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ウェッブ望遠鏡、初の系外惑星「TWA 7 b」直接撮影に成功 生命探査の新時代へ

ウェッブ望遠鏡、初の系外惑星を直接撮影――土星に似た惑星「TWA 7 b」の姿とは

「宇宙には、私たち以外にも生命はいるのだろうか?」夜空を見上げるたびに、多くの人が抱くこの問いに、また一つ希望の光が差し込みました。NASAなどが運用するジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡JWST)が、太陽系の外にある惑星、いわゆる「系外惑星」の直接撮影に初めて成功したというニュースです。

今回撮影されたのは、土星とほぼ同じ質量を持つとされる系外惑星「TWA 7 b」。この発見が確定すれば、ウェッブ望遠鏡による初の系外惑星の直接撮影となり、この観測方法で捉えられた惑星としては史上最も軽いものになります。

この発見を報じたニュース「Webb Captures Its First Direct Image of an Exoplanet」をもとに、今回の観測が天文学にとってどれほど大きな一歩なのか、その詳細と未来への可能性を分かりやすく解説します。

主星の光を打ち消す技術、ウェッブ望遠鏡は「TWA 7 b」をどう捉えたのか

今回観測された「TWA 7 b」は、地球から約111光年離れた若い恒星「TWA 7」の周りを公転しています。この観測を成功に導いたのが、ウェッブ宇宙望遠鏡の驚異的な性能と、「コントラスト撮像」と呼ばれる特別な技術です。

主星の光を遮る「コロナグラフ」の威力

系外惑星は、中心にある主星に比べて極めて暗く、その光は主星の強烈な輝きにかき消されてしまいます。これは、太陽のすぐそばでまたたく小さなホタルを見つけようとするようなもので、直接観測することは非常に困難です。

そこで活躍するのが、JWSTに搭載されたMIRI(中赤外線観測装置)の「コロナグラフ」という機能です。これは、特殊なマスクで主星の眩しい光だけを巧みに覆い隠し、その周りにある暗い惑星の光だけを捉えるための装置です。この技術によって、これまで直接見ることが難しかった「TWA 7 b」の姿を鮮明に捉えることができました。

土星サイズの惑星を発見

観測された「TWA 7 b」は、質量が土星とほぼ同じ(地球の約95倍)と推定されており、直接撮影された系外惑星としては最も軽い部類に入ります。さらに興味深いことに、「TWA 7 b」は主星「TWA 7」を取り巻く3つの塵のリングの一つに位置しており、その場所や明るさ、色が理論的な予測と一致しています。これは、この惑星が星の周りの円盤の形作りに影響を与えている可能性を示唆しています。

この歴史的な成果は、フランス国立科学研究センター(CNRS)の研究者アンヌ=マリー・ラグランジュ(Anne-Marie Lagrange)氏が率いるチームによって、権威ある科学雑誌Natureに発表されました。

ラグランジュ氏は「この観測装置のおかげで、私たちの太陽系にある惑星と同程度の質量の惑星を直接撮影できるようになった。これは、惑星系の形成と進化を理解する上で、非常にエキサイティングな一歩です」と語ります。また、共同研究者であるジョンズ・ホプキンス大学のマティル・マラン(Mathile Malin)氏も、この発見が系外惑星探査の新たな時代を切り開くものだと期待を寄せています。

「第二の地球」探しへの大きな一歩――直接撮像が拓く未来

今回の「TWA 7 b」の直接撮像の成功は、「第二の地球」、すなわち生命が存在する可能性のある惑星を探す上で、画期的な進展です。

これまでの系外惑星探査では、惑星が主星の前を横切る際のわずかな光の変化を捉える「トランジット法」などが主流でした。この間接的な方法では惑星の存在は分かっても、その詳細な姿や大気の状態まで調べることには限界がありました。

しかし、直接撮像技術が進化すれば、惑星の光を直接分析し、大気の組成を調べることが可能になります。これにより、水の存在や、酸素やメタンといった生命の痕跡(バイオシグネチャー)を探る道が開かれます。

今回発見された「TWA 7 b」はガス惑星ですが、この技術をさらに発展させることで、将来的にはより小さく、地球に似た環境を持つ岩石惑星を直接捉えられるかもしれません。それは、私たちが宇宙で孤独ではない可能性を科学的に探る、壮大な挑戦の始まりを意味します。

【記者の視点】国際協力が拓く宇宙開発と日本の役割

今回の成果は、NASA欧州宇宙機関ESA)、カナダ宇宙庁(CSA)が共同で運用するウェッブ宇宙望遠鏡の能力を最大限に引き出したものです。フランスのCNRSやアメリカのジョンズ・ホプキンス大学など、世界中の研究機関が参加しており、最先端の宇宙科学が国境を越えた協力によって成り立っていることを示しています。

日本も宇宙航空研究開発機構JAXA)を中心に、独自の宇宙探査計画を進めています。将来の赤外線観測衛星や系外惑星の大気分析ミッションなどにおいて、JWSTで培われた高コントラスト撮像やコロナグラフといった先進技術は、日本の宇宙開発にとって貴重な道しるべとなるでしょう。

国際的な枠組みの中で日本がどのような貢献をしていけるか、今回の発見は、そうした未来を考える上でも重要な示唆を与えてくれます。

TWA 7 bの発見が示す、宇宙探査の新たな地平

「TWA 7 b」の発見は、単なる天文学的な成果にとどまらず、人類が長年抱いてきた「私たちは宇宙で孤独なのか?」という根源的な問いに答えるための、大きな一歩です。

ウェッブ宇宙望遠鏡のような革新的な技術によって、これまで想像もできなかった発見が次々と生まれています。直接撮像技術がさらに進歩すれば、遠い惑星の大気に生命の痕跡を見つける日が来るかもしれません。

今回のニュースは、科学の進歩が私たちの知的好奇心や想像力をいかに広げてくれるかを教えてくれます。果てしない宇宙の神秘に目を向け、これからも続く新たな発見に期待しましょう。