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深海に宇宙の痕跡?1000万年前の超新星爆発が地球に残した謎

約1000万年前、遠い宇宙で起きた星の爆発が、地球の深海に痕跡を残したかもしれない──。そんな壮大な仮説を示す研究が注目されています。

Phys.orgが報じたニュース「深海で見つかった証拠、1000万年前に地球を襲った星の破片か」によると、この話は太平洋の深海地殻から、ある特殊な物質が異常な濃度で発見されたことから始まります。研究者たちは、これが地球の近くで起きた「超新星爆発」の証拠ではないかと考えているのです。

本記事では、この興味深い発見について、深海で見つかった物質の正体から爆発源の候補、そして今後の研究課題まで分かりやすく解説します。

深海に隠された宇宙からのメッセージ

太平洋の深海で、約1000万年前(後期中新世)の地層から「宇宙からのメッセージ」ともいえる驚きの発見がありました。研究チームが深海の地殻を調査したところ、ある特定の物質の濃度が、その時代の層だけ突出して高かったのです。

その物質とは「ベリリウム10(10Be)」です。ベリリウム10は、宇宙空間から飛来する高エネルギーの粒子(宇宙線)が地球の大気と衝突することで生成される、ごく微量な放射性物質です。通常は一定のペースで生成されますが、なぜ約1000万年前だけ、これほど大量に降り注いだのでしょうか。

最も有力な仮説として考えられているのが、大質量の恒星が一生の最後に起こす大爆発「超新星爆発スーパーノヴァ)」です。もし地球の比較的近くで超新星爆発が起これば、そこから放出される強力な宇宙線が地球に到達し、大気中で大量のベリリウム10を生成させます。それが雨や雪とともに地上や海に降り積もり、深海の地層に記録されたのではないか、と研究者たちは推測しているのです。

爆発は太陽系の「ご近所」で起きた?犯人候補を追う

ベリリウム10の異常が超新星爆発によるものだとすれば、一体どこで起きたのでしょうか。超新星爆発が地球に影響を及ぼすには、ある程度の近さが必要です。

そこで研究チームは、太陽と2,700以上の星団(星の集まり)の過去2000万年間の軌道をコンピューターで再現し、爆発源の特定を試みました。シミュレーションの結果、約1000万年前に地球から約326光年(100パーセク)以内で超新星爆発が起きた可能性が高いことが示されました。これは宇宙のスケールでは「ご近所」ともいえる距離です。

さらに、候補となる19個の星団の中から、特に有力な2つの星団が特定されました。それは、冬の夜空でおなじみのオリオン座の方向にある「ASCC 20」と「OCSN 61」です。これらの星団が、ちょうど1000万年前に太陽系に影響を与えうる位置にいたことが、シミュレーションで明らかになったのです。

宇宙起源か地球起源か?残された謎と今後の課題

今回の研究は、ベリリウム10の異常が超新星爆発に由来するという「宇宙起源説」を強く後押しするものです。しかし、科学の世界では、他の可能性も慎重に検討しなければなりません。

例えば、地球自身の変動が原因である「地球起源説」も考えられます。過去の気候変動によって海流が大きく変化し、ベリリウム10が特定の場所に集中的に堆積した可能性も否定できないのです。

この謎を解き明かす鍵は、太平洋以外の場所にある「地球の記録」を調べることです。研究者たちは、南極の氷床や他の海洋の海底堆積物など、世界各地の地質記録を分析する必要があると指摘しています。もし、これらの記録からも約1000万年前にベリリウム10が急増した痕跡が見つかれば、それは地球規模で起きた現象、つまり宇宙からの影響であったことの強力な証拠となります。

記者の視点:地球は宇宙の歴史を記録するタイムカプセル

今回の発見が教えてくれるのは、「地球は孤立した存在ではない」というシンプルかつ壮大な事実です。海の底の地層から、何百光年も離れた星の爆発の痕跡が見つかるかもしれない。これは、一見無関係に見える「深海地質学」と「宇宙物理学」が、時空を超えてつながっていることを示しています。

宇宙からは、宇宙塵宇宙線といった物質が絶えず地球に降り注いでおり、地球の大気や地表にその情報を記録し続けています。中でも、変化の少ない深海の底は、何百万年、何千万年もの宇宙の記憶を保存する巨大なタイムカプセルのような存在です。

今回のベリリウム10の発見は、そのタイムカプセルに刻まれた一行のメッセージを読み解こうとする試みといえるでしょう。この謎が解き明かされれば、地球の地層という「歴史書」を通じて過去の宇宙を探る、全く新しい天文学の扉が開かれるかもしれません。

1000万年の時を超えた謎の解明に向けて

深海で見つかったベリリウム10は、1000万年前にオリオン座の方向で起きた星の壮絶な最期の証なのか、それとも地球自身の気候変動がもたらした偶然の産物なのでしょうか。

この壮大な宇宙ミステリーの真相は、世界中に散らばる他の「記録」を調べることで明らかになるはずです。「宇宙起源説」が証明されれば、それは地球の環境や生命の歴史が、私たちが考える以上に遠い宇宙の出来事と深く関わってきた可能性を示唆します。

何気なく見上げる夜空の星と、足元に広がる海。その両者が1000万年という時を超えて一つの物語でつながっているかもしれないと想像すると、日常の風景が少し違って見えてくるのではないでしょうか。科学者たちの探求が、私たちにどんな新しい宇宙の姿を見せてくれるのか、今後の進展に期待が寄せられます。