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AIが暴いたイタリア火山の「隠れ断層」 日本の火山防災に新常識か

イタリアのカンピ・フレグレイ火山で、AI技術がこれまで隠されていた「環状断層」を発見し、地震リスクの評価を新たな段階へと進めました。この「AI、イタリアの火山で地震を引き起こす隠れた環状断層を発見」という研究成果は、AIが防災分野で果たす役割の大きさを示すとともに、火山大国である日本にとっても重要な意味を持ちます。

AIが暴いた「環状断層」の正体

舞台は、過去にヨーロッパ最大級の噴火を起こしたイタリア南部のカンピ・フレグレイ火山。この地域では、地震計の波形記録から揺れの急な変化を探す「位相検出」という従来の手法で地震を観測してきましたが、この方法では捉えきれない微小な揺れが多数ありました。

そこで研究チームは、専門家の分析データを学習させたAIを導入。2022年から2025年半ばまでのデータを再解析したところ、従来の方法で見つかった約1万2000回の地震に対し、AIはその4.5倍にあたる5万4000回もの地震を特定しました。

この膨大な「見えない地震」の発生源を地図上に示すことで、これまで専門家が推測するにとどまっていた環状の断層構造が、驚くほど鮮明に浮かび上がったのです。

この発見の重要性は、火山の港町ポッツォーリで観測されている「地盤隆起」と深く関わっています。この地域では1980年代にも大規模な隆起と群発地震で約4万人が避難しており、現在も年間約10cmのペースで地面が上昇し続けています。

AIの分析により、この地盤隆起が起きているエリアを、発見された環状断層がぴったりと取り囲んでいることが判明。研究チームは、この断層の活動が建物を損壊させる可能性のあるマグニチュード5クラスの地震を引き起こす危険性を指摘しています。

ただし、今回特定された地震活動は地表近くの浅いものであり、現時点ではマグマの上昇といった噴火の直接的な兆候ではないとも付け加えています。

AIが拓く火山防災の未来と日本の課題

カンピ・フレグレイでの発見は、遠いイタリアだけの話ではありません。AIによる精密な分析は、これまで把握しきれなかった火山の地下構造を可視化する強力なツールとなります。特に、阿蘇山や箱根のように複雑なカルデラ構造を持つ火山を多数抱える日本にとって、この技術は未知のリスクを事前に洗い出し、防災計画を根本から見直すきっかけとなるかもしれません。

今回の事例は、AIが「見えないリスク」を科学的なデータに基づいて示してくれることを証明しました。しかし、技術はあくまで道具です。その分析結果をどう解釈し、具体的な避難計画や対策に繋げるかは、私たち人間の役割に他なりません。最新技術から得られる知見を、いかにして人々の安全確保に結びつけるか。未来の安全は、技術の進歩と、それを賢く活用する社会の備えの両輪によって築かれていくのです。