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PS5ストアがAI生成の低品質ゲームで氾濫、ゲーム体験を脅かす実態とは

皆さんは「PlayStation Store」でゲームを探すとき、どんな基準で選んでいますか? 近年、このオンラインストアが、生成AIで自動的に量産される低品質なコンテンツ、通称「AIスロップ」で溢れかえっているという問題が、海外メディアKotakuの報道「Help, The PS5 Store Is Flooded With AI Slop」をきっかけに注目を集めています。これらは海外のネットミームなどを題材に、わずか数十円という低価格で販売されているのが特徴です。

本記事では、なぜこうした低品質なゲームがPlayStation Storeで急増しているのか、その背景とゲーム業界に与える影響を詳しく解説します。

PlayStation Storeにはびこる「AIスロップ」の実態

PlayStation Storeにはびこる「AIスロップ」の中でも特に目立つのが、海外のネットミームイタリアンブレインロット」を題材にしたゲーム群です。これは、AIが生成した不条理な画像とイタリア語風のフレーズを組み合わせたもので、このミームから派生した『Tralalero Tralala』、『Tung Tung』、『Bombardiro』といったタイトルのゲームがストアに氾濫しています。

ミームから生まれた奇妙なゲームたち

具体的には、以下のような特徴を持つゲームが確認されています。

  • 靴を履いたサメのゲーム: 『Tralalero Tralala Jumper』などでは、AIが生成した靴を履いたサメのイラストがアートワークに使われています。価格はわずか50セント(約75円)と、非常に安価です。
  • 野球バットを持つ木の人形: 『Tung Tung』と題されたゲームでは、野球バットを持った木製の人形のようなAIアートワークが特徴です。
  • ワニと飛行機の融合体: 『Bombardiro』というゲームでは、ワニと爆撃機が合体した、さらに奇妙なAI生成画像が使われています。

これらのゲームは、一見すると意味不明なミームを題材にしているだけでなく、Steamで注目を集めた『A Game About Digging A Hole』のような、シンプルなコンセプトの作品を安易に模倣しているケースも少なくありません。

このように、私たちがゲームを探し購入するデジタルストアフロント(オンラインの販売プラットフォーム)は、気づかぬうちにAI製の低品質なコンテンツに占領されつつあるのです。AI技術は、使い方によってはゲーム市場の健全性を脅かす新たな課題を生み出しています。

低品質ゲームが生まれる背景:「アセットフリップ」との共通点

「AIスロップ」のような低品質ゲームが氾濫する背景には、以前から問題視されてきた「アセットフリップ」という開発手法との共通点が見られます。これは、Unity Asset Storeなどで販売されている既存の素材(アセット)をほぼ無加工で流用し、「新作ゲーム」として販売する手法です。アセットは本来、開発を効率化する便利なツールですが、安易に利用されることで、オリジナリティに欠ける低品質なゲームが短期間かつ低コストで量産されるという問題を生んできました。

そしてAIの画像生成技術は、この流れをさらに加速させています。従来のアセット購入すら不要で、AIに簡単な指示を出すだけで(品質はともかく)画像を生成できるため、粗悪なゲームの量産がさらに容易になったと指摘されているのです。

同様の問題は過去にもあり、数年前にはニンテンドーeショップでアセットフリップによる低品質ゲームの氾濫が問題視されました。しかし、任天堂はその後ストアの品質管理を強化したと見られており、ユーザー体験の向上に努めています。今回のPlayStation Storeの状況は、プラットフォーム側の審査体制の重要性を改めて浮き彫りにしています。

「AIスロップ」がもたらす3つの弊害

AIスロップの氾濫は、単に「変なゲームが増えた」という話では済みません。私たちのゲーム体験全体に、以下のような深刻な弊害をもたらします。

1. 良質なゲームが埋もれてしまう

PlayStation Storeでは、『God of War』のような大作や、クリエイターの情熱が詰まったインディーゲーム『Blue Prince』の隣に、AIスロップが平然と並んでいます。こうした状況は良質な作品を発見する上でのノイズとなり、本来評価されるべき開発者の努力が、大量の粗悪なコンテンツの中に埋もれてしまうことにつながります。

2. 子どもたちのゲーム体験を歪める

特に懸念されるのが、子どもたちへの影響です。『Tralalero Tralala Jumper』のようなゲームは、お小遣いで買えるほどのわずか数十円で販売されています。もし子どもたちが手にする「初めてのゲーム」が、こうしたAIで安易に作られたものであれば、ゲームそのものに対する印象を損ないかねません。

3. ストア全体の信頼性が低下する

誰でも簡単に低品質なゲームを公開できる状況が続けば、PlayStation Store全体のブランド価値が低下しかねません。ユーザーは安心して新しいゲームを探せなくなり、結果としてプラットフォームから離れてしまう可能性もあります。これは、健全な市場の発展を阻害する深刻な問題です。

AIスロップの氾濫に、私たちはどう向き合うべきか

AIスロップ問題は、デジタルコンテンツが誰でも簡単に量産できる現代の影を象徴する出来事です。「安かろう悪かろう」なコンテンツが、良質な作品を発見する機会を奪っています。

この問題の主な責任は、プラットフォームを運営するソニーの審査体制にあると言えるでしょう。しかし、私たちユーザーの姿勢も問われています。AI技術そのものは、小規模な開発者がアイデアを形にする強力なツールにもなり得ます。大切なのは、その技術がどう使われるかです。

溢れる情報の中から本当に価値あるものを見つけ出し、応援する力が、今私たちに求められているのかもしれません。賢い消費者として、以下の点を意識してみてはいかがでしょうか。

  1. 価格だけで判断しない 数十円という価格は魅力的ですが、その購入が低品質ゲームの量産を助長する可能性を考慮しましょう。「安物買いの銭失い」を避け、価格の裏にある質を見極める視点が重要です。

  2. 購入前に少しだけ調べる 気になるゲームがあれば、開発元を検索したり、レビュー動画を探したりする一手間が、良質なゲームとの出会いを増やしてくれます。

  3. 良質なインディーゲームを応援する 一本一本の購入は、私たちが望む未来への「投票」です。情熱を持って作られた作品を積極的に選ぶことが、開発者を支援し、ゲーム市場の多様性を育むことにつながります。

AIスロップの氾濫は、プラットフォーム側に審査体制の強化を促すきっかけとなるかもしれません。そして私たちユーザーは、自らの選択によって、より豊かで創造的なゲーム市場を育む一助となれるはずです。