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Visa、AIトークン消費が月1.9兆に倍増 大企業にも広がる「トークン競争」

クレジットカードで買い物をするたび、裏側では不正検知AIが一瞬で取引を判定しています。そのVisaが今、社内のAI活用でもすさまじい勢いを見せています。「Visaが月に約2兆のAIトークンを消費している」とBusiness Insiderが報じました。トークンとはAIが文章を処理する際の最小単位で、チャットで短い回答をやり取りするだけでも入力と出力を合わせて数百トークンに達します。この記事では、Visaの驚異的なAI活用の実態と、シリコンバレー全体に広がる「トークン消費競争」の光と影を解説します。

従業員の9割がAIを使い、消費量はわずか1カ月で倍増

Visaのテクノロジー部門を率いるラジャット・タネジャ氏によると、同社の月間AIトークン消費量は2026年3月時点で約1兆9000億トークンに達しました。これは2月の数字からわずか1カ月で2倍になった計算です。

この急増の背景には、全社的なAI活用の浸透があります。Visaでは従業員の89%がすでにAIツールを日常業務に使っており、そのうち44%は月15日以上にわたって1日平均25回以上プロンプトを送る「パワーユーザー」に分類されています。

利用されているAIモデルは複数ありますが、現時点ではAnthropicのClaudeが最も使われており、OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiと併用されています。特に注目すべき成果として、あるチームがAnthropicのClaude Sonnetを使って新しいAPIを6日未満で開発したと報じられています。ソフトウェア開発部門がトークン消費量の最大の部門である一方、マーケティング部門もAIで広告映像を制作するなど、活用は全社に広がっています。

タネジャ氏は「成功は生み出されたインパクトの量で測る」と強調し、単にAIを使うだけでなく、測定可能な成果につなげることを重視しています。Visaはチームの効果的なAI活用に報酬を与えるインセンティブプログラムも導入しています。

シリコンバレーを席巻する「トークンマクシング」

Visaの動きは氷山の一角に過ぎません。シリコンバレーでは今、AIトークンの消費量を競い合う「トークンマクシング」と呼ばれるトレンドが急速に広がっています。

その最も極端な例として報じられているのがMetaです。同社内には「クロードノミクス」と名付けられたAIトークン消費量のランキングシステムがあり、8万5000人以上の従業員の利用状況を追跡し、上位250人の「パワーユーザー」をランク付けしています。ある30日間の集計では、全社で60兆トークンが消費されました。Visaの1.9兆トークンの30倍以上という規模です。上位者には「トークン・レジェンド」「セッション・イモータル」といった称号が与えられ、2026年からは人事評価にも「AI活用によるインパクト」が組み込まれています。

NVIDIAのジェンスン・ファンCEOも、年収50万ドル(約8000万円)のエンジニアが年間25万ドル(約4000万円)分のAIトークンを使っていなければ「深く懸念する」と発言。AIを使わないのは「チップの設計を紙と鉛筆でやるようなものだ」と述べ、トークン消費を生産性の指標とする考えを打ち出しています。

企業向け経費管理プラットフォームRampのデータによれば、企業のAIトークン支出は2025年1月から13倍に膨れ上がっています。

記者の視点:「使った量」と「生んだ価値」は同じではない

華々しい数字の裏には懸念もあります。トークン消費量は本質的に「投入量」の指標であり、「成果」の指標ではありません。これは「書いた行数でプログラマーの力量を測る」のと同じ落とし穴です。

実際にMetaでは、一部の従業員がリーダーボードの順位を上げるためだけにAIエージェントを何時間も放置し、意味のないタスクを実行させてトークンを消費していたことが報じられています。投資家のダン・ナイルズ氏も「本物の需要と見せかけの利用を区別できるのか」と疑問を投げかけています。

Visaの場合、タネジャ氏が「インパクトの量」を重視する姿勢を示している点は評価できます。しかし、業界全体を見れば「とにかくAIを使え」という空気が先行し、その効果を冷静に測定する仕組みが追いついていない企業も少なくないでしょう。日本企業がAI導入を加速する際にも、「使用量」ではなく「何が変わったか」を軸に据えることが重要です。

AIトークンが「新たな投資指標」になる時代

AIトークンの消費量は、今や企業のテクノロジー投資の新たな指標になりつつあります。Visaのように決済という社会インフラを支える企業が月1.9兆トークンを使い、NVIDIAのCEOが給与の半分相当のトークン利用を推奨する。この流れはAIが一部のエンジニアだけのツールから、全社員の「仕事の相棒」へと進化していることを示しています。

ただし、トークンを大量に消費することが自動的に成果につながるわけではありません。量の競争に巻き込まれず、自社にとって何が本当に価値ある使い方なのかを見極める力が、これからのAI時代には求められます。