近年、SF映画で描かれてきたような未来の装備が現実のものとなりつつあります。人間の身体機能をサポートするエクソスケルトンは、かつて医療や産業現場での利用が中心でしたが、現在は一般消費者向けにも普及し始めています。2026年1月に開催された世界最大級のテクノロジー展示会CESでも、多くの企業が最新のエクソスケルトンを出展し、その進化を世界に示しました。日本でも超高齢社会を背景に、歩行補助や運動能力の向上に対する関心は非常に高まっています。
こうしたなか、実際の使用感や性能を検証すべく、人気モデル2機種を用いた比較テストが実施されました。この「エクソスケルトンによる性能比較レース:勝者はどちらか」というニュースでは、ロンドンのリー・バレー・アスレティックス・センターを舞台に、ジョグやスプリント、階段昇降といった様々な運動を通じてその実力が検証されています。
日常を変える「着るロボット」の最前線
エクソスケルトンとは、装着することで人間の動きを補助するウェアラブルデバイスのことです。今回のテストで比較されたのは、この分野で市場をリードする中国企業の主力製品である Hypershell X Ultra(約305,158円)と Dnsys X1 Carbon Pro(約289,888円)の2機種です。
この市場には現在、WiRoboticsやSumbu、Ascentizといった新興企業が次々と参入しており、技術革新が加速しています。背景にあるのは、世界的な健康意識の高まりや高齢化の進展です。エクソスケルトンは、歩行を助けることでリハビリ中の患者や高齢者の生活の質を向上させるだけでなく、スポーツを楽しむ人々のパフォーマンス向上や疲労軽減に役立つツールとしても期待されています。
最新モデル2機種を徹底比較:スピードと心拍数で見る実力
比較テストでは、デバイスを装着しない「補助なし」の状態、Hypershell X Ultra、Dnsys X1 Carbon Proの3つの条件下で、心拍数やタイムを計測しました。心拍数はスマートウォッチで、ペースや距離はGPSを用いて正確に記録されています。
テストの結果、Hypershell X Ultra が総合的に優れた性能を発揮しました。心拍数を抑えつつスピードを向上させ、何より動作の自然さが際立っていました。対する Dnsys X1 Carbon Pro は、強力なパワーを誇るものの、動作音が大きく、動きの滑らかさに課題が残る結果となりました。
400メートルジョグでの心拍数データ
| テスター | 補助なし | Hypershell | Dnsys |
|---|---|---|---|
| テスターA | 174 bpm | 151 bpm | 155 bpm |
| テスターB | 140 bpm | 136 bpm | 137 bpm |
60メートルスプリントでのタイム比較
| テスター | 補助なし | Hypershell | Dnsys |
|---|---|---|---|
| テスターA | 11.25秒 | 10.63秒 | 10.71秒 |
| テスターB | 12.03秒 | 10.51秒 | 10.77秒 |
階段昇降での心拍数平均値
| テスター | 補助なし | Hypershell | Dnsys |
|---|---|---|---|
| テスターA | 151 bpm | 107 bpm | 142 bpm |
| テスターB | 121 bpm | 116 bpm | 119 bpm |
実働時において、Dnsys X1 Carbon Pro は機械的な駆動音が周囲に響くのに対し、Hypershell X Ultra は非常に静かで、装着していることを忘れるほどの自然な感覚を提供しました。Dnsysのモデルには脚を不自然に持ち上げるような挙動も見られましたが、Hypershellは装着者の歩行リズムに合わせたスムーズなサポートを実現していました。
超高齢社会・日本における歩行支援の可能性
日本の高齢化は世界でも類を見ないスピードで進んでいます。総務省の統計によれば、2024年時点で高齢者人口は3623万人に達し、総人口の約3割を占めています。歩行に困難を抱える人々も増加しており、移動支援や運動機能の維持は社会全体の大きな課題です。
日本国内でも、こうした課題解決に向けた技術開発が進んでいます。代表的な例として、装着者の神経信号を読み取って筋肉の動きをアシストする「CYBERDYNE株式会社」のHALが挙げられます。医療や介護の現場で活用されているHALのような技術に加え、今回テストされたようなより手軽なコンシューマー向け製品が浸透すれば、高齢者の自立支援や介護負担の軽減に大きく貢献するでしょう。
今後はAIによる姿勢制御がさらに洗練され、バッテリーの持続時間や素材の軽量化といった課題も克服されていくはずです。そうなれば、私たちは「今日はたくさん歩くからユニットを装着しよう」と、靴や帽子を選ぶ感覚で身体機能をカスタマイズするようになるかもしれません。
身体機能をカスタマイズする日常へ
今回の検証を通じて明らかになったのは、エクソスケルトンが単なる補助器具を超え、私たちの身体機能を「拡張」するフェーズに入ったということです。機械に動かされるのではなく、自分の筋肉が強化されたような一体感こそが、普及の鍵を握っています。
登山などの過酷な環境ではパワー重視のモデルを、街歩きや旅行では静音性と自然な動作を重視したモデルを選ぶといった使い分けも、そう遠くない未来に一般的になるでしょう。体力的な不安から趣味を諦めかけている人にとって、エクソスケルトンは新たな可能性を切り拓く心強い相棒となります。
テクノロジーは、私たちが一度は手放しかけた可能性を取り戻すためのツールです。身体の力を補い、高めてくれる最新デバイスは、私たちの行動範囲を広げ、より豊かな生活をもたらしてくれるに違いありません。
