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「声でアプリ操作」Siriが日本のスマホを変える?2026年春、Apple AIの進化

「アレクサ、〇〇して」「OK Google、△△を教えて」といった音声アシスタントとの対話は、すっかり日常の一部になりました。しかし、もし声だけで様々なアプリを自由に操作できるとしたら、暮らしはもっと便利になると思いませんか?

この度、AppleがSiriを大幅に進化させる計画を進めていることが明らかになりました。同社はすでに、独自のパーソナルAIシステム「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」を発表していますが、今回のSiriの進化は、その構想をさらに推し進めるものです。本記事では、TechCrunchが報じた「Apple’s new Siri may allow users to operate apps just using voice」を元に、開発中のSiriが持つ革新的な機能、私たちのスマートフォンの使い方をどう変えるのか、そしていつ実現するのかを詳しく解説します。

声だけでアプリを操作する仕組みとは?

Appleが開発中の新しいSiriは、私たちが普段使う様々なアプリを、声だけで操作できるように進化するとのこと。この魔法のような機能の鍵を握るのが、「App Intents」というフレームワークです。

鍵を握る「App Intents」フレームワーク

App Intentsは、アプリ開発者が自身のアプリの特定機能を、Siriや「ショートカット」といったAppleのシステムに公開するための仕組みです。いわば、Siriがアプリの機能を直接「呼び出す」ための道具箱のようなものと言えます。

これまでSiriに「〇〇(アプリ名)を開いて」とお願いすることはできましたが、App Intentsを活用することで、より複雑で具体的な操作が可能になります。例えば、写真アプリで「この写真を編集して友達に送って」と指示したり、SNSアプリで「この投稿にコメントして」と頼んだり、といった操作が声だけで完結するのです。

声だけで可能になるアプリ操作の例

具体的にどのような操作が可能になるのか、いくつか例を見てみましょう。

  • 写真の編集と送信: 撮った写真を選んで簡単な編集(明るさの調整など)を行い、特定の友人に送信するといった一連の操作を、声だけで完了できます。
  • SNSへのコメント投稿: ThreadsなどのSNSで気に入った投稿を見つけ、「この投稿に『いいね!』して、『素晴らしいですね!』とコメントして」といった指示が可能になります。
  • 配車サービスの手配: 「一番近いUberを呼んで、目的地は自宅に設定して」といった指示で、配車サービスを呼び出せます。
  • ハイキング計画: AllTrailsのようなアプリで、「自宅から行ける初心者向けのハイキングコースを探して」とお願いするだけで、最適なコースが見つかるかもしれません。

この技術は、Uber、AllTrails、Threads、Temu、AmazonYouTubeなど、多くの人が日常的に利用しているアプリでテストが進められていると報じられています。これまで画面をタップしたり文字を入力したりしていた操作が声だけで完結することで、日々のスマートフォン操作がより手軽でスマートになるでしょう。

新機能はいつから利用可能に?

この革新的な機能は、いつ私たちの手元に届くのでしょうか。Bloombergの報道によると、Appleは刷新版のSiriとApp Intentsを2026年春頃にリリースする計画です。

2024年にデモが公開されてから時間が空いている背景には、高度なAI機能を多数のアプリとシームレスに連携させる開発の難しさがあるようです。Appleは単にSiriの応答能力を高めるだけでなく、ユーザーの意図を正確に理解し、プライバシーを保護しながらアプリ操作を代行できるレベルを目指しています。

このSiriの進化は、Apple製品全体にわたるAI戦略「Apple Intelligence」の核となる要素です。Apple Intelligenceは、iPhoneMacなどのデバイス上で、ユーザーの個人的なデータに基づきパーソナライズされた体験(メールの要約、文章作成、タスク自動化など)を提供します。Siriは、これらの機能へアクセスするための中心的な窓口となることが期待されているのです。

つまり、今回のアップデートは単なる音声アシスタントの機能向上にとどまらず、Appleのエコシステム全体をより賢く、使いやすくするための重要な一歩と言えます。2026年春は、多くのAppleユーザーにとってSiriとの関わり方が大きく変わる、注目の時期となりそうです。

新Siriがもたらす生活の変化と日本への影響

声だけでアプリを操作できるSiriの進化は、私たちの日常生活、特に日本でのスマートフォン利用をどう変えるのでしょうか。

例えば、アウトドア好きならハイキングアプリのAllTrailsで「自宅から行ける初心者向けのコースを教えて」と話しかけるだけで、最適なトレイルを探せるようになります。ECサイトのTemuで「このTシャツに似たものを探して」と指示すれば、スクロールする手間なく商品が見つかるでしょう。通勤中や家事をしながらといった「ながら」時間でも、必要な情報収集やタスク実行が格段に効率化されます。

コミュニケーションもより円滑になります。SNSアプリのThreadsで「この投稿に『素晴らしい!』とコメントして」と話しかけるだけでリアクションが完了するため、タイピングが苦手な方や手が離せない状況でも、気軽に交流を楽しめるようになります。

日本でもスマートスピーカーなどを通じて音声アシスタントは普及しつつありますが、用途は「音楽をかけて」「天気を教えて」といった限定的なものが中心でした。今回のSiriの進化は、サードパーティ製アプリの多様な機能に音声で直接アクセスできる点が画期的です。これは、私たちがスマートフォンと対話する方法をより「人間らしく」自然なものに変える可能性を秘めています。

この新しいSiriの登場は、日本のユーザーにとってもAI技術の進化を身近に感じ、その恩恵を日常生活で実感する絶好の機会となるでしょう。

記者の視点:魔法の杖がもたらす「副作用」

声だけでアプリを自在に操れる未来は、私たちの生活を劇的に便利にしてくれるでしょう。しかし、どんな強力な魔法にも注意すべき「副作用(ふくさよう)」が伴います。新しいSiriと賢く付き合うために、立ち止まって考えておきたい点が2つあります。

一つは、プライバシーとセキュリティの問題です。Appleはプライバシー保護を重視していますが、アプリ連携が深まるほど、個人情報がどう扱われるかの透明性が重要になります。「声だけで重要な操作ができる」手軽さは、なりすましといった新たなリスクを生む可能性も否定できません。Appleが講じる安全対策を、私たちは注意深く見守る必要があります。

もう一つは、テクノロジーへの「依存」です。物事が簡単すぎるほど、私たちは自分で考え、手順を組み立てる機会を失うかもしれません。便利な機能にすべてを委(ゆだ)ねるのではなく、あくまで「道具」として主体的に使いこなす姿勢が、これからのデジタル社会ではますます大切になるのではないでしょうか。

AIがもたらす未来:期待と課題

今回のSiriの進化は、単なる機能アップデートにとどまらず、私たちのデジタルライフの常識を根底から覆すインパクトを秘めています。2026年春、手元のスマートフォンは、SF映画に登場するような有能な「執事(しつじ)」に変わっているかもしれません。

面倒な繰り返し作業はAIに任せ、人はより創造的な活動に時間を使えるようになる――。そんな便利な未来がすぐそこまで来ています。しかし、その恩恵を最大限に活かすには、プライバシーや依存といった課題と向き合い、テクノロジーの「賢い主人」であり続ける必要があります。

Siriの進化がもたらす未来に期待を寄せつつ、私たち自身がAIとの付き合い方を考える良い機会と言えるでしょう。