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海外旅行に潜むAIの罠:偽情報で遭難寸前?対策すべき新常識

旅行の計画にAIを使うのが当たり前になりつつあります。しかし、AIが生成するもっともらしい嘘の情報、いわゆる「ハルシネーション」が、旅行者を危険にさらす問題が起きています。

AIが実在しない観光地を案内し、危険な場所へ誘導してしまうのです。実際にペルーのアンデス山脈では、AIが架空の峡谷を勧めたことで観光客が遭難しかける事態が発生しました。この問題は、ニュースサイトFuturismの「AIが架空の観光地へ旅行客を誘導し、危険な事態を招く」という記事でも詳しく報じられています。

本記事では、AIを使った旅行計画の思わぬ落とし穴と、安全に旅を楽しむための対策について解説します。

AIが案内する「幻の観光地」―ペルーで起きた遭難未遂事件

旅行計画にAIを活用する人が増える一方で、AIが生成する「ハルシネーション」による、実在しない観光地への誘導という新たな危険が浮上しています。

BBCの報道によると、ペルーのアンデス山脈を旅していた二人の観光客が、AIに勧められた「Sacred Canyon of Humantay」という場所を目指していました。しかし、この場所はAIが作り出した架空のもので、実際には存在しません。幸いにも、彼らは現地のツアーガイドに発見され、事なきを得ました。

このガイドは、「ペルーのような場所では、こうした誤情報は命に関わる」と警鐘を鳴らしています。AIが示した場所は標高4000メートルにもなる高地で、急な天候の変化も多く、酸素も通信手段も乏しい危険なエリアでした。もし発見が遅れていれば、深刻な事態に陥っていた可能性があります。

これは他人事ではありません。旅行者向けサービスを提供するグローバル・レスキュー社が2025年に行った調査によると、旅行者の24%が計画にAIを利用していると回答しています。AIが便利なツールであることは間違いありませんが、その情報を鵜呑みにすることの危険性を示唆しています。

かつて地図アプリの普及が、静かな住宅街に思わぬ交通渋滞を引き起こしたように、AIもまた旅行に新たな課題をもたらしているのです。AIからの情報を鵜呑みにせず、特に安全に関わる情報は複数の信頼できる情報源で確認することが極めて重要です。

AIが悪用される? 旅行詐欺の最新手口と対策

AIの進化は、私たちの生活を便利にする一方で、残念ながら犯罪に悪用されるリスクも高まっています。特に旅行業界では、AIを利用した巧妙な詐欺の手口が確認されており、注意が必要です。

AIが生成する偽の旅行サイト

詐欺師はAIを悪用し、本物そっくりの偽の旅行アプリやウェブサイトを作り出しています。これらの偽サイトは、魅力的な旅行プランや格安ツアーを提示して利用者の関心を引き、入力された個人情報やクレジットカード情報を盗み取ります。

AIによってデザインや文章が生成されるため、一見しただけでは偽物と見分けるのが非常に困難です。一度情報が流出すると、さらなる詐欺被害に遭う可能性もあり、極めて危険です。

ディープフェイク技術の脅威

さらに懸念されているのが、ディープフェイク技術の悪用です。これは、AIを使って本物そっくりの偽の動画や音声を作り出す技術で、旅行詐欺に利用される可能性が指摘されています。例えば、有名ホテルの関係者を装った偽の動画で、あり得ないようなキャンペーンを宣伝し、人々を騙すといった手口が考えられます。

専門家からの警告と対策

旅行者向けの危機管理サービスを提供するグローバル・レスキュー社は、AIの普及が旅行業界にとって差し迫った脅威であると警告しています。専門家は「AIの普及は旅行者にとって脅威だ」と指摘しており、私たち自身が警戒を怠らないことが重要です。

AIを悪用した旅行詐欺から身を守るために、以下の点に注意しましょう。

  • 情報源を必ず確認する:見慣れないウェブサイトやアプリの情報は鵜呑みにせず、公式サイトや信頼できる情報源で裏付けを取りましょう。
  • 安易に個人情報を入力しない:少しでも不審に感じたら、個人情報やクレジットカード情報の入力は絶対にやめましょう。
  • 「うますぎる話」を疑う:格安すぎるツアーや、あり得ない特典を謳う広告は詐欺の可能性が高いです。「おいしい話には裏がある」という意識を持ちましょう。
  • 最新の詐欺手口を知る:詐欺の手口は日々進化しています。警察庁のウェブサイトなどで最新情報を確認し、知識をアップデートしておくことも有効です。「警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ

記者の視点:AIは旅の「相棒」か、それとも「落とし穴」か

AIがもたらす変化は、旅行という分野に限りません。これは、私たちが新しいテクノロジーとどう向き合うかという、より大きなテーマを投げかけています。AIは、私たちの旅を豊かにする「頼れる相棒」になる可能性を秘めている一方で、使い方を誤れば危険な「落とし穴」にもなり得ます。

大切なのは、AIを万能のガイドとして盲信するのではなく、あくまで優秀な「アシスタント」として捉えることです。最終的な判断と責任は、常に旅をする私たち自身にあります。AIの提案を旅の「ヒント」として活用し、そこから自分自身で情報を吟味し、旅を組み立てていく。そのプロセスこそが、旅の醍醐味の一つではないでしょうか。

便利なツールに全てを委ねるのではなく、自分の頭で考え、自分の足で確かめる。テクノロジーが進化した現代だからこそ、この基本的な姿勢が改めて重要になっています。

AIを賢い「旅の相棒」にするために

この記事では、AIが引き起こす旅行中のトラブルや詐欺のリスクについて見てきました。しかし、AIの可能性を過度に恐れる必要はありません。大切なのは、その特性を正しく理解し、賢く付き合っていくことです。

AIは、私たちがこれまで知らなかった目的地や、思いもよらなかった体験への扉を開いてくれる強力なツールです。その提案を鵜呑みにするのではなく、公式情報や現地の口コミといった複数の情報源と照らし合わせる「ひと手間」を惜しまないようにしましょう。この「AIリテラシー」こそが、これからの旅行者にとって不可欠なスキルとなります。

AIを「完璧な答えをくれる魔法の箱」ではなく、「旅のインスピレーションを与えてくれる創造的なパートナー」と捉え直してみませんか。AIの技術力と、私たち人間の好奇心や判断力を組み合わせることで、旅はもっと安全で、もっと豊かなものになるはずです。テクノロジーの進化を賢く味方につけて、あなただけの新しい冒険へと旅立ちましょう。