ワカリタイムズ

🌍 海外ニュースを「わかりやすく」

CNNがPerplexityを提訴、AI著作権戦争に揺れるメディア業界

朝のニュースをスマホで眺めるとき、最近はAIが要約してくれる短い文章で「だいたいの内容」を把握する方も増えているのではないでしょうか。便利な一方で、その要約のもとになっている記事を書いた新聞社やテレビ局は、はたして対価を受け取っているのでしょうか。CNN(米Cable News Network)がAI検索企業Perplexityを提訴したというニュース「CNN、AI著作権侵害でPerplexityを提訴」は、まさにこの問いを突きつけるものです。今回は訴訟の中身と、すでに先行している日本の動きも交えて、AI時代のメディア業界の最前線を読み解きます。

「テレビ局として初」と言われるAI著作権訴訟

CNNは2026年5月28日付で、ニューヨーク南部地区連邦地裁にPerplexityを相手取った著作権侵害訴訟を起こしました。報道によれば、これはCNNとしては初のAI関連著作権訴訟で、米国のテレビネットワークによるAI企業提訴としても初の事例とみられています。

訴状によると、CNNは2024年中にPerplexityとコンテンツ利用について交渉を進めていましたが、条件で折り合えず提携には至りませんでした。それにもかかわらずPerplexityは交渉の前後を通じて、CNNのコンテンツやロゴ・サービスマークを許可なく利用していたとされています。

CNNの広報担当者は「数百億ドル規模で評価される企業が、コンテンツを生み出す側から無断で奪うことが許されてはならない」と強い口調で批判しました。一方でPerplexity側は広報責任者を通じ、「事実そのものに著作権はない」と反論しています。両者の言い分は真っ向から対立しています。

メディア vs AI企業の二極化する選択肢

CNNはAIに敵対しているわけではない、と繰り返し強調しています。実際、2024年12月にはMetaとAIに関する提携を結んだことが報じられました。CNNは声明で「AIがもたらす機会を積極的に受け入れている」とし、責任ある企業とは複数の商業契約を結んでいるとしています。

整理すると、今のメディア各社はAI企業に対して大きく2つの戦略を組み合わせて動いています。

  • 訴訟ルート: 無許可で記事を使われている疑いのあるAI企業を相手取り、著作権侵害で提訴する
  • ライセンスルート: 自社コンテンツのAI利用を有料で許諾し、収益と権利保護を両立する

Perplexityをめぐる動きを見ても、二極化がはっきり表れています。

AI企業との関係 主なメディア
提訴 CNN、ニューヨーク・タイムズ、ニューズ・コーポレーション、シカゴ・トリビューン、ブリタニカ百科事典、読売新聞
提携 ガネット、TIME、ル・モンド、シュピーゲル

つまり、世界の主要メディアはAI企業との関係を「対決か、契約か」のいずれかに振り分け始めている、というのが現在の構図です。

日本も最前線:読売新聞・朝日・日経がPerplexityを提訴

今回のCNN訴訟で日本人として注目したいのが、Perplexityをめぐる関連訴訟の中に読売新聞が登場している点です。日本でも2025年から、Perplexityに対する大規模な著作権訴訟がすでに進んでいます。

法律事務所のニュースレターや報道によると、状況は次のようにまとめられます。

  • 読売新聞は2025年8月、東京地裁でPerplexityを提訴。約21億6,800万円の損害賠償を請求
  • 読売側は、2023年9月から2024年6月の間にPerplexityが約11万9,000本の記事を無断で収集したと主張
  • 朝日新聞社、日本経済新聞社も同様の訴訟を提起し、読売・朝日・日経の新聞3社による請求総額は約66億円に達する

争点となっているのは、Perplexityの行為が著作権法の複製権・公衆送信権を侵害するかに加え、日本独自の論点である著作権法30条の4(情報解析のための利用)や47条の5の解釈です。これらの条文がAIによる学習・利用にどこまで適用されるかは、まだ判例として確立していません。

記者の視点:「ただ乗り」議論は日本のクリエイターにも他人事ではない

CNNと読売・朝日・日経の動きを並べると、ある共通点が浮かびます。AIの便利さが「報道や創作の対価を誰が払うのか」という、ごく古典的な問題を再燃させているのです。

AIによる要約や検索回答は、利用者から見れば「答えがすぐ手に入る」という大きな利点があります。しかし、その回答の素材になっているのは、記者や編集者、研究者、ライターが時間と費用をかけて作った文章です。素材を作る側に対価が回らないままだと、長い目で見れば質の高い一次情報そのものが先細りしかねません。

日本のフリーランスのライターやブロガー、漫画家、研究者にとっても、今回の構図は他人事ではありません。AIに収集・利用されても、自分の名前は表に出ず、収益はAI企業に集中する、という未来像は十分に現実味があります。今回の訴訟群は、その流れを「コンテンツ利用には対価が必要だ」という方向へ引き戻す試みと位置づけられます。

「対価か裁判か」の新ルールが見えてくる日

CNN対Perplexityの訴訟は、米国でメディアとAI企業の力関係を決める重要な一手になります。読売新聞や朝日新聞、日経新聞の訴訟も、日本における生成AIと著作権の境界線を司法が初めて本格的に示す機会になりそうです。

今後、判決や和解の中身次第では、AI検索の表示方法や、コンテンツ提供側への支払いの仕組みが大きく変わる可能性があります。利用者も、AIの回答がどこから来ているのか、その素材を作った人へ正当な対価が回っているのかを、改めて意識する必要があります。読者の選択もまた、メディアとAIの未来の形を決める一票になっていきます。