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任天堂の「モンスター捕獲」特許、特許庁が却下。パルワールド訴訟、日本の知財戦略は?

ゲームの世界で、お気に入りのキャラクターを捕まえたり、乗り物に乗ったりするシステムは、多くのプレイヤーにとって特別な体験ですよね。しかし、もしこれらのシステムが特許で守られ、それを巡って大きな訴訟が起きているとしたら…?

最近、日本の特許庁任天堂の特許出願の一つを「独創性に欠ける」として却下する決定を下しました。これは、人気ゲーム『パルワールド』の開発元であるポケットペアを任天堂が訴えている裁判に、思わぬ影響を与える可能性があります。

一体、何が起きたのでしょうか。そして、この決定は訴訟の行方にどう影響するのでしょうか。海外メディアでも報じられた「任天堂の特許出願、『パルワールド』訴訟中に却下」というニュースは、ゲーム開発における知的財産権の重要性と、今後の法廷闘争の行方を考える上で重要な示唆を与えています。

特許庁任天堂の「モンスター捕獲」特許を却下、その理由とは?

ゲーム開発の世界では、斬新なアイデアが成功の鍵となります。しかし、そのアイデアが他社の権利を侵害していないか、また自社のアイデアをどう保護するのか、常に注意が必要です。今回、日本の特許庁任天堂の特許出願について、興味深い判断を下しました。

独創性欠如と判断された特許出願

2025年10月下旬、日本特許庁は、任天堂からの特許出願(出願番号:2024-031879)を「独創性に欠ける」として却下しました。この出願は、任天堂が『パルワールド』の開発元ポケットペアを相手取って起こしている、いわゆる「モンスター捕獲」システムに関する特許侵害訴訟に深く関わるものでした。

特許庁の審査官は、出願された発明が既存の技術(先行技術)と比べて、新規性や独自性が足りないと判断しました。具体的には、この特許出願の優先日である2021年12月より前に公開されていた、以下のゲームタイトルが先行技術として挙げられました。

これらのゲームには、キャラクターを捕獲・育成・活用する要素が含まれており、任天堂が出願したシステムと共通する部分があると特許庁は判断しました。ゲーム開発において先行作品を参考にすることは珍しくありませんが、特許として権利を得るには、明確な「新規性」と「進歩性」、つまり既存技術の組み合わせだけでは思いつかないような独自の工夫が求められます。

この特許庁の判断は、任天堂が『パルワールド』のシステムが自社の特許を侵害していると主張する上で、根拠の一つとなるはずだった出願の有効性を認めなかったことを意味します。これは、ゲーム開発者にとって、自身のアイデアが特許として認められるには、過去の技術とどれだけ差別化できるかが重要であると改めて示す出来事と言えるでしょう。

『パルワールド』訴訟への影響は?任天堂の特許戦略に何が起きたのか

日本特許庁任天堂の「モンスター捕獲」に関する特許出願を「独創性の欠如」を理由に却下したことは、ポケットペアとの特許侵害訴訟にどのような影響を与えるのでしょうか。

却下された出願と訴訟の関連性

今回却下された特許出願は、直接的に訴訟で争われている特許ではありません。しかし、この出願は、任天堂が「モンスター捕獲」システムを守るために用いている特許群、特に訴訟の中心であるJP7493117JP7545191といった特許の「核となる部分」を構成すると考えられています。つまり、却下された出願は、任天堂の特許戦略の土台となるものだったのです。

特許制度では、一つの発明から関連する複数の特許が出願されることがあり、これを「パテントファミリー」と呼びます。今回却下された出願が、訴訟で争われている特許と同じ親出願から派生している場合、この出願の有効性が否定されたことは、ファミリー全体の有効性にも影響を与えかねません。

パテントファミリーへの影響と裁判官の判断

もしパテントファミリーの中核となる出願が無効と判断されれば、そのファミリーに属する他の特許に対しても「有効性の異議申し立て」が増える可能性があります。これは、ポケットペア側にとって、任天堂の主張を揺るがす強力な材料となり得ます。

『パルワールド』訴訟の裁判官は、特許庁の決定に直接拘束されるわけではありません。しかし、特許の専門家が「独創性の欠如」と判断した事実は、裁判官の心証に影響を与える可能性があります。特に、却下された出願が訴訟で争われている特許の「核」と見なされている場合、その影響は無視できないでしょう。

任天堂の選択肢と訴訟の長期化

任天堂には、特許庁の決定に対して60日以内に内容の補正や上訴を行う期間が与えられています。この期間内に任天堂がどのような対応を取るかが注目されます。もし有効な反論ができなければ、訴訟における任天堂の立場はさらに厳しくなるでしょう。

この状況は、『パルワールド』訴訟がさらに長期化する可能性を示唆しています。すでに別の特許問題で訴訟手続きが遅れており、今回の決定がそれに拍車をかけるかもしれません。

「乗り換えシステム」特許も問題に?訴訟遅延の背景

任天堂とポケットペアの訴訟では、「モンスター捕獲」システムだけでなく、プレイヤーが騎乗できるキャラクターを切り替える「乗り換えシステム」に関する特許(JP7528390)も争点となっています。

この特許を巡る状況も、訴訟全体を複雑にし、遅延させる一因となっています。

訴訟中に試みられた特許の「補正」

通常、特許の有効性は出願された内容に基づいて判断されます。しかし任天堂は、この「乗り換えシステム」特許について、訴訟の最中に内容を補正しようと試みました。係争中の特許に対して後から内容を変更するのは、異例の対応です。

さらに問題視されているのは、その補正内容が曖昧であった点です。具体的にどの部分をどう修正するのかが明確でないため、相手方や裁判所との間で解釈のずれが生じ、審理が難航しています。

補正が招いた訴訟の遅延と再審査

この補正の試みとその内容の曖昧さが原因で、裁判所は「乗り換えシステム」特許に関する部分について再審査を行う必要が生じました。その結果、訴訟は当初の予定よりも大幅に長引き、2026年まで続く可能性が指摘されています。

今回のケースは、特許訴訟がいかに複雑で、訴訟中の特許内容の補正が予期せぬ影響を及ぼすかを示しています。発明者が特許で権利を守るためには、出願時に内容を正確かつ明確に記述することが極めて重要であり、後からの変更はかえって不利になることもあるのです。

ゲームの未来を占う特許訴訟の行方と、私たちが注目すべき点

今回の特許庁の決定は、任天堂とポケットペアの法廷闘争における一つの転換点となるかもしれません。しかしこれは単なる企業間の争いではなく、ゲーム業界全体の「創造性」のあり方を問い直す、大きな意味を持つ出来事と言えるでしょう。

注目すべき今後の展開

まず、任天堂がこの決定に対し、60日以内にどう対応するかが焦点となります。出願内容を補正するのか、上訴して判断を争うのか。いずれにせよ、すでに2026年まで続くと見られていた訴訟は、さらに長期化する可能性が高まりました。

この訴訟の結果は、今後のゲーム開発に大きな影響を与えます。「モンスターを捕獲する」「乗り物に乗る」といった、今や多くのゲームで「当たり前」となったシステムは、一つの企業の特許として独占的に保護されるべきなのか。それとも、誰もが使える「共有財産」としてさらなる発展の土台となるべきなのか。裁判所の判断は、ゲーム業界における「インスピレーション」と「模倣」の境界線を引く上で、重要な試金石となるでしょう。

ゲームを愛する私たちにできること

私たちプレイヤーにとって、お気に入りのゲームが法的な争いに巻き込まれるのは、決して楽しい話ではありません。しかしこのニュースは、私たちが普段楽しんでいるゲームの「面白い仕組み」が、開発者たちの血の滲むような努力と独創性の結晶であることを改めて教えてくれます。

一つのゲームシステムが生まれる背景には、膨大な試行錯誤があります。そして、そのアイデアが他のクリエイターに影響を与え、ジャンル全体を豊かにしていくのも、ゲーム文化の素晴らしい側面です。

今後、新しいゲームをプレイするとき、少し立ち止まって「このシステムのどこが独創的なのだろう?」と考えてみるのも面白いかもしれません。この訴訟の行方を見守りながら、ゲーム開発における創造性の価値とその未来について、私たち一人ひとりが思いを馳せることが、ゲーム文化をより豊かにしていく一歩になるのではないでしょうか。