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直径710mの小惑星が「2分で1回転」、従来の常識を覆す超高速スピンの謎

フィギュアスケートの選手がスピンするとき、腕を縮めると回転が速くなります。しかし、直径710mもある巨大な岩の塊が2分足らずで1回転すると聞けば、驚くのではないでしょうか。従来の常識ではありえないはずの速さで回転する小惑星が見つかり、天文学者たちを驚かせています。Daily Galaxyが「天文学者が"不可能な"速度で回転する巨大小惑星を発見」と報じたこの発見は、小惑星の構造に関する常識を根本から覆すかもしれません。

世界最大のカメラが捉えた「規格外」の回転

この小惑星「2025 MN45」を見つけたのは、チリに設置されたベラ・C・ルービン天文台です。32億画素という世界最大のデジタルカメラ「LSSTカメラ」を搭載したこの天文台は、2025年春の初期観測で、わずか7夜で約1,900個の新たな太陽系天体を発見しました。2025 MN45はそのなかでも飛び抜けた存在でした。

ワシントン大学の研究チームが観測データを分析したところ、この小惑星は約1.9分(約113秒)で1回転していることが判明。直径500m以上の小惑星としては、これまで見つかった中で最速の回転速度です。研究成果は2026年1月、天文学の主要誌アストロフィジカル・ジャーナル・レターズに掲載されました。ルービン天文台のLSSTカメラによる、初めての査読付き論文でもあります。

なぜ「ありえない」のか?回転限界の壁

小惑星の多くは「ラブルパイル」と呼ばれる、岩石や砂利がゆるくまとまった構造をしています。いわば宇宙空間に浮かぶ瓦礫の山です。こうした天体には「スピンバリア」と呼ばれる回転の限界があります。約2.2時間より速く回転すると、遠心力で構成物質がバラバラに飛び散ってしまうのです。

ところが2025 MN45は、その限界の約70倍も速く回転しています。2.2時間どころか、わずか2分足らず。研究チームは、本来の回転限界とされる約2.2時間を大きく下回る速度で自転している点に驚きを示しています。

この回転に耐えるには、約9メガパスカルという強い結合力が必要です。これは一般的な粘土の強度をはるかに超えています。研究チームは、2025 MN45がラブルパイルではなく、固体の岩石か、あるいは金属でできている可能性が高いと結論づけました。

76個の小惑星が語る太陽系の多様性

今回の研究では、2025 MN45だけでなく合計76個の小惑星の回転周期が測定されました。そのうち16個が「超高速回転体」(回転周期13分〜2.2時間)、3個が回転周期5分未満の「超々高速回転体」に分類されています。

2025 MN45のような固体の小惑星は、かつてもっと大きな天体の内部にあった高密度のコア部分が、他の天体との衝突によって飛び出したものと考えられています。つまり、この小惑星は太古の衝突の「破片」であり、元の天体の内部構造を今に伝えるタイムカプセルのような存在です。

記者の視点:日本も関わる新時代の天文学

ベラ・C・ルービン天文台は、国立天文台も協力して始動した国際プロジェクトです。初期観測のわずか7夜分のデータだけでこれほどの発見が生まれたことは、今後10年間にわたる本格観測で何が見つかるのか、大きな期待を抱かせます。

小惑星というと日本では「はやぶさ2」によるリュウグウの試料回収が記憶に新しいところです。リュウグウはラブルパイル型の典型例でしたが、2025 MN45は全く異なる「固い岩か金属の塊」です。小惑星の世界がいかに多様であるかを、この発見は改めて教えてくれます。

「ありえない」天体が開く新しい窓

たった7夜の観測で、従来のスピンバリアでは説明できない小惑星が見つかったという事実は、私たちの太陽系にはまだ驚くべき天体がいくつも潜んでいることを示しています。ルービン天文台が本格稼働を始めれば、宇宙の常識をさらに塗り替える発見が次々と生まれるかもしれません。直径710mの「ありえない」コマは、今もどこかで猛烈に回り続けています。