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15歳の少年がプラスチック分解酵素を研究、注意欠陥と言われた天才の挑戦

ペットボトル、食品トレー、衣類の繊維。私たちの生活はPET(ポリエチレンテレフタレート)というプラスチックに囲まれています。便利な素材ですが、自然界では数百年も分解されずに残り続けます。この問題に、15歳の少年が挑んでいます。「15歳でプラスチックを分解する酵素を研究する少年」として注目を集めるメキシコの研究者、イアン・エマヌエル・ゴンサレス・サントスの物語です。

9歳で大学に入った「問題児」

ゴンサレス・サントスは、小学校で「注意欠陥がある」と言われた少年でした。しかし彼の才能を見抜いた教育者と家族の支援により、わずか9歳で大学の門をくぐります。入学先はメキシコのグアダラハラ大学。9歳の大学生を受け入れる手続きなど存在せず、大学側も当初は戸惑ったといいます。

それから4年後、13歳でグアダラハラ大学史上最年少の卒業生となりました。取得した学位は薬学・化学・生物学の複合分野で、在学中には分子生物学と細胞遺伝学の修士課程も並行して修了しています。2024年1月からは博士課程に進み、現在15歳にしてプラスチック分解の研究に取り組んでいます。

プラスチックを「食べる」酵素の仕組み

彼の研究対象は、PETプラスチックを分解する酵素です。OECDの報告によると、2019年の世界のプラスチック生産量は4億6000万トンに達しましたが、最終的にリサイクルされたのはわずか9%。約2200万トンが環境中に流出しました。

プラスチックを食べる酵素の研究は、2016年に大きな転機を迎えました。日本の堺市にあるPETリサイクル工場から、PETを分解できる細菌「イデオネラ・サカイエンシス」が発見され、Science誌に報告されたのです。ただし、この天然の酵素は分解速度が遅く、実用化には程遠いものでした。

2022年には、テキサス大学オースティン校の研究チームが機械学習を使って酵素を改良し、FAST-PETaseを開発。Nature誌に発表されたこの改良酵素は、50℃の条件下で51種類のPET製品を1週間以内にほぼ完全に分解することに成功しました。

ゴンサレス・サントスの博士研究では、メキシコ最大の淡水湖であるチャパラ湖でメタゲノミクスという手法を用い、湖の微生物群集からプラスチック分解に関わる遺伝情報を探索しています。

酵素リサイクルの最大の壁は「分別」

ただし、酵素によるプラスチック分解には大きな課題があります。技術的なボトルネックは酵素の性能ではなく、分別と前処理です。酵素が効率的に働くには、きれいに分けられたPETが必要で、混合プラスチックをそのまま分解工程に投入することはできません。多くの研究者は、酵素リサイクルは従来の機械的リサイクルを補完するものであり、完全に置き換えるものではないと考えています。

産業レベルでの実用化も道半ばです。フランスのカルビオス社は酵素リサイクルの商業化で先行していますが、初の大規模プラントの稼働は当初の2025年予定から2028年上半期に延期されています。

記者の視点:「異端児」を受け入れる柔軟さが生む可能性

この物語で最も印象的なのは、ゴンサレス・サントスの天才ぶりだけではありません。注意欠陥を指摘された少年の才能を見出し、9歳の大学生という前例のない挑戦を受け入れたグアダラハラ大学の柔軟さもまた、注目に値します。日本でも飛び級制度の議論はありますが、実際に制度の枠を超えて才能を伸ばした事例はまだ少ないのが現状です。

一方で、プラスチック問題の解決には、天才的な個人の努力だけでは限界があることも事実です。酵素の性能向上だけでなく、分別インフラの整備、消費者の行動変容、産業界のコスト負担など、社会全体での取り組みが不可欠です。

ペットボトルが「資源」に変わる未来へ

15歳の博士課程の学生が見据えるのは、廃プラスチックが「ゴミ」ではなく「資源」になる未来です。酵素はプラスチックを元の化学物質に分解するため、理論上は、元の品質に近いプラスチックへ再生できる可能性があります。世界各地で酵素リサイクルの研究と商業化が進む中、チャパラ湖の微生物が持つ遺伝情報の中に、次のブレイクスルーが眠っているかもしれません。