AIの進化が止まりません。私たちの働き方も大きく変わりつつあります。特にChatGPTは強力なツールですが、「もっと的確な答えが欲しい」「回答が優しすぎる」と感じたことはないでしょうか。
そんな悩みを解決するのが、ドイツの起業家フィリップ・デピルー氏が考案した「No-Bullshit Prompt(ぶっちゃけプロンプト)」です。これは、AIから忖度なしの率直なフィードバックを引き出すための特別な指示文。本記事では、自らを「AIジャンキー」と称するデピルー氏が実践する、具体的なAI活用術を詳しく紹介します。
AIの活用に乗り遅れたと感じている方でも、今からAIを最高のパートナーにするためのヒントが満載です。この記事は、ドイツのニュースサイトに掲載された「「ぶっちゃけプロンプト」であなたもChatGPTのプロになる方法」という記事を元にしています。
AI活用のプロ、デピルー氏の仕事術
デジタルコンサルタントとして長年活躍してきたフィリップ・デピルー氏ですが、意外にもAIの世界に早くから飛び込んだわけではありませんでした。一時は「自分には関係ないかもしれない」と感じていたものの、ChatGPTを試したことでその可能性に目覚め、今では自らを「AIジャンキー」と称するほど活用に夢中になっています。
2010年にデジタルコンサルティング会社「Etventure」を共同創業し、後に大手コンサルティングファームに売却した経験を持つ彼は、今年初めに新たな会社「Scaled Innovation Group」を設立しました。スタートアップから大企業まで、事業の規模拡大を支援する彼の現在の仕事は、AIなしでは成り立ちません。
会議の議事録からウェブサイト制作まで
デピルー氏にとって、AIは日々の業務に不可欠なパートナーです。例えば、会議ではAIが自動で議事録を作成し、要点をまとめてToDoリストまで生成してくれます。さらに驚くべきことに、新しいスタートアップのランディングページ(訪問者が最初に目にするウェブサイトの顔となるページ)は、AIツール「Gamma」を使って開発し、ロゴもChatGPTで作成したといいます。
彼がAIを使って作成したLinkedInの投稿は50件以上にのぼり、コンテンツ制作の強力なアシスタントとしても活用しています。デピルー氏は「以前の会社では従業員250名で達成した売上を、AIを使えば25名で達成できる」と語っており、AIによる生産性向上の大きさがうかがえます。
AI活用を始めるための簡単な一歩
これからAIを試したいという人に向けて、デピルー氏は「複雑な指示を考える前に、まずはChatGPTに話しかけてみること」を勧めています。例えば、起業家が最初の資金調達ラウンドの準備をする際、「資金調達のために、どのような戦略的な質問をすべきか?」と尋ねるだけで、ChatGPTはビジネスプランの策定に必要な質問リストを生成してくれます。これは、経験豊富なメンターからアドバイスを受けるのに匹敵する価値があるでしょう。
AIから「本音」を引き出すNo-Bullshit Prompt
ChatGPTとのやり取りで、「丁寧すぎる」「もっと核心を突いてほしい」と感じた経験はありませんか。私たちがAIに求めるのは、優しい言葉ではなく、時には厳しい本質的なフィードバックです。そこで登場するのが、デピルー氏が考案した「No-Bullshit Prompt(ぶっちゃけプロンプト)」です。
なぜAIは「優しすぎる」のか?
ChatGPTのようなAIは、利用者を不快にさせないよう、意図的に「優しい」回答をするように設計されています。しかし、率直な意見が欲しいとき、この傾向は邪魔になります。的外れなアイデアを提案しても、AIはまず褒めてから遠回しに改善点を指摘してくる、といった具合です。
AIの忖度をなくす魔法の言葉
デピルー氏はこのAIの「優しさ」を乗り越えるため、AIに率直な回答をさせる特別な指示文、No-Bullshit Promptを開発しました。彼が実際に使っているプロンプトの一部がこちらです。
実用的かつ直接的に、くだらないことは抜きに。私のトーンに合わせ、物事をありのままに伝えてください。ごまかしや偽りの質問は不要。完全な文章で、明確に。知的に、事実に即して、直接的に、お世辞ではなく本当に役立つように答えてください。
この指示を与えると、ChatGPTの回答の冒頭に「偽りなく、オープンに、直接的に、そして正直に」といった前置きが付くようになり、フィードバックが格段に率直で価値のあるものになったそうです。
面白いことに、このプロンプトはデピルー氏がChatGPT自身に「どうすればもっと批判的な回答をしてくれるか?」と尋ねて得たヒントから生まれました。彼はこの指示を、ChatGPTを自分用にカスタマイズできる機能(GPTs)に設定し、常にAIから本音のフィードバックを得られるようにしています。
AIが可能にする新しい働き方
AIの進化は、コミュニケーションやマーケティングの手法にも驚くべき変化をもたらしています。デピルー氏が実践する、さらに進んだAI活用事例を見ていきましょう。
メールに代わる「AIアバター動画」
日々届く大量のメールにうんざりしているデピルー氏は、社内外のコミュニケーションにAIアバター動画を活用しています。彼が使うのは、AI動画生成ツール「HeyGen」です。
まずドイツ語で話した内容を、文字起こしツール「Otter.ai」でテキスト化し英語に翻訳。そのテキストをHeyGenに入力すると、彼そっくりのAIアバターが自然な動きでメッセージを話す動画が完成します。このパーソナルな動画メッセージは、テキストだけのメールよりも相手の心に響き、重要な情報が埋もれるのを防ぎます。なお、HeyGenは米国拠点のサービスですが、EUの厳格な個人データ保護規則であるEU一般データ保護規則(GDPR)を遵守しているため、安心して利用できる点も重要です。
AIが生む奇抜なマーケティング戦略
デピルー氏は、広告キャンペーンの戦略立案を支援するAIツール「Adlegends.ai」の実力も試しました。彼がテーマに選んだのは、「体重測定機能付きの便座」というユニークな商品です。
AIにマーケティングアイデアを依頼したところ、数分で複数の提案が返ってきました。その中で彼が特に気に入ったのが、「バスルームオリンピック」という奇抜なコンセプトです。これは、便座での「パフォーマンス」をオリンピックの実況のようにユーモラスに伝えるというもの。この事例は、AIがいかに人間の固定観念にとらわれない、斬新なアイデアを生み出せるかを示しています。
記者の視点:AIは私たちの「思考のクセ」を映す鏡
デピルー氏の「ぶっちゃけプロンプト」は、単なるAI活用術にとどまらない深い示唆を与えてくれます。なぜ私たちは、AIにわざわざ「正直に答えて」とお願いしなければならないのでしょうか。
それは、AIが私たちの社会のコミュニケーション規範、つまり相手を傷つけないように本音を避ける文化を学習しているからです。AIの「優しさ」は、実は私たち人間が持つ「思考のクセ」を映す鏡なのかもしれません。
AIに厳しいフィードバックを求めることは、自分自身のアイデアに潜む弱さと向き合う勇気を試す行為とも言えます。AIとの対話の質を高めようとする試みは、結果的に自分自身の思考を深め、客観的な視点を持つための優れたトレーニングになるのではないでしょうか。
AIを「思考のパートナー」に変えるために
デピルー氏の一連の活用術は、AIが単なる作業効率化ツールではなく、ビジネス戦略を共に練り上げる「思考のパートナー」になり得ることを示しています。会議の議事録から奇抜なマーケティングアイデアまで、AIとの対話次第でその可能性は無限に広がります。
今後、AIの技術がさらに進化する中で、私たちに求められるのは、AIをいかに「賢く使うか」というスキルです。特に、AI自身に「どうすればもっと良い答えを引き出せるか」と問いかけるような、一歩引いた視点での対話が重要になるでしょう。
この記事を読んで、「AIは難しそう」と感じていた方も、まずは小さな一歩を踏出してみませんか。完璧なプロンプトは必要ありません。まずはChatGPTに話しかけ、「ぶっちゃけプロンプト」を試してみる。その小さな好奇心が、AIをあなたにとって最高の相棒へと育て、仕事の世界を大きく変えるきっかけになるはずです。
