米TechCrunchの報道「Google’s AI Mode adds 5 new languages including Hindi, Japanese, and Korean」によると、Googleは検索サービスに搭載する「AIモード」の対応言語を拡大し、日本語やヒンディー語、韓国語など新たに5言語を追加しました。
この「AIモード」は、AIを活用した新しい検索体験です。ユーザーが複雑な質問を投げかけると、AIがウェブ上の情報を収集・分析し、整理された回答を生成します。まるで優秀なアシスタントが、知りたいことを的確に教えてくれるようです。
Google Searchのプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントであるHema Budaraju氏は、「この拡充により、より多くの人々が、好みの言語で複雑な質問をしたり、より深くウェブを探索したりできるようになります」と述べています。今回の日本語対応は、単なる機能追加にとどまらず、言語の壁を越えてウェブの情報を誰もが深く活用できるようになるための、重要な一歩と言えるでしょう。
AIモードを支える先進技術:「Gemini 2.5」と「エージェント機能」
GoogleのAIモードの進化を支えているのが、最新AIモデル「Gemini 2.5」と、新たに搭載された「エージェント機能」です。これらは単に質問に答えるだけでなく、私たちの代わりに実際のタスクまでこなす能力を秘めています。
AIの頭脳を担う「Gemini 2.5」
AIモードの核となっているのは、Googleが開発した最新AIモデルファミリー「Gemini 2.5」です。このAIは、画像や音声など様々な種類の情報(マルチモーダル)を理解し、高度な推論を行う能力を備えています。これにより、AIモードはこれまで以上に複雑でニュアンスのある質問にも、的確でわかりやすい回答を生成できるのです。
GoogleのAI研究開発組織であるGoogle DeepMindのグループプロダクトマネージャー、Logan Kilpatrick氏は、AIを活用した検索体験が将来的にGoogle検索のデフォルトになる可能性を示唆しており、高性能AIが私たちの情報収集のあり方を根底から変えることが期待されます。
タスクを代行する「エージェント機能」
もう一つの大きな進化が「エージェント機能」の追加です。これは、AIがユーザーの指示を理解し、自ら判断して行動を実行する機能です。例えば、「来週金曜の夜、渋谷でイタリアンを4人で予約したい」と依頼すれば、AIが空いている店を探して予約まで完了させるといった、一連のタスクを代行できるようになります。
この先進的な機能は現在、米国にてGoogleの実験的プラットフォーム「Labs」を通じて、一部のユーザーに限定して提供されています。将来的には、より多くのユーザーがAIに様々なタスクを依頼できるようになることが期待されています。
AI検索の進化がもたらす懸念とGoogleのスタンス
Googleの「AIモード」は、PerplexityやOpenAIの「ChatGPT Search」といった先進的なAI検索サービスと競合します。こうしたAI検索の進化は、ウェブサイトへのアクセス数(ウェブサイトのトラフィック)に与える影響という点で、大きな議論を呼んでいます。
AIが検索結果ページ上で回答を完結させてしまうため、ユーザーが個別のウェブサイトを訪れる機会が減り、サイト運営者のトラフィックが減少するのではないか、という懸念です。
この点についてGoogleは先月、自社のAI検索機能がウェブサイトのトラフィックを奪っているとの見方を否定しています。
情報収集を劇的に効率化するAI検索ですが、その進化がコンテンツ制作者に不利益をもたらすことなく、健全なエコシステムを維持できるかが今後の大きな課題です。AIモードの機能の多くはまだ実験段階のため、その動向を注視していく必要があります。
AIが織りなす未来:期待と課題
GoogleのAIモードの登場は、単なる検索機能のアップデートではありません。これは、私たちが情報を手に入れ、日々のタスクをこなす方法が根本から変わる可能性を秘めた、大きな一歩です。
「検索する」から「依頼する」時代へ
今回発表された「エージェント機能」が普及すれば、私たちの情報収集スタイルは「検索する」から「依頼する」へと大きく変わる可能性があります。キーワードで情報を探すのではなく、AIに具体的なタスクを直接お願いすることが当たり前になるかもしれません。これにより、検索エンジンは単なる情報検索ツールから、私たちの生活を支える「パーソナルアシスタント」へと進化していくでしょう。
賢いユーザーに求められる視点
この便利な未来を最大限に活用するためには、私たちユーザー側にも新しい視点が求められます。
AIの答えを鵜呑みにしない AIが生成する回答は便利ですが、あくまでウェブ上の情報を要約したものです。情報の正確性や背景を深く知りたい場合は、AIが参照した情報源をたどる習慣がこれまで以上に重要になります。
情報の作り手への敬意を忘れない AIが賢い答えを出せるのは、その学習元となる質の高い情報がウェブ上に存在するからです。AI検索が便利になる一方で、ウェブサイトの運営者が正当な評価や収益を得られなくなれば、巡り巡って私たちが受け取る情報の質にも影響しかねません。
GoogleのAIモードは、私たちの生活を間違いなく豊かにしてくれるでしょう。このパワフルなツールを、思考停止の道具ではなく、私たちの知的好奇心をさらに加速させるための「最高の相棒」として使いこなしていく。そんな賢い付き合い方が、これからの私たちには求められています。