Googleが、スマートホーム向けの新しいAI機能群「Gemini for Home」を発表しました。その提供スケジュールや対象国について、米メディア9to5Googleが「Gemini for Homeの展開スケジュールと対象国」として報じています。同社の最新AIモデル「Gemini」を基盤とするこの進化は、私たちの暮らしをより賢く、快適なものに変える可能性を秘めています。
この進化の柱となるのは、主に以下の3つです。
Google Home アプリの刷新 スマートホームデバイスの管理・操作の中心となる「Google Home アプリ」が、Geminiの能力を最大限に引き出すためにデザインと性能の両面で刷新され、これまで以上に直感的で使いやすくなります。
進化したAIカメラ機能 スマートカメラがGeminiと連携し、単に物体を検知するだけでなく、映像に映っている状況をより具体的に理解し、説明できるようになります。これにより、防犯や見守りの精度が格段に向上します。
次世代の音声アシスタント 従来のGoogleアシスタントに代わる新しい「Gemini for Home 音声アシスタント」が登場。まるで人間と話しているかのような、より自然でスムーズな会話を通じて、スマートホームを操作できるようになります。
これらの進化は、私たちのスマートホームを、単なる遠隔操作される機器の集まりから、生活を理解しサポートしてくれる真のパートナーへと変える可能性を秘めています。
「Gemini for Home」の主要機能と料金プラン
「Gemini for Home」の登場により、スマートホーム体験は具体的にどう変わるのでしょうか。ここでは、注目の機能と、利用に必要な料金プランを詳しく見ていきます。
AIカメラ機能:自宅の状況をより深く理解する
有料プラン「Google Home Premium Advanced」に加入し、対応する最新カメラ(Nest Cam Outdoor 第2世代など)を利用することで、以下の高度なAIカメラ機能が使えるようになります。
AIによる詳細な説明(AI descriptions) AIがカメラ映像を解析し、「犬が庭を掘っている」のように、状況を具体的で分かりやすい文章で説明します。従来の「人物を検知」といった単純な通知から大きく進化し、何が起きているかを正確に把握できます。
AI通知(AI notifications) 上記の詳細な説明が、そのままスマートフォンの通知として届きます。一目見ただけで自宅の状況を素早く理解できます。
ビデオ履歴の検索(Search video history) 「昨日、犬は外に出ましたか?」といった自然な言葉で、過去の録画映像から目的の場面を簡単に見つけ出せます。
ホームブリーフ(Home Brief) 1日の終わりに、カメラが捉えた重要な出来事をAIが要約し、レポートとして提供します。自宅で何があったかを効率的に確認できます。
対話型操作「Ask Home」:自然な言葉で家を操る
「Ask Home」は、Google Homeアプリ内で提供される新しい検索・チャット機能です。プランによって利用できる機能が異なります。
無料で利用できる機能
特別な料金プランに加入しなくても、以下の基本的な機能が使えます。
- クイック検索:デバイスや自動化設定を素早く検索できます。
- 簡単な質問:「どの照明が点いてる?」など、デバイスの状態を質問できます。
- リアルタイム操作:「すべてのブラインドを閉めて」といった指示でデバイスを操作できます。
Google Home Premium Standardで利用できる機能
「Google Home Premium Standard」に加入すると、さらに高度な機能が解放されます。
自動化ルールの作成(Automation creation) 「私たちが留守のときは常にすべての照明を消す」といった繰り返しのルールや、「今夜7時にリビングを暖めて音楽をかけて」といった一度きりの設定も、自然な言葉で作成できます。
情報の記憶 あなたの好み(好きな色など)を記憶させ、よりパーソナルな応答が可能になります。
各プランで利用できる機能のまとめ
「Gemini for Home」の機能を最大限に活用するための料金プランは、以下の通りです。
| プラン名 | 料金 | 主な機能 |
|---|---|---|
| 無料プラン | 無料 | Ask Homeでの基本的な検索、質問、操作 |
| Google Home Premium Standard | 有料 | 無料プランの全機能に加え、Ask Homeでの高度な自動化ルール作成、情報記憶など |
| Google Home Premium Advanced | 有料 | Standardプランの全機能に加え、高度なAIカメラ機能(AIによる詳細な説明、ホームブリーフなど) |
「Gemini for Home」はいつから使える?提供スケジュール
段階的に提供される「Gemini for Home」。ここでは、機能ごとの具体的な提供スケジュールをまとめました。
10月1日以降:新Google Homeアプリと一部機能が先行提供開始
刷新された「Google Home アプリ」(バージョン4.0)は、10月1日から世界中で順次提供が始まっています。これに伴い、一部の主要機能も特定の国で利用可能になりました。
- Ask Home機能:アプリ内でのチャットによるデバイス操作や状態確認ができるこの機能は、まず米国、カナダ、イギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランドで提供されます。
- 高度なAIカメラ機能:「AIによる詳細な説明」などのカメラ機能も、上記と同じ国々で順次展開されています。ただし、これらの機能を利用するには、有料プラン「Google Home Premium Advanced」への加入と、対応する新しいNestカメラが必要です。
2025年10月28日:米国で音声アシスタントの先行アクセス開始
次世代の「Gemini for Home 音声アシスタント」をいち早く体験できる早期アクセスプログラムが、米国ユーザーを対象に開始されます。
この新しい音声アシスタントは、多くのGoogle製スマートデバイスで利用可能になる予定です。ただし、より高度な対話機能「Gemini Live」を利用するには、Google Home Premium Standardプランへの加入と、比較的新しいデバイス(Google Nest Mini 第2世代以降)が必要となります。
2026年初頭:日本を含む各国へ展開拡大
AIカメラ機能は、2026年初頭には日本、ドイツ、フランスなど、さらに多くの国で提供される予定です。また、「Gemini for Home 音声アシスタント」も、同時期に提供地域が拡大される見込みです。
2026年春:Gemini専用の新型スピーカー登場
Geminiのために特別に開発された新しい「Google Home スピーカー」が、2026年春に発売予定です。このデバイスが、新しいスマートホーム体験をさらに進化させることが期待されます。
記者の視点
海外で先行して展開が進む「Gemini for Home」ですが、日本での本格的な利用開始はいつになるのでしょうか。
日本での本格的な展開は、AIカメラ機能の提供が予定されている2026年初頭が、一つの重要な節目となりそうです。公式発表でも日本が対象国に含まれており、「AIによる詳細な説明」や「ビデオ履歴の検索」といった高度な機能が国内で利用可能になる見込みです。
過去のGoogle製品の展開ペースを考慮すると、海外での導入から数か月から半年程度で日本市場に対応するケースが多く、この予測は現実的と言えるでしょう。
日本のスマートホーム市場は、省エネ意識の高さや生活の質向上へのニーズから、大きな成長が見込まれています。しかし、設定の複雑さなどが普及の障壁となることもありました。「Gemini for Home」が提供する自然な言葉での操作や自動化設定は、こうした課題を解決し、これまでスマートホームにハードルを感じていた人でも、簡単に使いこなせるようになる可能性を秘めています。
「Gemini for Home」の日本上陸は、単なる機能追加に留まらず、日本のスマートホーム市場を次のステージへと引き上げる起爆剤となるかもしれません。
AIが織りなす未来:期待と課題
「Gemini for Home」の登場は、単なる技術のアップデートではなく、私たちの「暮らしのOS」そのものが書き換わるような、大きな変化の始まりを告げています。これまでのスマートホームが私たちの命令を待つ「賢い執事」だったとすれば、これからは状況を理解し、先回りしてサポートしてくれる「思いやりのあるパートナー」へと進化していくのかもしれません。
「犬が庭で穴を掘っています」という通知は、その象徴です。単に「動きを検知」するのではなく、その状況に「意味」を見出して伝えてくれるのです。この一歩は、やがて「雨が降りそうなので窓を閉めますか?」といった提案や、「いつもこの時間に帰宅されますが、お風呂を沸かしておきましょうか?」といった、生活パターンを学習した上での能動的なサポートへと繋がるでしょう。
2026年初頭と予測される日本での本格展開。その未来に備え、今から自分の生活の中でAIにどんな手伝いをしてほしいか想像してみるのも、良い準備になるはずです。
もちろん、生活の隅々までAIが関わることへの期待の裏側には、プライバシーへの懸念も存在します。どこまでの情報をAIと共有し、どのような判断を任せるのか。私たちは、この新しい「同居人」との適切な距離感を築いていく必要があります。
大きな変化の波を楽しみながらもテクノロジーに振り回されることなく、賢く使いこなし、自分たちにとって最も快適な「未来の家」をデザインしていく。この記事が、その一助となれば幸いです。
