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生命の起源に迫る発見、わずか45塩基のRNAが「ほぼ自己複製」に成功

地球上のあらゆる生物は、自分自身のコピーを作ることで命をつないでいます。では、そもそも最初の「コピー」はどうやって始まったのでしょうか。「このRNAはほぼ自己複製する。それは生命の起源を説明しうる」とScienceAlertが報じたこの発見は、生命誕生の謎に大きな一歩をもたらしました。英国の研究チームが見つけたたった45塩基の小さなRNA分子が、自己複製に必要な重要なステップを達成したのです。

生命の起源とRNAワールド仮説

現在の生物では、DNAが遺伝情報を保存し、タンパク質が化学反応を担います。しかし生命が誕生する以前、現在のようにDNAが情報を保存しタンパク質が反応を担う仕組みはまだ成立していなかったと考えられています。ではどちらが先に生まれたのかという「鶏と卵」問題に対する有力な答えが、RNAワールド仮説です。

RNAは遺伝情報を持つと同時に、酵素のように化学反応を促進する能力も持っています。つまり、情報の保存と化学反応の触媒という二つの役割を一つの分子でこなせるのです。原始の地球でRNAが自分自身をコピーできるようになれば、そこから進化が始まり、やがてDNAやタンパク質を持つ現在の生命へとつながった。これがRNAワールド仮説の骨子です。

ただし、この仮説には長年の課題がありました。これまでに実験室で作られた自己複製能力を持つRNA分子は、どれも大きく複雑すぎて、原始の地球で自然に生まれたとは考えにくかったのです。

「QT45」という名の小さな革命

この壁を打ち破ったのが、英国MRC分子生物学研究所のチームが発見したQT45(Quite Tiny 45、「とても小さな45」の意)という名のRNA分子です。研究成果は2026年3月にScience誌に掲載されました。

研究チームは、凍結した氷の中にできる微小な液体領域を模した低温環境に、約1兆個ものランダムなRNA配列を用意しました。すべて極めて短い配列です。この膨大な候補の中から、RNA分子を組み立てる能力を持つ配列を試験管内選択という手法で探し出しました。何度も選別と改良を繰り返した結果、浮かび上がったのがQT45でした。

QT45はわずか45塩基で構成されています。DNAやRNAの「文字」にあたる塩基が45個並んだだけの、極めてシンプルな分子です。それにもかかわらず、QT45はポリメラーゼリボザイムとして機能します。つまり、遺伝情報のテンプレートを読み取って新しいRNA鎖を合成する「コピー機」の役割を果たせるのです。

自己複製まであと一歩

QT45が達成したのは、自己複製の二つの重要なステップです。まず、自分の配列に塩基対の規則で対応する相補鎖を合成しました。次に、その相補鎖をテンプレートとして自分自身のコピーを作りました。ただし、この二つのステップはそれぞれ別々の反応として行われており、一連の流れとして完全に自動化されたわけではありません。

相補鎖の合成では塩基あたりの忠実度が94.1%で、両反応の収率はいずれも72日間で約0.2%でした。数字だけ見ると効率は低いように感じますが、重要なのはこれほど小さなRNA分子がこの能力を持っていたという事実です。従来の研究では、もっと大きく複雑なRNA分子でさえ自分自身の一部しかコピーできませんでした。QT45は小さいからこそ、全体をコピーしきることができたのです。

研究チームは今後、コピーの速度と生産量を向上させ、二つのステップを一つの連続した反応として実現することを目指しています。

記者の視点:「小さいからこそ生まれえた」という逆転の発想

この研究の本質的な面白さは、「複雑さ」ではなく「単純さ」に可能性を見出した点にあります。これまで科学者たちは、自己複製するRNAを作るために分子をどんどん大きく、高性能にしてきました。しかしそれでは「原始の地球で偶然生まれた」という前提と矛盾してしまいます。QT45は発想を逆転させ、極限まで小さくしたことで、非生物的な環境で形成されえた可能性がより現実味を帯びました。

日本でもRNAワールド仮説に関連する研究は進められています。生命の起源というテーマは、一つの発見で完結するものではなく、世界中の研究が少しずつパズルのピースを埋めていく共同作業です。

地球外生命探査にもつながる一歩

QT45の発見は、地球の生命の起源だけでなく、宇宙における生命探査にも影響を与えます。もし非常にシンプルなRNA分子から自己複製が始まりうるなら、生命が誕生するためのハードルは従来考えられていたよりも低いかもしれません。

太陽系には、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンセラダスなど、液体の水が存在する可能性のある天体があります。生命誕生に必要な分子の複雑さが低いほど、こうした天体で同様のプロセスが起きている可能性も高まります。たった45文字の「生命のレシピ」が、宇宙のどこかで再現されていても不思議ではないのかもしれません。