「はねる」しかできないことでおなじみのポケモン、コイキング。そのカードの一枚が、わずか2週間で100ドル(約1万5000円)以上も値上がりし、コレクターの間で大きな注目を集めています。
ゲームでの強さとは無縁のはずのカードが、なぜこれほどまでに高騰しているのでしょうか。海外メディアで報じられた「有名な『最弱』ポケモンカード、わずか2週間で100ドル価格高騰」というニュースを元に、その背景にある「アート」と「物語」の価値を解説します。
2週間で1万5000円以上も高騰した特別な一枚
話題となっているのは、ポケモンカードゲームの海外向け拡張パック「Paldea Evolved」に収録された、イラストが全面に描かれたアートレア(AR)仕様のカード「Magikarp 203/193」です。
トレーディングカードの価格追跡サイトTCGplayerのデータによると、このカードの市場価格は9月19日に296ドル(約4万4400円)でしたが、2週間後の10月3日には405ドル(約6万700円)にまで急騰しました。この高騰には、大きく分けて二つの理由があります。
人気イラストレーターと「大器晩成」の物語
一つ目の理由は、イラストレーターであるカンダシンジ氏の絶大な人気です。彼が描く独特のタッチのカードは芸術作品として高く評価されており、将来的な価値の上昇を見越したコレクターからの需要が非常に高くなっています。
二つ目の理由は、コイキングというポケモン自体が持つ「物語性」です。ゲームでは非常に非力なポケモンですが、やがて強力なギャラドスへと進化することから「大器晩成」の象徴とされています。このカードの美しく幻想的なイラストは、そんなコイキングの秘められた可能性を見事に表現しており、ゲーム上の弱さとの対比がコレクターの心を強く掴んでいるのです。
日本市場にも広がる収集スタイルの変化
このような海外コレクター市場の熱気は、日本の市場にも影響を与えています。TCGplayerのような海外の大手マーケットプレイスでの取引価格が、国境を越えて日本国内の価格設定の指標となるケースも増えてきました。
日本でも、カードの強さだけでなくアート性を重視する収集スタイルが広がっています。単なるゲームの道具としてではなく、コレクションや資産としての価値を持つカードへの関心が高まっているのです。
「強さ」から「物語」へ、コレクションの新しい楽しみ方
今回のコイキングのカード価格高騰は、カードの価値が「誰が描いたか」「どんな背景があるか」といった物語性によって大きく左右される時代になったことを示しています。
もしあなたがポケモンカードを持っているなら、箱の奥に眠っているカードをもう一度見返してみてはいかがでしょうか。ゲームではあまり使わなかったカードも、イラストをじっくり眺めたり、描いたイラストレーターを調べてみたりすると、思わぬ魅力に気づくかもしれません。
「強さ」という物差しだけでなく、「好き」という自分の気持ちを大切にすることが、コレクションを何倍も豊かにしてくれるはずです。一枚一枚のカードに込められたアートと物語を楽しんでみてください。
