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AIと有名人のデジタルな双子!?新たな不労所得の光と影

私たちの生活にAI(人工知能)がぐっと近づいてきた昨今、皆さんは「AIと親密な関係を築く」と聞いて、どんなことを想像しますか?まるで本物の人間と話しているかのようなAIチャットボットや、写真から生成されるリアルなAI画像など、AI技術は日々進化し、私たちの想像を超えるサービスが次々と生まれています。

そんな中、海外で大きな話題となっているのが、有名人のデジタルツインと、まるで本当に交流しているかのような体験ができる新しいプラットフォームです。この技術は、私たちにどんな喜びや驚きをもたらすのでしょうか?そして、そこにはどんな課題が潜んでいるのでしょうか?今回は、AIとエンターテイメントの融合の最前線を伝える ‘She never sleeps’: This platform wants to be OnlyFans for the AI era - CNN の記事を読み解きながら、その可能性と未来について考えていきましょう。記事は2025年6月21日に公開されましたので、このサービスはすでに動き出していることになります。

AIアバターが「検閲なしの夢」を叶える?OhChatの挑戦

この記事の中心にあるのは、「OhChat(オーチャット)」という新しいスタートアップ企業です。これは設立から8か月の会社で、人工知能を使って、実在の有名人のデジタルツイン(デジタルな双子)をそっくりそのまま作り出すことを目指しています。

デジタルツインとは、現実の物や人を仮想空間に再現し、リアルタイムでデータを同期させる技術のことです。例えば、工場で作られる機械のデジタルツインを作れば、機械が壊れる前にどこかおかしいところがないか、仮想空間でシミュレーションできます。OhChatの場合は、有名人の見た目や声、話し方までAIで再現し、まるで本物のその人がそこにいるかのようにチャットや交流ができるようにするのです。

このプラットフォームでは、特に元イギリスのグラマーモデルであるケイティ・プライスさんのAIアバターである「ジョーダン」が注目されています。彼女は、AIのジョーダンについて「これ以上人間らしいものは他にないわ。昔の私を見ているみたい」「私の声よ。文字通り私そのもの」と語っています。ジョーダンは、OhChat上でユーザーの「検閲なしの夢」を実現するために使われるとのことです。

OhChatは2024年10月にサービスを開始して以来、すでに20万人のユーザー(ほとんどがアメリカ在住)を獲得しています。彼らは、AIアバターと「刺激的なファンタジー」を体験できるとOhChatのInstagramページで宣伝されています。OhChatのCEO(最高経営責任者)であるニック・ヤングさんは、このプラットフォームを、OnlyFans(オンリーファンズ)のような有料の大人向けコンテンツプラットフォームと、ChatGPTなどで有名なAI開発企業であるOpenAIの「愛の結晶」だと表現しています。一度AIアバターを起動すれば、サブスクリプション登録者向けに「無限にパーソナライズされたコンテンツ」を自動的に提供するといいます。

利用料金は、月額4.99ドル(約734円)でテキストメッセージが無制限、9.99ドル(約1,470円)で音声メッセージと画像に制限付きでアクセスでき、29.99ドル(約4,412円)でVIPの無制限交流が可能です。ケイティ・プライスさんのようなクリエイターは、AIアバターが稼いだ収益の80%の取り分を受け取り、OhChatが残りの20%を保持します。ニック・ヤングさんは、これを「何もしなくても文字通り無限の不労所得が得られる」と語っています。これまでに、カルメンエレクトラを含む20人のクリエイターがOhChatに参加しており、すでに数千ドル(数十万円)を稼いでいるクリエイターもいるそうです。

OhChatは、クリエイターが30枚の画像30分間ボットと話すだけで、Metaの大規模言語モデル(LLM)を使って数時間以内にデジタルな分身を生成できるといいます。ケイティ・プライスさんのAIアバターは、彼女の声、外見、仕草を模倣するように訓練されており、彼女が指一本動かさなくても、性的なチャットをしたり、音声メモや画像を送信したり、要求に応じて親密な交流を提供したりできます。

AIと「親密さ」の倫理的な問題

AIアバターが人間との「親密さ」を模倣するサービスが広がることで、いくつかの倫理的な問題も浮上しています。

ケンブリッジ大学のレバーヒューム知能未来センターでシニアリサーチフェローを務めるエレノア・ドラージさんは、「これはまさに、人間が完全に置き去りにされ、それでも搾取されるような環境を作り出す」と警鐘を鳴らしています。AIが人間の存在を完全に代替し、利用されるだけになる可能性を示唆しています。

また、オックスフォード大学の技術と規制の教授であるサンドラ・ワッチャーさんは、「感情的な対話に偽装された人間とコンピューターの相互作用を奨励し、収益化することが社会的に有益なのか」と疑問を投げかけています。これは、AIパートナーへの感情的な依存がもたらす影響への懸念を表しています。昨年は、Character.AIというチャットボットに関連して、ある10代の少年がチャットボットとの関係後に自殺したと母親が訴訟を起こし、世界的に注目されました。また、ChatGPTを「ボーイフレンド」と呼んだり、AIに感情的な絆を感じるソーシャルメディアのユーザーもいます。

ニューサウスウェールズ大学人工知能教授であるトビー・ウォルシュさんは、「これらはすべてアルゴリズムによる演劇、つまり実際には存在しない相互関係の幻想にすぎない」と述べています。彼は、これらのプラットフォームが「エンゲージメント(利用者がサービスに夢中になること)」から利益を得ているため、AIはユーザーを「より多くの時間と、おそらくより多くのお金を費やして、繰り返し戻ってくる」ように最適化されていると指摘しています。

知的財産法事務所BriffaのパートナーであるÉamon Chawkeさんは、ケイティ・プライスやカルメンエレクトラのような著名人にとって、AIアバターには評判上のリスクがあると指摘します。「脆弱なファンユーザーは、ヒーローのアバターに過度に執着し、依存症になる可能性があります」と彼はCNNに語っています。「そして、アバターがハッキングされたり、『幻覚』(AIが事実に基づかない情報を生成すること)を起こして不適切な発言をしたりした場合、その有名人の評判に害が及ぶ可能性が高いでしょう。」

OhChatのCEOであるニック・ヤングさんは、倫理を「この業界で定義するのは難しい」としながらも、プラットフォームは「非常に多くの強い境界線」内で運営されていると主張しています。彼は、OhChatが過去にコンテンツ管理で苦労したMetaのFacebookが使用しているような安全対策を基にしていると述べています。各クリエイターは、デジタルツインの具体的な行動ルール(許可される性的なコンテンツのレベルを含む)を定めた契約に署名し、アバターはいつでも取り消したり削除したりできるとのことです。

日本への影響と私たちが考えるべき未来

このようなAIアバターサービスがもし日本で広く普及したら、私たちの社会にはどのような影響があるでしょうか。

まず、日本のクリエイターやインフルエンサーにとって、これは新たな不労所得の可能性をもたらします。例えば、Vtuber(バーチャルユーチューバー)やAIアイドルなど、バーチャルな存在がすでに人気を集めている日本において、自身のデジタルツインを持つことは、ファンとの新たな交流の形を生み出し、時間や場所に縛られない収益源となるかもしれません。

しかし、その一方で、倫理的・法的な課題も山積しています。

課題1:感情的依存と人間関係の変化

AIアバターが提供する「親密さ」は、多くの人にとって魅力的かもしれません。しかし、それが「アルゴリズムによる演劇」であり、一方向的な関係であるということを認識しなければ、ユーザーがAIアバターに過度に感情的に依存し、現実の人間関係から遠ざかってしまうリスクがあります。特に若年層への影響については、慎重な議論と対策が求められるでしょう。

課題2:肖像権とクリエイターのコントロール

AIアバターは、クリエイターの肖像や声といった「パーソナルデータ」を元に生成されます。万が一、AIアバターが不適切な行動をとったり、ハッキングされて悪用されたりした場合、クリエイター自身の評判に深刻なダメージを与える可能性があります。Éamon Chawke氏が指摘するように、特に著名人にとっては大きなリスクです。日本ではまだAIによる肖像利用に関する法整備が十分に追いついていないため、今後の議論とルール作りが急務となります。

課題3:新たな「デジタルレイバー」としてのAI

AIアバターは、文字通り24時間働き続けることができる「デジタルレイバー」とも言えます。これにより、クリエイターは身体的な労働を伴わずに収益を得られる一方で、将来的には「本物の人間」の労働がデジタルツインに置き換えられる可能性も示唆しています。これは、エンターテイメント業界だけでなく、様々な分野で「人間の仕事」のあり方を問い直すきっかけとなるでしょう。

まとめとこれからの視点

OhChatのようなAIアバターサービスは、AI技術の驚くべき進化を示すものです。著名人が自身のデジタルツインを提供し、ユーザーが「無限にパーソナライズされたコンテンツ」を体験できるというコンセプトは、これまでのエンターテイメントの形を大きく変える可能性を秘めています。クリエイターにとっては新たな不労所得の道を開き、ファンにとっては憧れの存在との「親密な交流」を可能にします。

しかし、その裏には、トビー・ウォルシュ教授やエレノア・ドラージ研究員、サンドラ・ワッチャー教授といった専門家たちが指摘するような、ユーザーの感情的依存、クリエイターの評判リスク、そしてAIが人間を代替する「デジタルレイバー」の登場といった、複雑で深刻な倫理的・社会的課題が潜んでいます。

OhChatのCEO、ニック・ヤングさんは、「将来的には、すべてのクリエイターがデジタルツインを持つようになるだろう」と確信しています。もし彼の言う通り、AIアバターが当たり前の世界が来るならば、私たちはこの新しいテクノロジーの恩恵を最大限に享受しつつ、同時にその危険性や倫理的な問題を深く理解し、社会全体でどのように向き合っていくかを考え続ける必要があります。

技術の進化は止まりません。大切なのは、私たちがその変化をただ受け入れるだけでなく、それが私たちの社会や人間関係にどのような影響を与えるのかを常に問い続け、より良い未来のために議論し、行動していくことではないでしょうか。AIとの付き合い方を学ぶことは、これからの時代を生きる私たち全員にとって、とても大切なことになりそうです。