近年、「昔のゲーム業界は終わりだ」という声が聞かれるようになりました。新しいゲーム機やプラットフォームが登場するたび、私たちは期待を抱きますが、その一方で、ゲームの新しい形が私たちの知らないところで生まれつつあるのかもしれません。本記事では、Slate Magazineに掲載された『The Video Game Industry as We Knew It Is Over. Something Unsavory Is Taking Its Place.』を元に、現在のゲーム業界が抱える変化と、その未来について掘り下げていきます。
例えば、任天堂から発売されたNintendo Switch 2は、驚くほど早く多くの人に購入され、その人気の高さがうかがえます。しかし、その成功の裏には、以前とは異なるゲームの楽しみ方やビジネスモデルが存在するようです。本記事では、フォートナイトやRobloxのような、ゲームを超えたプラットフォーム、そしてガチャと呼ばれる新しい収益モデルについて詳しく解説します。また、ソニーやマイクロソフトといった大手企業の動向にも触れながら、ゲーム業界全体がどのように変化しているのかを見ていきます。ゲーム好きの読者の方にも、きっと興味深い内容が満載です。ぜひ最後までお読みください。
なぜ「ゲーム業界は終わり」と言われるのか?
「ゲーム業界は終わり」という言葉を聞くと、驚かれるかもしれません。実際、Nintendo Switch 2が発売されてわずか4日間で350万台も売れたというニュースは、ゲーム業界がまだまだ元気な証拠のように思えます。これは、Nintendo製品としては最速の販売記録です。
しかし、本記事では、この大ヒットが必ずしもゲーム業界の継続的な成長を保証するものではないと指摘します。その理由として、現在のゲームの世界が、私たちが慣れ親しんできたゲームの形態から大きく変化している点が挙げられます。
プラットフォームとしてのゲームの台頭
現在のゲーム業界で新たな潮流を築いているのは、フォートナイトやRobloxといったゲームです。これらは単なる「ゲーム」としてだけでなく、ユーザーがコンテンツを作成したり、企業が広告を展開したりする「プラットフォーム」としての役割も果たしています。例えば、映画監督のジェームズ・ガン氏の話題作『スーパーマン』のプロモーションがフォートナイトで行われるように、ゲームの世界は他のエンターテイメントとも深く結びついています。
フォートナイトの開発元であるEpic Gamesは、ゲーム内での企業とのブランド契約条件などを開示していませんが、ディズニーは2024年に、Epic Gamesに15億ドル(約2,170億円、2024年時点での概算)もの巨額な投資を行いました。これは、ディズニーが自社でゲームを開発するよりも、フォートナイトのようなプラットフォームへの投資に価値を見出した結果と言えるでしょう。この動きは、ゲーム業界が単なる「ゲーム販売」から変革しつつあることを示しています。
無料プレイと「ガチャ」ビジネスモデルの浸透
私たちがゲームと聞いて思い浮かべるのは、例えばマリオカートワールドのように、約9,000円~12,000円で購入する買い切り型のゲームかもしれません。しかし、今のゲームで主流になりつつあるのは、無料プレイ(Free-to-Play、F2P)のゲームです。これらのゲームは、ガチャと呼ばれる仕組みで収益を上げています。ガチャとは、日本のカプセルトイ(ガチャガチャ)に由来し、スロットマシンやギャンブル的な要素を用いてプレイヤーを惹きつけ、継続的な課金を促す無料プレイゲームの収益モデルです。これにより、プレイヤーはゲームを継続的にプレイする中で、追加の課金を促されることになります。
さらに、これらのゲームは特定のゲーム機に限定されず、スマートフォンやタブレットなど、多様なデバイスでプレイできるようになっています。この変化は、任天堂のSwitchやソニーのPlayStation、マイクロソフトのXboxといった高価なゲーム機がなくても、誰もが気軽にゲームを楽しめるようになったことを意味します。
ゲーム開発費の高騰とビジネスモデルの限界
一方で、昔ながらの「大作ゲーム」の開発には、依然として非常に多額の費用と時間がかかります。例えば、ソニーがPlayStation 5向けに2023年に発売したMarvel's Spider-Man 2は、開発に3億ドル(約434億円)以上と5年もの歳月がかかったと言われています。そのため、ソニーやマイクロソフトのような大手企業でさえも、次々と新作ゲームをリリースすることが困難になっています。
この状況下で、企業は少ないゲームで大きな利益を上げるか、あるいはビジネスモデル自体を変革する必要に迫られています。マイクロソフトが「ゲームのNetflix」を目指してサブスクリプションサービスに力を入れているのも、ソニーがゲームを原作としたドラマ『The Last of Us』のように映像展開に力を入れているのも、こうした背景があるためです。
こうした背景から、「昔ながらのゲーム業界は終わり」という声が聞かれるのは、高額な開発費を要する従来のビジネスモデルが厳しさを増し、代わりにプラットフォーム化やガチャといった新しいモデルが主流になりつつあるためです。しかし、その中でも任天堂は独自の道を歩み、多くの人に支持され続けています。その秘密については、次の章で詳しく見ていきましょう。
ゲームの「価格」はどう変わってきたのか?
昔はゲームソフトを買うといえば、1本いくらという、分かりやすい形でした。例えば、任天堂のゲーム機で遊ぶとなると、新しいゲームソフトは約9,000円から12,000円くらいで購入するのが一般的でした。しかし最近では、価格の上昇や、無料プレイながらゲーム内で課金を促す仕組みの普及により、ゲームの価格設定は非常に複雑化しています。
ゲーム価格の値上げとその背景
本記事によると、最近のゲーム業界では、一部のゲームタイトルで値上げの動きが見られます。例えば、任天堂も2023年に、自社ゲームの標準価格を従来の60ドル(約8,700円)から70ドル(約10,100円)に引き上げました。これは、2005年から続いていた任天堂の価格設定からの変更点です。さらに、新型ゲーム機Nintendo Switch 2で発売されるマリオカートワールドの価格は79.99ドル(約1万1,600円)と、さらに高額になっています。
こうした値上げの背景には、ゲーム開発にかかるコストの増加が挙げられます。先ほども触れましたが、Marvel's Spider-Man 2のように、一つのゲームを開発するのに数億ドルもの費用と数年もの時間が必要となるのが一般的です。こうした高額な開発費を回収し、利益を確保するためには、ゲーム本体の価格引き上げも避けられないのかもしれません。
多様化する収益モデルとしての無料プレイとガチャの役割
ゲーム価格が上昇する一方で、無料プレイ(F2P: Free-to-Play)のゲームは新たな主流として急速に普及しています。これらはゲーム本体に初期費用はかかりませんが、前述のガチャなどの仕組みを通じて、プレイヤーの継続的な課金やエンゲージメントを促すことで収益を上げています。フォートナイトやRobloxに代表されるプラットフォーム型のゲームも、多くはこの無料プレイとガチャの仕組みを取り入れています。これにより、ゲームは「買い切り型」から、プレイヤーが長く熱中することで継続的にお金を使ってもらう「サービス型」へとビジネスモデルが変化し、多様な収益源が生まれます。
任天堂の独自戦略:ゲームを超えたエンターテイメントへの挑戦
独自の戦略で市場をリードしてきた任天堂
ゲーム業界全体が変革期を迎える中、任天堂は昔から独自の戦略で多くのファンを魅了してきました。最新のゲーム機Nintendo Switch 2の成功は、その証と言えるでしょう。しかし任天堂は、単に新しいゲーム機を販売するだけでなく、より多様な新しいビジネスモデルを模索しているようです。
ゲーム機を超えたエンターテイメントへの挑戦
任天堂は、ゲーム機本体やソフトの開発・販売だけでなく、近年ではテーマパークや映画といった分野にも積極的に進出しています。例えば、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにある「スーパー・ニンテンドー・ワールド」のようなテーマパーク展開や、過去には『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』といった映画化も成功させています。
これらの動きからは、単にゲームをプレイするだけでなく、任天堂の世界観をより深く体験してもらいたいという意図がうかがえます。ゲームの世界が持つ魅力やキャラクターたちを、さまざまな形で多くの人々に届けることで、新たなファン層を獲得し、ビジネスの幅を広げることを目指しています。
価格設定に見る任天堂のこだわり
先ほども触れましたが、最近のゲーム業界では開発費の高騰などからゲームの価格が上昇する傾向にあります。任天堂も例外ではなく、Nintendo Switch 2のソフトであるマリオカートワールドは、79.99ドル(約1万1,600円)という価格設定になっています。これは、昔ながらのゲームの価格(約9,000円から12,000円)よりもさらに上の価格帯です。
こうした価格設定について、任天堂は「このエンターテイメントの価値に見合った適切な価格を見つけ出す」と説明しています。これは、単に開発費を回収するためだけでなく、ユーザーがそのゲームにどれだけの価値を感じるか、という点を重視している現れと言えるでしょう。高価格帯であっても、それに見合う満足感を提供できれば、多くの人に受け入れられるという考え方です。これは、無料プレイやガチャといったビジネスモデルとは異なる、任天堂ならではの製品へのこだわりを示しています。
変わらない面白さへの追求
任天堂が長年成功してきた要因の一つに、面白さへの飽くなき追求があります。最新技術を追いかけるのではなく、プレイヤーが純粋に楽しめるゲーム体験を、価格に見合った質の高い体験として提供することを大切にしてきました。最新のゲーム機が持つポテンシャルを引き出すようなマリオカートワールドのようなゲームや、これから登場するドンキーコング、ポケモン、メトロイドといった人気シリーズの新作など、任天堂はこれからも私たちをワクワクさせてくれるゲームを提供してくれるはずです。
さらに、Nintendo Switch 2では、ストリートファイター6やHitman、Rune Factoryのような他社製のゲームも楽しむことができます。これは、任天堂が自社タイトルだけでなく、さまざまなゲームタイトルのハブとなるプラットフォームを目指していることを示唆しています。このように、任天堂はゲームという枠を超え、さまざまなエンターテイメントを新しい形で提供することで、これからも私たちの心を掴み続けることでしょう。
ゲーム業界の未来と私たちの暮らし
ゲーム業界における「昔のやり方はもう終わりだ」という声は、単にゲームの制作方法が変わったというだけでなく、私たちの趣味やお金の使い方も変容させていく可能性があります。特に、プライベート・エクイティのような、企業の利益を最大化しようとする動きや、規制が十分でない状況は、この変化をさらに加速させています。
ソニーは、『The Last of Us』のような人気ゲームを原作としたドラマを作るなど、ゲームを映像作品としても展開しています。これは、ゲームの世界をより多くの人に届けるための戦略の一つと言えるでしょう。
マイクロソフトは、「ゲームのNetflix」と称されるサブスクリプションサービスに力を入れています。これは、月額料金を支払うことで多くのゲームが遊び放題になるという、新しいゲームの楽しみ方です。
ゲームが贅沢品になる可能性
一方で、任天堂がNintendo Switch 2でマリオカートワールドを79.99ドル(約1万1,600円)で販売するなど、ゲームの価格は上昇傾向にあります。これは、ゲーム開発に巨額の費用がかかるようになったことや、企業が利益を追求するために価格を引き上げる動きなどが影響しています。このように、質の高いゲームは、私たちにとって贅沢品に近いものになっていくかもしれません。
プラットフォーム化するゲームの世界
ゲームのプラットフォーム化も大きな変化です。例えば、フォートナイトでは、人気映画のプロモーションが行われるなど、ゲームの世界が他のエンターテイメントと結びついています。これは、今後ゲームが私たちの生活の中で、より多様な役割を担っていくことを示唆しています。
このように、ゲーム業界はかつての形から大きく変化し、私たちの趣味や消費行動にも影響を与え始めています。価格の上昇やビジネスモデルの変化など、乗り越えるべき課題はありますが、同時に、ゲームが提供する新しい体験や楽しみ方も広がっています。今後の変化を注意深く見守っていく必要がありそうです。
ゲームの未来をどう楽しむか:変わる業界と私たちの関わり方
これまでの内容を振り返ると、ゲーム業界はまさに「変革期」にあると言えます。フォートナイトやRobloxのようなプラットフォーム型ゲームの台頭、そして無料プレイとガチャというビジネスモデルの普及は、私たちが当たり前だと思っていた「ゲームを買う」という行為や、ゲームとの向き合い方を根本から変えつつあります。
未来のゲーム体験にどう向き合うか
ゲームソフトの価格上昇は、確かに家計に影響を与えるかもしれません。しかし、これは裏を返せば、ゲーム制作にかけられる費用が増え、よりリッチで没入感のある体験が提供される可能性を示唆しています。任天堂のように、単なるゲーム開発に留まらず、テーマパークや映画といった多角的な展開でブランド価値を高めている例もあります。これからは、ゲームの価格だけでなく、体験そのものの価値をどう見出すかが重要になるでしょう。
ゲームがプラットフォーム化していく流れは、今後ますます加速するでしょう。単にゲームをプレイするだけでなく、自分でコンテンツを作ったり、他のプレイヤーと交流したり、さらには広告やイベントに参加したりと、その楽しみ方は無限に広がります。これは、ゲームが私たちの生活の中で、より多くの役割を担っていくことを意味します。友人とのコミュニケーションの場、創造性を発揮する場として、ゲームを捉え直してみるのも良いかもしれません。
読者へのメッセージ:変化を楽しむ視点を
「昔のゲーム業界は終わりだ」という声は、一見ネガティブに聞こえるかもしれません。しかし、これは決してゲームの魅力が終わったことを意味するのではなく、むしろ新しい可能性に満ちた「進化」の過程を示唆しています。ビジネスモデルの多様化、そしてゲームを介したさまざまなエンターテイメントとの融合は、私たちの知らない、もっと豊かなゲーム体験への扉を開くかもしれません。
変化の速い時代だからこそ、新しいゲームの形に柔軟な心で触れ、自分に合った楽しみ方を見つけていくことが大切です。例えば、フォートナイトのような無料プレイゲームのガチャ、あるいは任天堂が提供する質の高い有料ゲームが持つ価値など、それぞれの楽しみ方があります。もしかしたら、本記事を読んでいるあなたも、すでに新しいゲームの波に乗っているのかもしれませんね。ゲームの世界はこれからも、私たちを驚きと楽しませてくれるはずです。その変化を、ぜひご自身の目で確かめてみてください。
