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60年解けなかった数学の難問、23歳の素人がChatGPTで80分で証明

数学の未解決問題といえば、天才たちが何十年もかけて挑む知の最前線です。ところが2026年4月、数学の高度な学位を持たない23歳の青年が、ChatGPTに問題を与え、約80分の推論を経て60年来の難問を解いてしまいました。「数学者らがChatGPTを使い重要な発見をしたと主張」と報じられたこの出来事は、AIが人間の数学研究をどう変えつつあるのかを鮮烈に示しています。

60年間、誰も解けなかった「原始集合」の問題

解かれたのはエルデシュ問題#1196です。20世紀を代表するハンガリーの数学者ポール・エルデシュが提起した未解決問題の一つで、「原始集合」と呼ばれる特殊な整数の集合に関する予想でした。

原始集合とは、集合に含まれるどの数も、他の数で割り切れないという条件を満たす数の集合です。たとえば{2, 3, 5}は原始集合ですが、{2, 4, 5}は2で4を割り切れるので原始集合ではありません。エルデシュは約60年前、原始集合に対して定義されるある「スコア」が、数が大きくなるにつれて最大で1に収束するという予想を立てました。直感的にはシンプルに聞こえますが、厳密な証明は世界中の数学者を60年にわたって阻み続けてきたのです。

AIが見つけた「誰も思いつかなかった」アプローチ

この問題を解いたのはリアム・プライスという23歳のアマチュア数学愛好家です。ある月曜日の午後、趣味でエルデシュ問題をAIに解かせていたプライス氏は、GPT-5.4 Proにこの問題を入力しました。AIは約80分間の推論を経て証明を出力。プライス氏はそれをLaTeX形式に整え、エルデシュ問題の専用フォーラムに投稿しました。

驚くべきは、AIが選んだ証明手法でした。フィールズ賞受賞者のテレンス・タオ教授(UCLA)は、過去の研究者たちが同じ方向性のアプローチにとらわれていたと指摘し、AIが「既知の数式を、誰も考えなかった形で適用する」という意外な方法を取ったと説明しています。人間の数学者たちは長年の研究の中で一つの方向に固定されてしまい、まったく別の角度からの解法に気づけなかったのです。

荒削りな証明を人間が磨く「協業」の実態

ただし、AIが出した証明がそのまま完璧だったわけではありません。スタンフォード大学の数学者で、原始集合の専門家であるジャレッド・リヒトマン氏は「ChatGPTが出力した証明はかなり粗雑だった。専門家が内容を精査し、AIが何を示そうとしているのかを読み解く必要があった」と述べています。

ここに今回の成果の本質があります。AIは人間が思いつかない新しい切り口を提供し、人間の専門家がそれを検証・洗練するという協業です。タオ教授もこの発見を「大きな数の構造について考える新しい方法」と評価しつつ、その長期的な重要性についてはまだ不確実だと慎重な姿勢を見せています。

記者の視点:AIは数学の「壁」を壊すツールになるか

2026年は、AIが数学の未解決問題の研究に深く関与する年になりつつあります。1月だけで27件のエルデシュ問題が解かれ、そのうち約70%にAIが関与していました。しかし注意も必要です。OpenAI副社長が以前「AIがエルデシュ問題を解いた」と発表したものの、既に知られた解法だったことが判明し、投稿を削除する騒動もありました。

今回の成果が示しているのは、AIの強みと限界の両方です。AIは人間の先入観に縛られず、膨大な数学的手法の中から意外な組み合わせを見つけ出せます。しかし、その出力は荒削りで、数学的に正しいかどうかの検証には依然として人間の専門知識が欠かせません。

「素人×AI」が専門家の盲点を突く時代

プライス氏は「その問題が何なのかも知らなかった。ただエルデシュ問題をAIに解かせて、何が出てくるか見ていただけだ」と語っています。高度な訓練を受けていないからこそ、既存の研究の「常識」に縛られず、AIの出力を素直に受け取れたのかもしれません。数学という最も厳密な学問で、専門家そのものでも、AI単独でもなく、その「間」に立つ人間が突破口を開いたという事実は、知識と創造性の関係について深く考えさせられます。