプレイする人が増えています。今回の問題は、単に「モンハン」だけの話ではなく、日本のゲーム業界全体にとって、PCプラットフォームへの対応や、長期的なゲーム運営(「ライブサービスゲーム」とも呼ばれ、発売後も継続的にアップデートやイベントを提供するタイプのゲーム)の重要性を示す事例とも言えるでしょう。
今後の展望と期待される改善
記事の筆者も述べているように、過去作の『モンハンワールド』や『モンスターハンターライズ』も、発売当初はプレイヤーからの不満がありながらも、「タイトルアップデート」(ゲーム内容を更新する無料の大型アップデート)やダウンロードコンテンツ(DLC)によって改善され、最終的にファンに愛されるゲームとなりました。
『モンハンワイルズ』でも、今後予定されている「タイトルアップデート」に大きな期待が寄せられています。特に、本記事執筆時点(2025年6月下旬)で配信が迫っている「ラギアクルス タイトルアップデート」のような大型アップデートで、より充実したエンドコンテンツの追加や、PC版のパフォーマンス問題の改善が急務となっています。ラギアクルスは過去作にも登場した人気のモンスターで、その登場は多くのプレイヤーのモチベーションを高める可能性があります。
しかし、もしこれらの問題が迅速に解決されなければ、一部の長年のファンが『モンハンワイルズ』から完全に離れてしまい、シリーズの今後の展開にも影響を及ぼす可能性があります。カプコンには、プレイヤーの声に真摯に耳を傾け、今回の問題を乗り越えてくれることを期待したいですね。
まとめ:人気シリーズの「正念場」
『モンスターハンターワイルズ』PC版が直面している「圧倒的に不評」という評価は、決して軽い問題ではありません。しかし、これは同時に、プレイヤーがこのシリーズにどれほど大きな期待を寄せているかの表れでもあります。
カプコンには、過去の成功体験に甘んじることなく、PC版の技術的な問題解決と、プレイヤーが長く深く楽しめるエンドコンテンツの充実という、二つの大きな課題に全力で取り組むことが求められています。
本記事執筆時点で配信が目前に迫る「ラギアクルス タイトルアップデート」は、ファンにとっての大きな希望です。このアップデートがプレイヤーの期待に応え、再び「モンハン」の世界に熱中できるような体験を提供できるかどうかが、『モンハンワイルズ』、ひいてはシリーズ全体の未来を左右する正念場となるでしょう。
私たちは、カプコンがこの困難を乗り越え、より多くのハンターたちが心ゆくまで楽しめる「狩り」を提供してくれることを心から願っています。
