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宇宙最初の星、質量は太陽の数千倍か?かすかな電波信号が鍵に

夜空を見上げると、無数の星がきらめいていますよね。でも、宇宙が始まったばかりの頃、最初に輝いた「最初の星」はどんな姿をしていたのか、気になったことはありませんか?私たちが今見ている星とは全く違う、想像もつかない存在だったかもしれません。実は今、そんな「最初の星」の手がかりが、宇宙の始まりから届く微弱な電波信号の中に見つかるかもしれないのです。科学メディアScienceAlertが報じた「A Faint Signal From The Dawn of Time Could Reveal The Very First Stars」というニュースは、この驚くべき発見を詳しく伝えています。最新の研究によって、観測が非常に難しいとされる「21センチメートル信号」に、「最初の星」の質量や性質が影響を与えていることが分かってきました。この記事では、最初の星が残した秘密と、その謎を解き明かすための最先端の取り組みをご紹介します。

宇宙で最初に輝いた「最初の星」の姿

宇宙が誕生してから約1億年後、ようやく暗黒の宇宙に最初の光が灯りました。それが、宇宙で最初に生まれた恒星たち、最初の星(ファーストスター)です。

現在、私たちが夜空に見上げる星々とは、その姿かたちが大きく異なっていたと考えられています。

宇宙の暗闇を切り裂いた巨大な光

当時の宇宙は、ビッグバン直後の名残である、主に水素とヘリウムからなるガスで満たされていました。この原始的な「水素・ヘリウム組成」のガスが集まって、最初の星は生まれたとされています。

最新の研究によれば、これらの最初の星は、私たちの太陽と比べてとてつもなく巨大だった可能性が高いのです。その質量は、なんと太陽の数千倍にも及んだかもしれないと言われています。太陽の数千倍もの質量を持つ星が、初期宇宙の暗闇を力強く照らしていた姿を想像してみてください。

なぜそれほど巨大だったのか、そしてその寿命はどれくらいだったのか、まだ多くの謎に包まれています。しかし、その巨大さゆえに、生まれてすぐに一生を終えてしまったと考えられています。

なぜ観測が難しいのか?

「最初の星」がこれほど巨大だったことは、その観測を非常に難しくする一因です。非常に短い時間で一生を終えてしまうため、私たちが見つけるための「手がかり」が少なく、さらに宇宙の始まりという遠い時代にあるため、その光は地球に届く頃には極めて弱くなってしまうからです。

まるで、遠い昔の出来事を思い出そうとするようなものです。記憶が薄れ、断片的な情報しか残っていない…。「最初の星」も、それに近い存在なのです。

しかし、この謎に包まれた星たちを探すための、新たな手がかりが見つかりました。それが、次にご紹介する宇宙から届く「かすかな電波信号」です。

微弱な電波「21cm信号」が解き明かす、最初の星の痕跡

宇宙の始まりに誕生した「最初の星」を探る上で、非常に重要な役割を果たすのが「21センチメートル信号」と呼ばれる、かすかな電波です。

この信号は、宇宙が誕生してしばらく経った「初期時代」に、宇宙全体を満たしていた中性水素が放ったものです。中性水素が持つ電子の性質が変化する際に、波長約21cmの電波を放出します。これは、まるで初期宇宙の息づかいのような痕跡と言えるでしょう。

しかし、この信号は非常に弱く、観測は極めて困難です。そんな中、ケンブリッジ大学およびカブリ宇宙論研究所の宇宙物理学者トーマス・ゲシー=ジョーンズ氏が率いる研究チームが、この21センチメートル信号に「最初の星」がどのように影響を与えるかを、コンピューターシミュレーションで詳細に解明しました。

見過ごされてきた「X線放射」の影響

彼らの研究によると、最初の星の質量や性質によって、21センチメートル信号の現れ方が変わることが分かりました。特に注目すべきは、最初の星が一生を終えた後に残される中性子星ブラックホールなどが放つ強力な「X線放射」の影響です。

過去の研究では、このX線放射が信号に与える影響は十分考慮されていませんでした。しかし今回の研究では、この影響も詳細に計算することで、より正確な「最初の星の痕跡」を予測できるようになったのです。最初の星とその最期が、宇宙にかすかな電波のサインとして刻み込まれているというわけです。

最新望遠鏡で「サイン」をキャッチする

こうしたシミュレーションで予測されたサインを実際に観測するため、世界では新しい世代の電波望遠鏡の開発が進められています。例えば、オーストラリアと南アフリカに建設中の「Square Kilometer Array (SKA)」や、南アフリカの「Radio Experiment for the Analysis of Cosmic Hydrogen (REACH)」といった望遠鏡は、この微弱な信号を捉える強力な能力を持ちます。

これらの望遠鏡が予測された痕跡を捉えられれば、宇宙で初めて誕生した星々の質量や性質を知る大きな手がかりとなります。ケンブリッジ大学天文学者エロイ・デ・レラ・アセド氏は、「私たちの電波望遠鏡が、最初の星の詳細を教えてくれる可能性を示しています。これらの初期の光は、今日の星とは大きく異なっていたかもしれません」と語っています。この画期的な研究成果は、科学雑誌『ネイチャー・アストロノミー』にも掲載されました。

宇宙の夜明けを探る挑戦:今後の展望と科学の役割

今回の研究は、初期宇宙の「最初の星」という未知の領域に迫るための、重要な一歩と言えます。シミュレーションによって最初の星の性質と21センチメートル信号との関係性が示されたことは、まさに「宇宙からのメッセージ」を読み解くための新しい鍵を手に入れたようなものです。

未来の観測が描く、より鮮明な宇宙の肖像

今後、SKAやREACHといった次世代の電波望遠鏡が本格稼働すれば、今回の研究で予測された「最初の星」のサインを実際に捉えることが期待されます。これらの観測によって、最初の星が非常に巨大であったことが裏付けられれば、初期宇宙の環境が現代とは全く異なる物理法則のもとにあった可能性も出てきます。この「異質な星」が、その後の宇宙の進化にどう影響したのかを解き明かすことが、今後の大きな焦点となるでしょう。

私たちの視点:見えないものへの探求心が宇宙を広げる

この研究は、目に見えず、途方もなく遠い過去の出来事を、科学と技術の力で解き明かそうとする人間の探求心の偉大さを示しています。私たちが夜空の星に思いを馳せるように、科学者たちは遥か彼方から届くかすかな電波を手がかりに、宇宙の始まりという究極の謎に挑んでいます。

最新の研究に触れることは、宇宙の壮大さや、私たちの生命の起源への理解を深めるきっかけになります。これからも、宇宙の始まりの秘密が一つずつ明らかになっていく過程に注目し、その探求の旅を支える科学技術の発展にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。