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ソニー、テンセントを提訴!人気ゲーム「Horizon」“クローン”問題の深層

ゲームの世界では、魅力的なキャラクターや胸躍る冒険に夢中になることも多いでしょう。しかし、もしその作品が、あなたが愛してやまない別のゲームとそっくりだったらどう感じますか?

ソニーが中国のゲーム大手テンセントを提訴したという、まさにそんな驚きのニュースが飛び込んできました。原因は、テンセントが開発中のゲーム『Light of Motiram』が、ソニーの人気シリーズ『Horizon』に酷似しているというもの。今回は、この問題を報じたニュース「Sony sues Tencent, claiming its Light of Motiram game is a ‘slavish clone’ of its Horizon series」を元に、訴訟の背景とゲーム業界への影響を掘り下げていきます。

ソニーが「露骨なクローン」と断じる理由

ソニーがテンセントを訴えた背景には、著作権侵害商標権侵害という、2つの大きな法的問題があります。具体的にどのような点が問題視されているのでしょうか。訴状でソニーが主張する主なポイントを見ていきましょう。

主人公から世界観まで:酷似するゲーム要素

ソニーの訴えによると、『Light of Motiram』はソニーの大人気ゲーム『Horizon』シリーズと驚くほど多くの共通点があるとのこと。特に、以下の点が酷似していると指摘されています。

  • 赤毛の女性主人公:『Horizon』シリーズの主人公といえば、赤毛の女性戦士「アーロイ(Aloy)」です。『Light of Motiram』の主人公も同様に赤毛の女性であり、模倣の根拠の一つとされています。
  • 終末世界(post-apocalyptic world)の設定:文明崩壊後の荒廃した世界で人類が生き残りをかけて戦うという、『Horizon』の根幹をなす世界設定が共通しています。
  • 機械の動物の存在:『Horizon』シリーズの象徴である機械獣(robotic animals)に対し、『Light of Motiram』にも「メカニマルズ(mechanimals)」と呼ばれる、デザインやコンセプトが酷似した機械の動物が登場します。

宣伝資料にまで見られる類似性

ソニーの主張はゲーム内容に留まりません。『Light of Motiram』の予告映像やスクリーンショットといった宣伝資料(promotional material)についても、『Horizon』シリーズのものと強い類似性があると指摘。全体的に『Horizon』を意図的に模倣して作られていると見ています。

提携交渉の裏で進んでいた開発

訴状には、さらに踏み込んだ主張も含まれています。ソニーによると、テンセントは2023年、『Horizon』のIP(知的財産)ライセンス供与による協業をソニーに打診したものの、ソニー側はこれを拒否しました。しかし、テンセントはその裏で『Light of Motiram』の開発を秘密裏に続行し、最終的に発表に至ったとされています。この経緯は、テンセントの行為が「故意の侵害(willfully infringed)」であるとソニーが訴える、強力な根拠になっていると考えられます。

「独創性のないクローン」という厳しい非難

これらの類似点から、ソニーは『Light of Motiram』を、単なる模倣を超えた「独創性のないクローン(slavish clone)」であると厳しく非難。これは、オリジナリティが欠如した完全な模倣品であるとの主張であり、消費者に混乱を招く恐れがあると訴えています。

ソニーは主人公「アーロイ」の商標権なども含めた権利侵害を主張し、カリフォルニア連邦裁判所(California federal court)に対して、ゲームの発売中止命令と金銭的損害賠償(monetary damages)を求めています。

「模倣」か「創造」か?『パルワールド』との比較で見る境界線

今回の訴訟は、ゲーム業界における「模倣」と「創造」の境界線を改めて問い直すものです。過去にも、ゲームの類似性が問題になったケースは少なくありません。

見た目は似ていても中身が違う『パルワールド』

例えば、2024年初頭に大きな話題となった『パルワールド(Palworld)』は、見た目やモンスターを仲間にして冒険する点で『ポケットモンスター』シリーズとの類似を指摘されました。しかし、『パルワールド』にはクラフトやサバイバル、拠点の発展といった独自のゲーム性、つまりメカニクス(ゲームの仕組み)が豊富に盛り込まれていました。このように、ビジュアル的な印象が似ていても、ゲームプレイの根幹が異なれば、法的な問題には発展しにくいのが一般的です。

『Light of Motiram』が越えた一線とは

一方で、『Light of Motiram』のケースは、見た目の類似性だけに留まらないとソニーは主張しています。訴状によれば、世界観やキャラクター設定、さらにはゲームのメカニクスに至るまで、『Horizon』シリーズから広範囲にわたって要素が流用されているとのこと。ネット上のゲーマーから、まるで『Horizon』のオンライン版だとして「Horizon Online」と揶揄されるほどです。

これはインスピレーションやリスペクトの範囲を逸脱した、意図的な模倣であるというのがソニー側の見方です。

記者の視点:問われる「創造性」の価値とゲームの未来

今回の訴訟は、単なる企業間の争いに留まらず、ゲーム業界の未来を占う重要な出来事と言えるでしょう。特に、ソニー側の「提携を断られた後も開発を続けた」という主張が事実であれば、テンセント側の行為は「意図的な模倣」と見なされる可能性が極めて高まります。

裁判の結果次第では、ゲームにおける「インスピレーション」と「著作権侵害」の境界線が、より明確に示されるかもしれません。もしソニーの主張が認められれば、安易な模倣ビジネスへの警鐘となり、業界全体の独創性を高めるきっかけになるでしょう。一方で、そうでなければ、人気作品の要素を安易に取り入れた開発が加速する懸念も残ります。

この一件は、私たちプレイヤーにとっても「ゲームに何を求めるのか」を考えるきっかけとなります。斬新な驚きか、慣れ親しんだ安心感か。どちらを好むかは自由ですが、クリエイターの独創性があってこそ、ゲーム文化が豊かになるのもまた事実です。

一本のゲームが私たちの手元に届くまでには、数えきれないほどのアイデアと情熱が注がれています。この訴訟が、ゲームを愛するすべての人々にとって、コンテンツの価値を改めて見つめ直す機会となることを期待します。