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ChatGPT、まさかの敗北!50年前のゲーム機チェス対決でAIの弱点露呈

最近、私たちの身の回りでは、スマートフォンの音声アシスタントや、文章を作ってくれるAI(人工知能)など、さまざまな形でAIが使われるようになりました。AIはとても賢く、何でもできるようなイメージを持っている人も多いかもしれません。しかし、そんなAIが、なんと50年近くも前の古いゲーム機に、あることで完敗してしまったという驚きのニュースが飛び込んできました。

そのニュースとは、「How Did ChatGPT Get 'Absolutely Wrecked' at Chess by an 1970s-Era Atari 2600? - CNET」というものです。世界中で話題のAIであるChatGPTが、1970年代に発売されたAtari 2600という古いゲーム機相手に、チェスの対決で「まるで使い物にならないほど打ちのめされた」というのです。この結果は、AIの得意なことと苦手なことを考える上で、私たちにとって非常に重要なヒントを与えてくれます。

AIの「弱点」が明らかに? Atari 2600とのチェス対決

今回のチェス対決を企画したのは、CitrixのエンジニアであるRobert Carusoさんです。彼は、Atariが1979年に発売したチェスゲーム「Video Chess」を動かすために、ソフトウェアエミュレーターという技術を使いました。これは、今のパソコンの上で、まるで昔のAtari 2600本体が動いているかのように、古いゲームを遊べるようにするプログラムです。

この「Video Chess」とChatGPTをチェスで戦わせたところ、ChatGPTはひどい結果に終わってしまいました。Carusoさんは、そのLinkedInの投稿で、ChatGPTの様子を次のように報告しています。

  • 駒の混乱: ChatGPTは、チェスの駒である「ルーク」(将棋の飛車に似た駒)と「ビショップ」(将棋の角に似た駒)を間違えて認識しました。
  • 重要な手を見落とし: 「ポーンフォーク」(ポーンという一番弱い駒を使って、一度に相手の複数の駒を脅かす、初心者でも使う基本的なテクニック)のような、勝敗を分ける重要な手を何度も見逃しました。
  • 位置を把握できず: 盤面上の駒の位置を繰り返し見失い、最初はその原因を「Atariのアイコンが抽象的すぎる」とゲームの表示のせいだとしました。しかし、一般的なチェスの表記方法に変えても、全く改善されなかったそうです。

Carusoさんは、ChatGPTのあまりのひどさに「小学3年生のチェスクラブでも笑いものになるだろう」とまで述べています。90分間にわたる対戦中、ChatGPTは何度も対局のやり直しを要求したといい、その敗北は「初心者レベルで完全に打ちのめされた」という表現で語られています。

なぜ、超高性能AIが古いゲーム機に負けたのか?

今回の結果は、多くの人にとって驚きだったかもしれません。なぜなら、コンピューターがチェスで人間を打ち負かす能力は、長年、その知能の高さを示す基準とされてきたからです。例えば、1997年にはIBMが開発したチェス専用のスーパーコンピューター「Deep Blue」が、当時の世界チェスチャンピオンだったGarry Kasparov氏を打ち破り、世界中で大きなニュースになりました。

この背景を踏まえると、最新のAIであるChatGPTが、Deep Blueよりもはるかに古い、1970年代のゲーム機に負けるというのは、一見すると信じがたいことです。しかし、この結果には、AIの「種類」と「得意分野」が大きく関係しています。

技術用語の解説

  • ChatGPT: OpenAIが開発した、テキストを理解し、人間のような文章を生成するAIです。私たちが質問すると、それに答えてくれたり、文章の作成を手伝ってくれたりします。
  • Atari 2600: 1977年にアメリカで発売された家庭用ゲーム機です。日本のファミリーコンピューターファミコン)よりも古い世代のゲーム機で、限られた性能の中で様々なゲームが作られました。
  • Video Chess: Atari 2600向けに1979年に発売されたチェスゲームです。当時のゲーム機は今と比べて処理能力が非常に低かったため、少ない情報でチェスの思考を行うように設計されています。
  • ソフトウェアエミュレーター: あるコンピューター上で、別のコンピューターの動きを再現するプログラムのことです。古いゲーム機のエミュレーターを使えば、例えば今のパソコンで昔のゲームを遊ぶことができます。例えるなら、現在の車の中で、昔の車のエンジンを動かしているようなイメージです。

AIの得意分野と苦手分野

今回の対決でChatGPTが負けたのは、「頭が悪いから」というわけではありません。ChatGPTは、私たちが普段使っている言葉(自然言語)を理解し、それを元に文章を生成することに特化した「大規模言語モデル」と呼ばれる種類のAIです。インターネット上の膨大なテキストデータを学習することで、文脈を読み取り、人間が話すような自然な応答をすることにかけては、非常に高い能力を持っています。

一方、チェスというゲームは、複雑なルールと、非常に多くの手のパターンが存在する論理的な戦略ゲームです。相手の手を予測し、何手も先を読み、最適な一手を導き出すための、数学的・論理的な思考力が求められます。

「Video Chess」は、Atari 2600という限られた性能の中で、このチェスの論理をできるだけ効率的に処理するように、専門のプログラマーが緻密に設計した「チェス専用プログラム」です。ChatGPTのように広く一般的な文章を理解するAIとは異なり、チェスという特定の分野に特化して作られているため、たとえ半世紀近く前の技術であっても、チェスのルールと戦略を正確に処理する能力を持っています。

つまり、今回の対決は、言語処理の天才と、チェスゲームの専門家が戦ったようなものです。それぞれに異なる得意分野があり、ChatGPTはチェスゲームの専門家ではなかったため、チェスのルールや駒の動き、戦略的な判断において致命的なミスを連発してしまったと考えられます。

日本への影響と私たちが学ぶべきこと

日本社会への影響とAIとの付き合い方

日本でも、多くの企業が業務効率化のためにAIを導入したり、教育現場でAIを活用する試みが始まったりと、AIの利用は急速に広がっています。私たちの周りでも、AIスピーカーや翻訳アプリなど、AIの恩恵を日常的に受けています。

しかし、今回のChatGPTの敗北は、「AIは万能ではない」「AIにも得意・不得意がある」ということを明確に示しています。これは、AIを活用する上で非常に重要な視点です。

  • AIの限界を知る: AIは魔法ではありません。特定の目的のために設計されたツールであり、その限界を理解することが重要です。何でもAIに任せれば良いというわけではなく、AIが苦手な部分は人間が補う必要があります。
  • 目的とAIの特性を合わせる: 日本の企業や個人がAIを導入する際にも、どのような課題を解決したいのか、その課題解決に適したAIの種類は何かを慎重に見極めることが求められます。今回のケースのように、言語処理に特化したAIを論理的なゲームに使うのは適していません。
  • 教育の重要性: 小学生や中学生がAIに触れる機会が増える中で、AIのリテラシー(適切に使いこなす能力)を育む教育がますます重要になります。AIがどのように動き、どのような限界があるのかを理解することは、未来を生きる私たちにとって不可欠なスキルとなるでしょう。

私たちの生活への示唆

今回の出来事は、AIが「思考」や「知能」を持つことの意味についても一石を投じます。ChatGPTは、人間のように自然な会話ができるため、まるで本当に考えているかのように感じることがあります。しかし、チェスでの「ポーンフォーク」を見落とすような基本的なミスは、私たちが普段感じる「AIの賢さ」が、あくまで特定のタスクにおけるものであることを示しています。

これは、私たちの日常生活でAIを使う際にも役立つ教訓です。例えば、AIが生成した情報が常に正しいとは限らないこと、AIのアドバイスが全ての場合に最適とは限らないことなどを意識することが大切です。AIはあくまで強力なツールであり、最終的な判断は人間が行うべきだということを改めて認識させてくれます。

AIと人間が共存する未来へ

今回のChatGPTとAtari 2600のチェス対決は、最新のAIが必ずしも全ての分野で優れているわけではないという、興味深い事実を突きつけました。ChatGPTのような大規模言語モデルは、文章の生成や要約、アイデア出しなど、言葉に関わる作業において絶大な力を発揮します。しかし、チェスのような論理的な戦略ゲームは、特定の計算やアルゴリズムに特化したAIプログラムに軍配が上がることが分かりました。

この結果は、AIの進化がこれからも多岐にわたることを示唆しています。今後も、特定の分野に特化した高性能なAIと、ChatGPTのように汎用的な能力を持つAIの両方が発展していくでしょう。

私たちにとって重要なのは、それぞれのAIがどのような特性を持ち、どんなことに使えるのかを正しく理解し、賢く活用していくことです。AIは私たちの生活を豊かにし、社会をより良くするための強力な道具です。その強みと弱みをしっかりと見極めることで、AIと人間が協力し、より良い未来を築いていけるはずです。