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「AIは仕事を奪わない」が揺らぎ始めた、経済学者159人の大規模調査が示す転換点

「AIに仕事を奪われる」という不安を抱いたことはないでしょうか。こうした心配に対して、経済学者たちは長年「ATMが普及しても銀行員はなくならなかった」という例え話を持ち出し、楽観的な見方を示してきました。しかし今、その経済学者たち自身の見方が変わり始めています。「経済学者たちが、AIが人間の仕事を奪わないという従来の見解が誤りだったと認め始めている」とFuturismが報じたシカゴ連邦準備銀行やフォーキャスティング・リサーチ・インスティテュート(FRI)などによる大規模調査は、専門家たちの意識がどう変化しているかを浮き彫りにしています。

経済学者・AI専門家・予測のプロ、159人の見解

この研究は、シカゴ連邦準備銀行、FRI、イェール大学、スタンフォード大学、ペンシルベニア大学の研究者が共同で行った大規模な調査です。69人の経済学者52人のAI専門家、そして予測精度が一貫して高いことで知られる38人のスーパーフォーキャスターの計159人から回答を得ました。

調査では、2030年までのAI進展について、主に次の2つのシナリオが示されています。

  • 穏健シナリオ(確率47%):AIが研究施設を半自律的に運営し、高品質な小説を書き、人間の監督のもとで複雑なプロジェクトをこなせるようになる
  • 急速進展シナリオ(確率14%):AIが数日で何年分もの研究を完了し、グラミー賞やピュリッツァー賞級の作品を生み出し、CEOレベルの判断力で組織を運営できるようになる

3つのグループに共通していたのは、「AIの進歩が速いほど、雇用は減る」という認識でした。

労働力参加率が半世紀ぶりの水準に低下する可能性

この調査で最も注目される数字は、労働力参加率の予測です。労働力参加率とは、働ける年齢の人口のうち、実際に働いているか仕事を探している人の割合を指します。失業率よりも幅広く労働市場の実態を映す指標です。

調査に参加した経済学者の中央値は、今後5年間で労働力参加率が1.6ポイント低下すると予測しました。米国の現在の労働力参加率は約62%です。

さらに深刻なのが急速進展シナリオです。この場合、2030年までに労働力参加率が59.3%にまで落ち込むと予測されています。これは50年以上ぶりに60%を下回る水準であり、約1000万人が労働市場から離れる計算になります。

ニューヨーク大学の経済学者は、ニューヨーク・タイムズ紙に対し「雇用やキャリアのあり方が今後2〜5年で大きく変わる世界に備え、どのような政策が適切か、国として議論すべき時だ」と語っています。

記者の視点:「破滅」ではないが「無視」もできない

興味深いのは、経済学者たちが雇用への悪影響を認めつつも、「世界の終わり」とは見ていない点です。研究チームは、第二次世界大戦前のヨーロッパやアメリカでも深刻な経済格差が存在していたことを指摘し、急速進展シナリオで予測される格差は「現在より大幅に不平等だが、認識できないほどではない」と分析しています。

つまり、急速進展シナリオが実現しても、歴史上前例のない破滅的な事態にはならないという見方です。ただし「前例がある」ということは、そうした時代に社会が経験した混乱もまた繰り返されうることを意味します。

日本にとっても他人事ではありません。経済産業研究所(RIETI)の分析でも、AIが日本の雇用構造に与える影響は大きいと指摘されています。特に事務職や定型的な業務は自動化の影響を受けやすく、少子高齢化で労働力が減少する日本では、AIによる業務の代替が歓迎される場面もあります。一方で、再教育の遅れが深刻な格差につながるリスクもあります。

楽観と悲観の間で、今できること

この研究が示す最も重要なメッセージは「不確実性」です。穏健シナリオと急速進展シナリオのどちらが現実になるかは、AIがどれだけ早く企業の利益に結びつくかにかかっており、専門家でさえ確信を持てていません。

しかし、確実に言えることがあります。従来の「AIは雇用を大きく奪わない」という楽観論だけでは、もはや十分ではないということです。世界経済フォーラムは2030年までに7800万件の新規雇用が生まれると予測しており、技術の進歩が新たな仕事を生む可能性も十分にあります。大切なのは、その変化に備えて、今から学び直しやスキルの更新に取り組むことではないでしょうか。