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核融合プラズマを1分間安定維持、中国EASTが3課題の同時制御を実証

電気代の請求書を見るたびに、「もっと安いエネルギーがあれば」と思ったことはないでしょうか。太陽が何十億年も燃え続けるエネルギー源——核融合を地上で再現する研究が、大きな壁を乗り越えました。「トカマク装置で安定した核融合プラズマを1分間維持、同時に熱負荷も軽減」と報じられた成果によると、中国の核融合実験装置EAST(先進超伝導トカマク実験装置)が、これまで両立が難しかった3つの課題を同時にクリアする新しい運転方式を実証しました。

核融合炉の「三重苦」とは何か

核融合炉の心臓部であるトカマクは、ドーナツ型の磁場で超高温のプラズマを閉じ込める装置です。1億度を超えるプラズマを安定させるだけでも難題ですが、実用化に向けてはさらに3つの問題を同時に解決しなければなりません。

1つ目は壁の保護です。プラズマから漏れ出た粒子や熱は、ダイバータと呼ばれる排気装置に集中します。この熱があまりに強いと、ダイバータの素材が溶けたり削れたりしてしまいます。2つ目はELMの抑制です。ELMとはプラズマの縁で周期的に起きる爆発的な不安定現象で、大量の熱を壁に叩きつけ、装置を損傷させます。そして3つ目が閉じ込め性能の維持です。壁を守るためにプラズマを冷やすと、肝心の閉じ込め性能が落ちてしまうのです。

これら3つは互いに矛盾しやすく、1つを改善すると別の問題が悪化する「三重苦」として核融合研究者を悩ませてきました。

「軽い不純物ガス」が鍵だった

中国科学院合肥物質科学研究院の研究チームは、EASTでDTPレジームと呼ばれる新しい運転モードを開発しました。DTPは「分離ダイバータ・乱流支配型ペデスタル」の略称です。

その仕組みはこうです。まず、軽い不純物ガスをリアルタイムで制御しながらプラズマに注入します。すると、ダイバータ領域で中性粒子が捕捉・排気され、プラズマの縁の過度な冷却が抑えられます。その結果、プラズマの縁に急峻な温度勾配が形成され、この勾配が自然に微小な乱流を引き起こします。

一見すると乱流は悪いことのように思えますが、ここがこの手法の巧妙さです。この乱流が熱と粒子を適度に外へ運び出すことで、ELMのような爆発的な放出を防ぎつつ、プラズマ全体の閉じ込め性能は高く保つことができるのです。いわば「ガス抜き」をしながら圧力鍋の性能を維持するような仕組みです。

1分間の安定運転が意味すること

この新しいDTPレジームで、研究チームはプラズマの安定運転を約1分間持続させることに成功しました。核融合実験において1分間という時間は、一瞬の現象ではなく、長パルス運転に向けた安定性を示す重要な指標です。

EASTは2025年1月に高閉じ込めモードで約18分間(1066秒)の運転記録を達成していますが、今回の成果は単なる持続時間の記録ではありません。ダイバータ熱負荷の軽減、ELM抑制、高い閉じ込め性能という3つの条件を同時に満たした状態で安定運転を維持した点に画期的な意義があります。

この成果は物理学の主要学術誌 Physical Review Letters に掲載されました。

記者の視点:日本の核融合研究にも追い風

中国EASTの成果は、核融合研究全体にとって朗報です。同じトカマク方式を採用する日本のJT-60SAは、茨城県那珂市に設置された世界最大の超伝導トカマク装置で、2026年に本格的なプラズマ加熱実験を開始する計画です。EASTで実証されたDTPレジームの知見は、JT-60SAの実験計画にも貴重な参考データとなるでしょう。

さらに、フランスで建設が進む国際プロジェクトITERにとっても、ダイバータの熱負荷管理は最大の技術課題の1つです。日本はITERのダイバータ部品の製造にも深く関わっており、今回の研究成果は日本の貢献分野と直接つながっています。

「夢のエネルギー」の実現に近づく一歩

核融合発電の実用化にはまだ多くのハードルが残っています。しかし、これまで「どれか1つしか達成できない」と思われていた複数の課題を同時に解決できることが示されたのは、大きな前進です。太陽と同じ反応を地上で安全に制御する日が、少しずつ近づいています。