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Xbox、大規模人員削減中にAI画像付き求人投稿で批判殺到「配慮に欠ける」

Xboxのグラフィックス部門が投稿した求人広告が、大きな物議を醸しています。同部門の主任開発責任者マイク・マツェル氏が、ビジネス向けSNS「LinkedIn」に、AI生成画像付きの求人情報を掲載したことが発端です。

この投稿は、親会社マイクロソフトが数千人規模の大規模な人員削減を進める中で行われたため、「配慮に欠ける」として多くの批判を集めています。

本記事では、海外メディアEurogamerの「Head of Xbox graphics department puts out cringe-worthy hiring post with AI graphics」を基に、問題の背景と寄せられた批判の詳細を解説します。

求人に使われた「質の低い」AI画像

批判の的となったのは、求人広告に添付された一枚の画像です。これは、テキストの指示から自動でグラフィックを生成するAIグラフィックス技術で作られたものでしたが、不自然な点が目立ち、多くの人から「質の低いものだ」と見なされました。ゲームのビジュアルを統括する専門部門の求人としては、あまりに不適切だと受け止められたのです。

この投稿に対し、SNSでは皮肉や批判のコメントが相次ぎました。Alexander Bertram-Powell氏は「リーダーの細やかな配慮がうかがえて感謝します」と投稿。Danylo S氏は「大量解雇の直後にAIが生成した質の低い投稿で求人するとは、Xboxは見事な仕事ぶりだ」と、会社の姿勢を痛烈に非難しました。

大規模人員削減の最中という、最悪のタイミング

この求人広告への反発が特に強まった理由は、その投稿タイミングにあります。当時マイクロソフトは、大規模な人員削減(レイオフの真っただ中にいました。

この人員削減はXboxのゲーム開発部門にも大きな影響を及ぼし、『The Elder Scrolls Online』で知られるZenimax Online Studiosや、老舗スタジオのRare、さらに『Perfect Dark』のリブート版を開発していたThe Initiativeなど、複数の有名スタジオが対象となりました。

多くのクリエイターが職を失うという厳しい状況で、グラフィックス部門の求人に安易なAI画像が使われたことは、「解雇されたアーティストたちへの配慮がない」という痛烈な批判を招いたのです。

さらに、人員削減を進める一方でマイクロソフトが社内のAI活用を推奨しているという報道もあり、効率化を優先する企業方針と、クリエイターや従業員の感情との間に生まれた大きな溝を浮き彫りにしました。

記者の視点:テクノロジーの裏にある「人の心」

今回の騒動は、単なる「うっかりミス」では済まされない根深い問題を含んでいます。効率化を推し進める企業と、現場で働く人々の感情との間に生じる、現代的なジレンマを象徴しているように思えるからです。

ゲーム業界は、アーティストやデザイナーといったクリエイターの情熱によって支えられています。その中核であるグラフィックス部門のリーダーが、彼らへの敬意を欠くと受け取られかねないAI画像を使用したインパクトは計り知れません。特に、多くの同僚が職場を去った直後という状況ではなおさらです。

AIによる効率化は、多くの企業にとって魅力的な選択肢でしょう。しかし、その導入方法やタイミングを誤れば、今回のように従業員やファンの信頼を損なう「悪手」になりかねません。これはXboxに限らず、AIの導入を検討するすべての企業にとっての教訓となるはずです。

まとめ:AIとの向き合い方で問われる企業姿勢

今回のXboxの一件は、私たちにAIというテクノロジーとの向き合い方を改めて問いかけています。この出来事から、二つの重要な教訓が見えてきます。

一つは、企業のコミュニケーションの重要性です。企業はAIを業務にどう活用するのか、その方針や倫理観を明確に説明する必要があります。特に、採用活動のような企業の「顔」となる場面では、AIの利用がどのようなメッセージとして受け取られるか、慎重な判断が求められるでしょう。

もう一つは、ツールを使う側に求められる視点です。AIは便利なツールですが、使う側の「思いやり」や「文脈を読む力」が欠かせません。効率化の裏で失われるものはないか、誰かを傷つける可能性はないか。こうした視点を持ち続けることが、テクノロジーと共存していく上での鍵となります。

今回の出来事は、AIと人間の未来の関係を考える上で重要な一石を投じました。技術の進化は止められませんが、それをより良い方向に導くのは、私たち人間の知恵と心に他なりません。