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パタゴニアの羊飼いが農場で発見、全長20mの新種恐竜は既知の分類に収まらない

発見したのは、博物館や大学の調査隊ではなく、一人の羊飼いでした。アルゼンチン南部パタゴニアの農場で、地元の羊飼いが偶然見つけた骨が、約1億5500万年前を生きた全長約20メートルの新種恐竜だったことが明らかになりました。「パタゴニアの農場で羊飼いが発見した20メートルの恐竜、既知のどのグループにも収まらない」と報じられたこの発見は、恐竜の進化史における「南半球の空白」を埋める重要な手がかりになりそうです。

「大きな動物」の名を持つ新種、ビチャラコサウルス

新たに命名された恐竜はビチャラコサウルス・ディオニデイ。属名は、スペイン語の俗語で「でかい動物」を意味する「bicharraco」に由来し、種小名は化石を発見した羊飼いディオニデ・メサ氏にちなんでいます。

化石が出土したのはアルゼンチン・チュブ州のカニャドン・カルカレオ層で、年代はジュラ紀後期、約1億5500万年前にさかのぼります。研究チームは30個以上の首・背中・尾の椎骨、複数の肋骨、骨盤の一部を回収しました。成体の全長は約20メートルと推定され、これは大型バスをおよそ2台つなげた長さに相当します。

2つの有名恐竜の特徴が「混在」する謎

この恐竜が研究者たちを悩ませているのは、その骨格が既知のどのグループにもきれいに当てはまらない点です。

一部の骨格は、アフリカ・タンザニアで見つかったブラキオサウルス科のギラファティタンに似ています。ブラキオサウルス科は前脚が後脚より長く、キリンのように首を高く上げて樹木の葉を食べていたと考えられるグループです。一方で、背中の椎骨の特徴は北米のディプロドクスやその近縁種にそっくりでした。ディプロドクスはむしろ首を水平に伸ばし、広い範囲の植物を食べていたとされる恐竜です。

筆頭著者を務めたミュンヘン大学の研究者は、系統解析からビチャラコサウルスがブラキオサウルス科に近縁だった可能性を示しました。この解釈が支持されれば、南米のジュラ紀からブラキオサウルス科が見つかるのは初めてのことになります。

記者の視点:「南半球の空白」を埋める一歩

恐竜研究の歴史を振り返ると、化石の発見は長らく北半球に偏ってきました。ブラキオサウルス科もディプロドクス科も、代表的な化石はアフリカや北米から出ています。南米、とりわけパタゴニアのジュラ紀の記録は少なく、巨大な草食恐竜がどのように各大陸に広がったのかを理解するうえで大きな「穴」となっていました。

ビチャラコサウルスの発見は、この空白に一つのピースをはめ込むものです。ジュラ紀後期には大陸分裂が進行中で、現在の南米やアフリカを含むゴンドワナ大陸のつながりが恐竜の分布に影響していた可能性があります。複数の大陸で知られる竜脚類の特徴を併せ持つこの化石は、その移動と分岐の証拠として極めて貴重です。

日本でも福井県を中心に恐竜化石の発見が相次いでいますが、白亜紀の化石が中心です。ジュラ紀後期という、より古い時代の大型竜脚類がどのように世界に広がったかを知るうえで、パタゴニアの発見は日本の恐竜研究にも示唆を与えるでしょう。

羊飼いの発見が書き換える恐竜の系譜

化石は現在、トレレウにある南米最大級の古生物学博物館、エヒディオ・フェルグリオ古生物学博物館に収蔵されています。研究成果はオープンアクセス学術誌PeerJに掲載されました。

パタゴニアは近年、世界の古生物学者が注目するホットスポットになっています。広大で乾燥した大地の下に、まだ見ぬ恐竜たちが眠っている可能性は十分にあります。今回の発見のように、日常の暮らしの中から科学を変えるような出来事が生まれることもあるのです。次の大発見も、もしかしたら研究者ではなく、農場で暮らす誰かの足元から始まるかもしれません。