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核廃棄物の危険期間を10万年から300年に短縮、米国が加速器で挑む「核変換」

原子力発電所から出る「核のゴミ」。日本では使用済み核燃料の最終処分場すら決まっておらず、北海道の2つの町村で文献調査が進んでいる段階です。この問題の根本にあるのは、放射性廃棄物の放射能レベルが十分に低下するまで約10万年もかかるとされていることです。しかし「核廃棄物の危険期間を10万年からわずか数百年に短縮する新プロセス」とBGRが報じたところによると、米国エネルギー省が粒子加速器を使ってこの時間を約300年に縮める技術開発を進めようとしています。

「核変換」という現代の錬金術

この技術の核心は核変換と呼ばれるプロセスです。中世の錬金術師が鉛を金に変えようとしたように、放射性の強い元素を別の元素に変えてしまおうという発想です。ただし、こちらは魔法ではなく物理学に基づいています。

米国エネルギー省の先端研究機関ARPA-Eは、NEWTONプログラムを立ち上げ、バージニア州のジェファーソン研究所に817万ドル(約13億円)の助成金を交付しました。

仕組みはこうです。まず粒子加速器で高エネルギーの陽子ビームを液体水銀に撃ち込みます。すると核破砕という反応が起き、水銀の原子核から大量の中性子が飛び出します。この中性子を使用済み核燃料に当てると、長寿命の放射性物質が短寿命の物質や安定した物質に変わります。さらに、この反応で生じるエネルギーを回収して発電に利用できる可能性もあり、まさに一石二鳥の仕組みです。

処理後の廃棄物は、約300年間保管することで天然のウラン鉱石と同程度の放射能レベルまで低下するとされています。10万年と300年。この差は、人類の歴史が始まる前から管理し続けなければならないか、数世代で完了するかの違いです。

実用化への2つの技術課題

ただし、この技術にはまだ越えるべきハードルがあります。この助成金は、主に2つの研究テーマに充てられます。

1つ目は、加速器の心臓部である超伝導高周波空洞の改良です。現在、この装置はニオブという金属で作られていますが、超低温に冷やす必要があり、そのための冷却設備が非常に高価です。研究チームは、ニオブの表面にスズの層を加えることで、より高い温度でも動作させられないかを検証しています。成功すれば、高額な極低温冷却装置の代わりにより一般的な冷却装置が使え、コストを大幅に削減できます。

2つ目は、加速器のエネルギー源となるマグネトロンの研究です。粒子ビームを発生させるには膨大なエネルギーが必要で、どの程度のエネルギーを効率的に供給できるかが実用化の鍵を握ります。電子レンジにも使われているマグネトロンを、大規模な粒子加速器の動力源として活用できるかを探る研究です。

記者の視点:日本こそ最も恩恵を受ける国かもしれない

この技術は、日本にとって特に大きな意味を持ちます。福島第一原子力発電所の事故以来、日本は核廃棄物の処理問題に正面から向き合わざるを得ない状況にあります。全国の原発に蓄積された使用済み核燃料は約1万9,000トン。その最終処分には10万年の安全管理が求められ、処分場の選定は政治的にも社会的にも難航しています。

実は日本でも同様の研究が進んでいます。茨城県東海村のJ-PARC(大強度陽子加速器施設)では核変換実験施設の建設が進んでおり、理化学研究所も独自のアプローチで核変換技術の研究を続けています。2025年にはスタートアップ企業も設立され、民間からの参入も始まりました。

「10万年」に比べれば、「300年」は社会制度やインフラの更新を前提に管理を議論しうる時間です。この転換が実現すれば、原子力をめぐる議論の前提そのものが変わる可能性があります。

30年後の実用化を目指して

NEWTONプログラムは、今後30年以内に米国の商業用使用済み核燃料の全量をリサイクルすることを目標に掲げています。現時点では基礎技術の開発段階ですが、加速器技術の改良が進めば、処理期間をさらに数十年にまで短縮できる可能性もあるといいます。

核廃棄物の問題は、原子力の是非を問わず解決しなければならない課題です。すでに世界中に存在する廃棄物は消えてなくなりません。10万年という途方もない時間を数百年に縮める技術が実用化されれば、次の世代に残す負担を大幅に減らせるかもしれません。