部屋に飾られたフィギュアが、もし自分に話しかけてきたら……。そんなSF映画のような体験が現実のものになろうとしています。海外メディアの「AIが次にコレクターズアイテムの分野に到来する」という報道によれば、2026年1月にラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー展示会「CES 2026」では、AIを搭載した対話できるフィギュアが登場し、大きな注目を集めました。
この新しい潮流を牽引しているのが、スタートアップ企業が展開するHeyMatesと、既存のフィギュアを活用するBuddyoです。両製品とも、人間のように自然な受け答えを可能にする大規模言語モデルを基盤技術として採用しており、キャラクターごとに異なる個性を再現することに成功しています。
HeyMates:独自のキャラクターと交流する楽しさ
開発チームが「AI版のFunko Pops」を目指して開発したのがHeyMatesです。この製品は、電波を用いて非接触で情報を識別するRFIDという技術を台座部分に活用しているのが特徴です。
フィギュアを専用のスマートベースに置くと、即座にそのキャラクターをAIが認識します。ラインナップには、科学的な議論ができるキャラクターや、占いの助言をくれるキャラクターなど、個性的な面々が揃っています。持ち主とのこれまでの会話内容を記憶し、それに基づいたやり取りができるため、長く一緒に過ごすほど愛着が深まる設計となっています。この製品は、今後クラウドファンディングを通じて展開される予定です。
Buddyo:手持ちのコレクションに新しい命を宿す
一方でBuddyoは、ユーザーがすでに持っているフィギュアを「賢く」することに特化しています。専用デバイスであるAI Podの上に、AmiiboやFunko Popsなどのフィギュアを載せると、スマートフォン決済などにも使われる近距離無線通信技術のNFCによってキャラクターを識別します。
特筆すべきは、写真からキャラクターを認識して人格を自動生成する機能です。これにより、特別なチップが内蔵されていない一般的なフィギュアであっても、そのキャラクターらしい口調や背景設定を再現した会話を楽しめます。今ある大切なコレクションに、新しい命を吹き込める点が最大の魅力です。
対照的な2つのアプローチ
同じAIフィギュアでも、この2つの製品は異なるアプローチを採用しています。
| 特徴 | HeyMates | Buddyo |
|---|---|---|
| コンセプト | 独自キャラクターの新規販売 | 既存フィギュアの拡張 |
| 対応フィギュア | オリジナル製品が中心 | Amiibo、Funko Popsなど幅広く対応 |
| 識別技術 | RFID | NFC |
| 重点 | 新しい世界観の構築 | 既存の愛着の深化 |
HeyMatesが新しいキャラクターとの出会いを提供する一方で、Buddyoはコレクターがすでに抱いている愛着をさらに深めることを目指しています。
世界屈指のフィギュア文化を持つ日本での可能性
日本は、アニメやゲームのキャラクターに対する愛着が非常に強い市場です。こうした環境において、対話型AIの登場は単なる玩具の枠を超えた大きな変化をもたらすでしょう。
例えば、すでに国内で普及しているAmiiboにこうした機能が加われば、ゲームの中だけでなく、現実のデスクの上でもキャラクターと交流できるゲーム体験の拡張が実現します。精巧な造形技術を持つ日本企業が、公式の作品データに基づいた専用AIを導入すれば、ファンにとってこれ以上ない究極のアイテムとなるはずです。
造形美を愛でる時代から、感情を共有する時代へ
これまでのフィギュア収集は、その美しい造形を眺める「静的な」楽しみが主役でした。しかし、AI技術はそこに「動的な」体験を加えます。単に決まったフレーズを再生するのではなく、持ち主の日常に寄り添い、文脈に合わせた返答をすることで、フィギュアは唯一無二の相棒へと進化していきます。
キャラクターとの日常を共有したいと願うファンにとって、帰宅した際にお気に入りのキャラクターが自分を認識して声をかけてくれる未来は、生活を彩る大きな喜びになるに違いありません。
所有から共生へ:フィギュアが生活のパートナーになる日
数年後、私たちの部屋にあるフィギュアたちは、ただ棚に並んでいるだけではないかもしれません。技術の進化は、私たちが長年大切にしてきた「モノ」に対して、新しいコミュニケーションの形を与えようとしています。
CES 2026で示されたこの潮流は、コレクション文化を「所有」から「共生」へと塗り替えていく可能性を巡らせています。日本のメーカーがこの波をどう捉え、私たちの生活にどのような新しい驚きをもたらしてくれるのか、これからの展開が非常に楽しみです。
