ワカリタイムズ

🌍 海外ニュースを「わかりやすく」

最新観測!巨大ブラックホールが放つガンマ線フレアが明かすジェットのメカニズム

宇宙の彼方から届く高エネルギーのガンマ線は、巨大ブラックホールの活動が引き起こす壮大な現象です。中でも「ブレーザー」は、中心のブラックホールから光速に近いジェット(プラズマの噴出)が地球をまっすぐ向いている特殊な天体で、ひときわ強力なガンマ線を放ちます。

最近、ある研究チームが「TXS 2013+370」というブレーザーで、これまでにない強力なガンマ線フレアガンマ線が一時的に急増する現象)を観測したというニュース「天文学者、ブレーザーからの異常なガンマ線フレアを観測」が報じられました。この観測から、ジェットの構造に新たな変化が起きていることや、ガンマ線の発生場所を特定することに成功しました。この記事では、この驚くべき発見の詳細とその意味を分かりやすく解説します。

観測された「例外的な」ガンマ線フレア

今回注目されたのは、遠方宇宙に存在するブレーザー「TXS 2013+370」です。この天体の中心には、太陽の約4億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールが存在し、強力なジェットを噴出しています。

2021年2月11日、このブレーザーから異常なほど強いガンマ線が観測されました。この現象を詳しく調査するため、研究チームは世界各地の電波望遠鏡を連携させ、地球サイズの巨大な仮想望遠鏡として機能させる「超長基線電波干渉法(VLBI)」という技術を用いて観測を実施。その結果、ジェットの構造にこれまで見られなかった新しい要素「N2」が出現していることが判明しました。

「N2」はブレーザーの中心核からごくわずかに離れた位置にあり、その出現はジェットの活動が活発化したことを示唆しています。実際、この時期には電波からガンマ線に至るまで、様々な波長で天体全体の活動が増加していることも確認されました。

ガンマ線の発生源と「102日間」の時間差

今回の観測で最も重要な成果の一つは、強力なガンマ線がどこで生まれているのかを突き止めたことです。

分析の結果、ガンマ線ブラックホールの周囲に広がるガスの雲「広輝線領域」よりもさらに外側で発生していることが特定されました。そこでは、ブラックホールを取り巻くドーナツ状の塵の塊「ダストトーラス」から放たれる赤外線などの光が、ジェット内の高エネルギー電子と衝突してガンマ線を生み出す「外部コンプトン放射」という現象が起きていると考えられます。つまり、ダストトーラスがガンマ線を生み出すための「種」となる光を供給していたのです。

さらに興味深いのは、ガンマ線の変動と、それよりエネルギーの低い電波の変動との間に、約102日間という明確な時間差が見つかったことです。これは、まずジェットの根元に近い場所でガンマ線が発生し、その影響が時間をかけてジェットを伝わり、下流の領域で電波が放射されたという一連の因果関係を示唆しています。この時間差は、ジェット内部でエネルギーがどのように伝播していくのかを解き明かす貴重な手がかりとなります。

記者の視点:日本の技術も宇宙の謎に迫る

今回活躍したVLBIのような高度な観測技術は、日本でも積極的に活用されています。例えば、国立天文台が運用する電波望遠鏡ネットワーク「VERA」もVLBI観測を行い、ブラックホールの直接撮像といった世界的な成果に貢献してきました。

また、日本はアルマ望遠鏡X線分光撮像衛星「XRISM」など、世界トップクラスの観測装置を駆使して、ブレーザーをはじめとする活動的な天体の研究をリードしています。こうした研究は、遠い宇宙の謎を解くだけでなく、物理学の基本的な法則を検証することにも繋がる重要な取り組みです。

国際的なプロジェクトへの参加や独自の観測装置開発を通じて、日本は今後も宇宙の謎の解明に大きく貢献していくでしょう。

発見が解き明かす宇宙のダイナミズム

今回の研究は、ブレーザー「TXS 2013+370」のガンマ線フレアを詳細に観測し、ジェットに新たな構造が生まれたこと、そしてガンマ線の発生場所とメカニズムを明らかにしました。特に、ガンマ線と電波に見られた約102日間という時間差は、ブレーザー内部で起きている物理現象の連鎖を解き明かす上で画期的な発見です。

今後、他のブレーザーでも同様の観測を行い、このメカニズムが普遍的なものかを検証していくことになります。日本の「XRISM」衛星のような異なる波長の観測を組み合わせることで、ブレーザーの活動をより立体的に理解し、その謎にさらに迫ることができるでしょう。

夜空に輝く星々の光の奥では、私たちの想像を絶するダイナミックな現象が繰り広げられています。科学技術の進歩によって、そうした宇宙からの「サイン」を一つひとつ読み解いていく人類の探求は、これからも続いていきます。