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日本の衛星「あかり」が太陽系第9惑星の有力候補を発見か?23年前のデータが鍵

皆さんは、夜空を見上げるのが好きですか? 実は、私たちの太陽系には、まだ見ぬ「第9惑星(プラネット・ナイン)」が存在するかもしれないという、驚くべきニュースが入ってきました。これは太陽系の外縁部、海王星のはるか彼方に存在すると仮説が立てられている惑星です。その重力で太陽系外縁天体海王星より遠くを公転する天体群)の動きに影響を与えていると考えられていますが、あまりに遠いため直接観測するのは至難の業でした。

そんな中、日本の宇宙航空研究開発機構JAXA)の赤外線天文衛星「あかり」と、米国のIRAS衛星の観測データを詳しく調べたところ、第9惑星の有力候補が見つかったのです。

この画期的な研究について詳しく知りたい方は、「Evidence of Planet 9 in IRAS and AKARI surveys」の記事をご覧ください。

この記事では、なぜ第9惑星の探索に赤外線観測が重要なのか、そして「あかり」とIRASのデータからどのように候補天体が絞り込まれたのかを分かりやすく解説します。私たちの太陽系の姿が大きく変わる、歴史的な発見の瞬間に立ち会えるかもしれません。

なぜ見つけにくい?第9惑星探査の鍵は「赤外線」

太陽系の果てに潜むかもしれない第9惑星。もし存在するなら、なぜこれまで見つからなかったのでしょうか。その理由は、この惑星がとてつもなく遠く、そして暗いからです。

第9惑星は、海王星よりも10倍以上遠い軌道を回っていると推定されています。太陽から海王星までの距離は約30天文単位AU)。1天文単位は地球と太陽の平均距離(約1億5000万km)なので、海王星ですら太陽から約45億kmも離れています。第9惑星がその10倍、約300天文単位の距離にあるとすれば、その隔たりは想像を絶します。

これほど遠いと、太陽の光をほとんど反射できません。私たちが普段、惑星を見るのは太陽光の反射による「可視光」ですが、第9惑星に届く光は非常にわずかです。仮に海王星と同じ大きさだとしても、可視光での明るさは1万倍も暗くなり、観測はほぼ不可能です。

そこで鍵となるのが「赤外線」による観測です。天体は、太陽光を反射するだけでなく、自らが持つ熱を赤外線として放射しています。遠くにある低温の天体でも、このかすかな熱を捉えることができるのです。第9惑星の場合、赤外線で観測すれば明るさの低下は約100倍に留まると考えられており、最新技術を使えばその存在を捉えられる可能性が生まれます。

23年の時を超えた連携:日本の「あかり」とIRASの観測データ

この難易度の高い探査に挑んだのが、台湾の国立清華大学に所属するTerry Long Phan氏を中心とする研究チームです。彼らは、2つの赤外線天文衛星のデータに注目しました。1983年に打ち上げられた米国のIRAS衛星と、2006年に打ち上げられた日本のJAXAの衛星「あかり」(AKARI)です。

2つの衛星が同じ空を観測したデータには、23年という時間の隔たりがあります。もし第9惑星が存在すれば、その公転速度は非常に遅いため、この23年間で空の上をわずかに移動しているはずです。研究チームは、この「わずかな動き」を捉えるため、両方の観測データを比較し、23年の間に位置が変わった天体だけを探し出す特別なソフトウェアを開発しました。

膨大なデータの中から、背景の星々に対して動いている一つの光源を探し出す作業は、まさに時空を超えた「宝探し」です。その結果、最終的に1つの有力な候補天体が特定されました。この天体は23年間で約47.5分角、これは満月の幅の約1.5倍に相当する距離を移動しており、第9惑星の軌道計算から予測される動きと近いものでした。日本の衛星「あかり」が残したデータが、この歴史的な発見に大きく貢献したのです。

発見の次なる一手と科学的意義

今回の発見は、第9惑星の存在を示す非常に興味深いものですが、まだ「確定」ではありません。候補天体の軌道を特定するには、さらに詳しい観測が必要です。

研究チームは、チリにある「ビクター・M・ブランコ望遠鏡」に搭載された「DECam(ダークエネルギーカメラ)」という高性能なカメラを使った追跡観測を提案しています。DECamの広視野・高感度な観測によって、候補天体の正確な軌道を捉え、それが本当に太陽系内の惑星なのか、それとも遠方の別の天体なのかを突き止めるのです。現在は天体の位置が2点しか分かっておらず、正確な軌道の計算には3点以上の観測データが不可欠です。

もしこの候補天体が第9惑星だと確定すれば、太陽系の成り立ちや構造に関する私たちの理解を根底から覆す、計り知れないインパクトを持つ発見となります。そして、その背景には日本の宇宙科学技術、特にJAXAの「あかり」が提供した質の高いデータがあったことは、私たちにとって大きな誇りです。

第9惑星の発見が拓く未来:期待と今後の課題

今回の研究は、新しい天体の発見の可能性だけでなく、過去の科学データという「遺産」が、現代の技術と視点によって新たな価値を生み出すことを示した美しい実例と言えるでしょう。1983年のIRASと2006年の「あかり」。23年という時を超えた二つの「瞳」が、太陽系の新たな姿を照らし出したのです。

もちろん、この候補天体の正体が明らかになるには、今後の追跡観測を待たなければなりません。しかし、たとえこれが別の天体であったとしても、この探求のプロセス自体が、太陽系の果てに対する私たちの理解を一層深めてくれます。「もしも第9惑星があったら」という壮大な仮説が、科学を新たな知識の扉へと導くのです。

日本の「あかり」がその一翼を担ったこの探求は、天文学者だけのものではありません。この記事を読んで宇宙の謎に心を躍らせたなら、今夜、夜空を見上げてみてください。無数の星々の間に、まだ見ぬ太陽系の「家族」が隠れているかもしれません。第9惑星を巡る物語はまだ始まったばかり。その次の1ページを、私たちは共に目撃することができるのです。