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日本の新発見!冥王星の彼方の小天体「アンモナイト」が「プラネットナイン」説を覆す可能性

日本の国立天文台冥王星のはるか彼方で発見した小天体が、太陽系の常識を覆すかもしれません。この発見は、太陽系の果てに巨大な惑星が存在するという「プラネットナイン」仮説に大きな影響を与える可能性があるためです。

英国のニュースサイト「The Register」も、この発見を「Japan discovers object out beyond Pluto that rewrites the Planet 9 theory」と題して報じるなど、世界的な注目が集まっています。「太陽系の化石」とも呼ばれるこの天体は、私たちに何を物語るのでしょうか。

冥王星の彼方で発見された新天体「2023 KQ14」

日本の国立天文台は、ハワイにあるすばる望遠鏡を用いた観測で、冥王星よりもはるか遠い太陽系の果てに、未知の小天体「2023 KQ14」を発見しました。2023年の発見後、2024年7月に行われたカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡による追跡観測や過去の記録と照合した結果、19年分にわたる軌道が特定されました。その結果、この天体は「セドノイド」と呼ばれる、特異な軌道を持つ天体群の一員だと判明しました。

セドノイドとは、準惑星セドナに代表される、太陽から極端に離れた場所を非常に細長い楕円軌道で公転する天体の総称です。「2023 KQ14」の軌道は、太陽に最も近づく点(近日点)ですら地球と太陽の平均距離の71倍(約106億km)も離れています。これは、これまでに見つかったセドノイドの中でも特に遠大な軌道です。研究チームは、この天体に「アンモナイト」という愛称を付けました。

この天体が「太陽系の化石」と称されるのは、約46億年前の太陽系誕生当時の情報をそのまま留めていると考えられているためです。その特異な軌道は、太陽系の成り立ちを解き明かす貴重な手がかりとなることが期待されています。

「プラネットナイン」仮説への影響と新たな議論

新天体「2023 KQ14」の発見は、太陽系の果てに未知の巨大惑星が存在するという「プラネットナイン理論」にどのような影響を与えるのでしょうか。

プラネットナイン理論を揺るがす軌道のズレ

「プラネットナイン理論」とは、海王星よりもはるか遠くを公転する天体群の軌道が、まるで目に見えない巨大惑星の重力によって一方向に揃えられている、という観測結果から生まれました。

しかし、今回発見された「2023 KQ14」の軌道は、この「揃えられた」軌道群とは異なる向きを持つことが判明しました。論文の共同執筆者である国立天文台のDr. Yukun Huang氏は、「『2023 KQ14』の軌道が他のセドノイドと揃っていないという事実は、プラネットナイン仮説の信憑性を低下させる可能性があります」と指摘しています。

太陽系史の謎を解く新たなシナリオ

この発見は太陽系の形成史に関する議論を活発化させており、主に次のようなシナリオが考えられます。

  • プラネットナインの不在: 「2023 KQ14」の軌道が異なることから、プラネットナインが存在しない、あるいはかつて存在したが太陽系から弾き出された可能性が考えられます。
  • 太陽系初期の力学的作用: 太陽系が形成された初期には、惑星の配置や軌道が現在と大きく異なっていました。その頃の複雑な力学的相互作用が、この天体のようなユニークな軌道を生み出したのかもしれません。

論文の著者の一人である千葉工業大学の吉田二美博士は、「この天体のように近日点距離が遠く、極端に細長い軌道を持つ天体の存在は、それが形成された太古の時代に何か特別な力学的な出来事があったことを示唆しています」と述べ、太陽系初期の歴史を解明する鍵になるとして期待を寄せています。

「太陽系の化石」が拓く、探求の新たな地平

今回の「2023 KQ14」の発見は、有力な「プラネットナイン理論」に再考を迫るものです。この一つの天体の存在が、太陽系の成り立ちに関する通説を揺るがし、これまで考えられていた以上に複雑でドラマチックな歴史があった可能性を示唆しています。

この小さな「化石」が投げかけた謎は、科学者たちを新たな探求へと駆り立てるでしょう。今後のさらなる観測が、私たちの宇宙観をどのように更新していくのか、期待が寄せられます。