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犬は本当に「歌っている」?音楽に合わせて音程を変える能力を研究が示す

飼い犬が音楽に合わせて遠吠えする動画は、SNSでもおなじみの光景です。「うちの子、歌ってるみたい」と微笑む飼い主は多いでしょう。しかし、それは単なる思い込みではないかもしれません。「犬には真の音楽的能力がある」とEarth.comが報じた研究によると、一部の犬は音楽の音程を聞き取り、自分の声の高さを調整している可能性が示されました。

オオカミから受け継いだ「合唱」の本能

犬の祖先であるオオカミは、群れで遠吠えする際にそれぞれ異なる音程で声を出し、重なり合う遠吠えを作り出します。この「合唱」は群れの結束を強め、自分たちの存在を広い範囲に知らせる役割があると考えられています。

米国タフツ大学の心理学者が率いる研究チームは、この能力が現代の家庭犬にも残っているのではないかと考えました。そこで注目したのが、オオカミと遺伝的に近い古代犬種です。具体的には、シベリア原産のサモエドと、日本原産の柴犬が実験の対象に選ばれました。

音楽の高さを変えたら、犬も声を変えた

実験の方法はシンプルです。まず飼い主が、普段から愛犬が遠吠えする曲を録画しました。次に同じ曲の音程を上げたバージョンと下げたバージョンを再生し、犬の遠吠えがどう変わるかを記録しました。人間が一緒に歌うときに相手の声に合わせて自分の声を上げ下げするのと同じことを、犬もやっているのかを調べたわけです。

結果は犬種によって明確に分かれました。今回調べた4頭のサモエドはいずれも、音楽の音程変化に応じて遠吠えの高さを統計的に有意に変化させました。音楽が高くなれば遠吠えも高く、低くなれば遠吠えも低くなったのです。しかも遠吠えの長さは一定で、興奮による発声ではなく、音に応じて声の高さを調整していることが示されました。

一方、柴犬は音楽の音程が変わっても遠吠えの高さを一定に保ちました。同じ古代犬種でも、音楽への反応には犬種差や個体差があることがうかがえます。

音楽は言語よりも「古い」能力かもしれない

この研究で特に興味深いのは、音楽と言語の関係に新たな光を当てている点です。犬は人間のような複雑な言語を持ちませんが、音程を聞き取って自分の声を調整する能力は持っています。これは音程の知覚や発声調整の能力が、言語とは異なる進化的背景を持つ可能性を示唆しています。

研究チームは、初期の人類が発達した言語を持つ以前から、音を使って仲間と絆を深めていた可能性があると指摘しています。つまり音楽は、言語よりも古いコミュニケーション手段かもしれないのです。

また、犬が音楽に反応して遠吠えする行動について、研究チームは「犬は音楽を動物の鳴き声として認識し、群れでの遠吠え反応を引き起こしている可能性がある」と分析しています。遠吠え中の犬は注目を集めようとしているのではなく、音に対して注意を向けている様子が観察されました。

記者の視点:柴犬の「マイペース」は日本人もうなずける

日本で最も身近な古代犬種である柴犬が、サモエドとは対照的に音楽に合わせなかったという結果は、柴犬の飼い主なら「やっぱり」と思うかもしれません。独立心が強く、自分のペースを崩さない柴犬の性格は、日本のSNSでもしばしば話題になります。

ただし、これは柴犬に音楽的能力がないということではなく、反応の仕方が異なるだけかもしれません。この研究は学術誌Current Biologyに掲載されており、今後さらに多くの犬種で検証が進むことが期待されます。日本には柴犬だけでなく秋田犬や北海道犬といった古代犬種がいるため、日本の研究者による追試も興味深いテーマとなるでしょう。

愛犬の「歌」に、耳を傾けてみよう

次に愛犬が音楽に合わせて声を上げたとき、それは単なる騒音ではなく、進化の過程で形づくられてきた能力の一端かもしれません。オオカミの群れから受け継がれた音楽的な感性が、私たちの隣で静かに息づいている。人と犬の関係を考えるうえで、興味深い手がかりを示した研究といえそうです。