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トンガ海底火山の噴煙が高度57kmに到達、成層圏を冷やし続けて4年

2022年1月、南太平洋のトンガで海底火山が噴火しました。日本にも津波警報が出されたこの噴火を覚えている方も多いでしょう。しかし、この噴火が4年経った今も地球の大気を変え続けていることは、あまり知られていません。「トンガの火山噴火は宇宙の端に達し、大気を凍らせた。そして今も回復していない」と報じられたこの現象は、火山噴火の常識を覆す発見です。

宇宙に迫る噴煙、高さ約57km

噴火したのはフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山。噴煙は高度約57kmに到達し、成層圏を突き抜けて中間圏にまで達しました。これは観測史上最も高い火山噴煙の記録です。

なぜこれほどの高さに達したのか。その秘密はカルデラの位置にあります。火口は海面下約150mという絶妙な深さにありました。マグマが海水を瞬時に高温の蒸気に変えるには十分な深さでありながら、海水の圧力が爆発を抑え込むほどではない。この条件が、桁外れの爆発力を生み出したのです。

海底調査では、噴火によって約9.6立方kmの岩石が吹き飛ばされたと推定されています。火口は約700m深くなり、火砕流は火口から約80km先まで広がりました。過去100年で最大級の海底噴火とみられています。

「温める」はずが「成層圏を冷やした」逆転現象

大規模な火山噴火は通常、大量の二酸化硫黄を成層圏に放出します。これが微粒子となって太陽光を反射し、成層圏を温めるのが一般的な仕組みです。1991年のフィリピン・ピナトゥボ山の噴火がその典型例でした。

ところがフンガ・トンガの噴火では、正反対のことが起きました。火口が海底にあったため、硫黄の多くは上空に届く前に海水に吸収されてしまいました。代わりに成層圏に大量に送り込まれたのは水蒸気です。その量は約1億4600万トン。ピナトゥボ山の噴火時の約4倍にあたります。

この膨大な水蒸気は、成層圏で放熱器のような役割を果たしました。熱を宇宙空間へ放出し、成層圏の広い範囲を0.5〜1℃冷却したのです。通常の噴火とはまったく逆の効果でした。

地表への影響は意外にも「ほぼゼロ」

成層圏がこれほど冷えたのなら、地上の気温にも大きな影響があったのではないか。そう考えるのが自然ですが、実際の地表冷却はわずか0.05℃にとどまりました。

この発見は重要な議論に決着をつけました。2023年と2024年に記録的な地球温暖化が観測された際、「フンガ・トンガの噴火が原因ではないか」という仮説がありましたが、地表への影響がほぼないことが確認され、噴火が温暖化を加速させたという説は否定されています。

一方で、噴火の衝撃波は6日間かけて地球を4周しました。この気圧の波は地中海の海面を約30cm上昇させる気象津波を引き起こしています。これほどの規模の気象津波が確認されたのは、1883年のクラカタウ大噴火以来のことです。

記者の視点:日本の火山研究にとっての意味

フンガ・トンガの噴火が示した最大の教訓は、「海底火山は陸上の火山とは根本的に異なる振る舞いをする」ということです。硫黄ではなく水蒸気が主役となり、地表温暖化ではなく成層圏の冷却を引き起こす。従来の火山噴火モデルでは予測できなかった現象です。

日本は世界有数の火山国であり、海底火山も数多く抱えています。京都大学生存圏研究所ではこの噴火の成層圏への影響を分析する研究が進められており、成果は2026年版のWMO/UNEPオゾン評価報告書に反映される予定です。国際的な研究報告によれば、水蒸気の異常は4〜7年、オゾン層への影響は7〜10年続くと推定されています。

4年経っても続く「見えない噴火の余波」

フンガ・トンガの噴火は、わずか数時間の出来事でした。しかし成層圏に注入された膨大な水蒸気は、2026年の今もなお上空に留まり、成層圏を冷やし続けています。目に見えず、日常生活で実感しにくい変化ですが、オゾン層の回復や気候モデルの精度に影響を与え続けているのです。

この噴火は、私たちが地球の大気をどれほど理解していないかを突きつけました。次に海底火山が噴火したとき、何が起きるのか。その答えを見つけるための研究が、今も世界中で続いています。