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ボイジャー1号、49年動き続けた観測装置を停止 星間空間を探る「感覚」はあと2つ

1977年に地球を旅立ち、木星や土星の鮮明な姿を地球に届けた探査機ボイジャー1号。いまは太陽圏を抜け、星間空間を飛ぶ、人類が作った最も遠い人工物です。その探査機から、また1つ観測装置の灯が消えました。NASAのジェット推進研究所(JPL)は「NASAがボイジャー1号の装置を停止し、探査機の運用を継続」と発表。電力を少しでも残し、人類初の星間探査機を生かし続けるための苦渋の決断でした。

49年間休まず働いた「粒子の探知器」

2026年4月17日、JPLのエンジニアたちはボイジャー1号に搭載された低エネルギー荷電粒子計測装置(LECP)の電源を切るコマンドを送信しました。LECPは1977年の打ち上げ以来、ほぼ途切れることなく約49年間稼働し続けてきた装置です。

LECPの役割は、太陽由来や銀河系由来のイオン、電子、宇宙線などの荷電粒子を測定すること。とりわけボイジャー1号が2012年に星間空間に到達してからは、太陽圏の外側にある星間物質の構造を解き明かす貴重なデータを送り続けてきました。圧力の変化や粒子密度が異なる領域の検出など、地球から約240億km離れた場所でしか得られない情報です。

なぜ今、停止が必要だったのか

ボイジャー1号の電力源は、プルトニウム238の崩壊熱を電気に変える原子力電池(RTG)です。しかし放射性物質の崩壊が進むにつれ、出力は年間約4ワットずつ低下しています。打ち上げ当時に比べると、使える電力はごくわずかになりました。

直接の引き金となったのは、2026年2月27日に行われた姿勢を調整する定期操作の最中に起きた予想外の電力低下でした。このまま何もしなければ、探査機の安全装置が自動で機器を停止させてしまう恐れがありました。自動停止からの復旧には長い時間がかかり、それ自体がリスクを伴います。

どの装置をどの順番で停止するかは、何年も前に科学チームとエンジニアリングチームが協議して決めていました。搭載された10の観測機器のうち、LECP停止前までに7つが停止済み。今回の停止により、稼働中の科学装置は2つになりました。この順序は、その計画に沿ったものです。なお、姉妹機のボイジャー2号では2025年3月にすでにLECPが停止されています。

残された2つの観測装置と「ビッグバン」計画

LECP停止後もボイジャー1号で稼働している観測機器は2つ。プラズマの波を聴くプラズマ波サブシステム(PWS)と、磁場を測定する磁力計(MAG)です。この2つは現在も正常に動作しており、人類の探査機が初めて到達した星間空間からデータを送り続けています。

LECPの停止によって確保されたのは、約1年分の「余命」です。しかしNASAはさらに先を見据えています。エンジニアたちが「ビッグバン」と呼ぶ大規模な省電力対策が計画されているのです。これは複数の電力消費機器の運用を一斉に見直し、一部を停止・切り替えすることで、探査機に必要な温度を保ちながら科学観測を続けるという大胆な試みです。2026年5月から6月にかけてまずボイジャー2号でテストし、成功すれば7月以降にボイジャー1号にも適用される予定です。

NASAの目標は、2030年代まで少なくとも1基の科学装置を稼働させ続けること。打ち上げから半世紀以上経った探査機の延命に、エンジニアたちの知恵が試されています。

記者の視点:「終わり」ではなく「選び取る継続」

ボイジャー1号の機器停止は、一見すると探査機の「衰え」を象徴する出来事です。しかし実態は異なります。何年も前から綿密に計画された「戦略的な節約」であり、残り少ない電力をどこに使うかという優先順位の問題なのです。

ボイジャー計画は元々、木星と土星を観測するための4年間のミッションとして設計されました。それが49年経った今でも科学データを送り続けているという事実自体が驚異的です。日本の宇宙探査に目を向けても、JAXAは小惑星探査機「はやぶさ」シリーズで、限られた資源の中でミッション継続に挑んできました。深宇宙における「あきらめない運用」の精神は国境を越えて共通しています。

240億km先から届く、かすかな声

ボイジャー1号が送る信号は、地球に届くまでに約22時間半かかります。光速でもそれだけの時間を要する距離を、半世紀前の技術が今も旅しているのです。「ビッグバン」計画が成功すれば、この小さな探査機はさらに数年、星間空間の謎を解き明かし続けるかもしれません。

1つずつ灯が消えていくのは寂しいことですが、残された2つの「感覚」が捉えるデータは、ほかのどんな手段でも得られないものです。ボイジャーの旅は、まだ終わっていません。